教職員の協力を高める学校づくり〈№65〉 電話対応の留意点 保護者との信頼関係築く対応 9(教職員の協力を高める学校づくり 2021-05-28付)
電話対応は、気持ちを推し測りながら対応することになり、ついつい保護者の言葉に感情的に反応し、以降のかかわりが難しくなる事例がみられます。「保護者との信頼関係築く対応 5」に記載しましたが、電話対応はできるだけ避け要件のみを聞き、後日、時間を定め来校していただくようにします。
注意したいのは電話の取り次ぎです。「〇〇先生はいますか!」など明らかに感情的な電話の場合、保留ボタンを押し取り次ぐようにしますが、受話器を手で押さえ、「〇〇さんから電話だけれど、〇〇先生出る?」「また〇〇さんだけれど、〇〇先生はいないって言いますか?」などの声が電話口の保護者に聞こえると感情を害し、電話対応そのものが問われます。
応対例として「はい、〇〇学校の教頭の〇〇です」と告げ、名前を名乗らない場合は「お子さんの学年、学級名をお教えください」と言います。それでも名乗らない場合は「私でよければ、お話をお聞かせください」と述べ、話を聞くようにします。
つぎに「〇〇先生はいますか」との問いに「少々お待ちください」と保留ボタンを押し、該当の先生に状況を説明し取り次ぐようにします。授業などで不在の場合は「〇〇は〇〇のため不在にしております。後ほどお電話をかけるようにしますか?」と問うようにします。
さらに保護者との電話対応では、「〇〇のため、10分ほどであれば時間を取れますので、よろしいでしょうか」と時間を区切り、「〇〇についてのご意見ですね」「〇〇について、〇〇ではないかとのご意見ですね」などと保護者の意見を要約し、内容を確認するようにします。
その後、「後ほど、関係の○○先生より話を聞きますので、何時ごろお電話をするとよろしいでしょうか」と尋ね、いったん電話を切った後、管理職や学年主任などに電話の内容を説明し対応を協議します。
電話をかけると約束した時間は必ず守るようにし、「ご意見ありがとうございます。可能であればさらに詳しくお教えいいただきたく存じます。学校にお越しいただけるでしょうか」と来校を促します。
保護者が激高しているようであれば、該当の担任が電話対応するのではなく、教頭や生徒指導部長、学年主任などが前記のように聴き、該当の教師を含め意見の内容を共有し対応を図るようにします。
教師がスマホの電話番号、SNSの連絡先を交換したことに端を発した事例を説明します。
A先生は気さくで、どの保護者とも気軽に話をすることができ、学級、学年を問わず様々な相談を受けています。学習参観日が終了した後、ある保護者から廊下で「相談に乗ってくれますか」と呼び止められたことに応じ、雑談を含め長時間お話をしました。その折、保護者からの「スマホの電話番号を教えてほしい」、さらに「メールやSNSの交換をしませんか」との問いに、A先生は気軽に交換することにしました。
当初は短時間の電話でしたが、次第に遅い時間で長時間となったため、A先生は保護者に柔らかい口調で、「遅い時間や長時間の電話は、お互いに翌日に差支えますので、考えませんか」と話をしました。
翌日以降、SNSでA先生の批判が拡散され、電話で直接批判を繰り返されA先生は抑うつ状態に陥りました。
保護者の電話対応などは誤解を受けないためにも、個人ではなく学校の電話やメールで対応するのはどうでしょうか。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
「コミュニケーションハンドブック」 石垣則昭 登別市教育委員会・登別市校長会
「保護者と信頼関係を築く関わり」 石垣則昭 ぎょうせい悠+(はるかプラス)連載
「児童心理臨時増刊NO984“難しい親”への対応」 金子書房
「“過剰反応社会”の悪夢」榎本博明 角川新書
「事例解説 教育対象暴力―教育現場でのクレーム対応―」 近畿弁護士会連合会民事介入暴力及び弁護士業務妨害対策委員会 ぎょうせい
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-05-28付)
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