教職員の協力を高める学校づくり〈№73〉 互いに高め合う同僚性を 協同づくりとスクールリーダー 7(教職員の協力を高める学校づくり 2021-09-22付)
【教職員の協同づくりのために】
私自身の教員生活を振り返ると、様々な課題に直面し、改善のための実践を学びながら教師の協同がいかに大切か身をもって体験しました。
危機的な課題を抱えている学校の教職員ほど、諦めに似た感情の裏には教育への改善意欲が潜在的に高く、校長が協同的な改善の方向性を示し、それが理解されると、一致して教育改善にまい進していく傾向にあります。
学校によっては、経験豊かな教師に生徒指導や学力向上のけん引を委ねることがあるかもしれませんが、それでは教師集団は育ちません。そうした対応では、活動として限りがあります。
職場での認め合う人間関係づくりを基調に、高め合いを志向する同僚性を築くことが学校経営上の肝要といえます。
岩田雅明(実践的学校経営戦略、2009)は、組織風土のつくり方として、Specific(具体的な内容になっているか)、Measurable(測定可能か)、Achievable(現実的に達成可能か)、Result―oriented(成果に基づいているか)、Time―bound(期限が設定されているか)が五大要素であると述べています。
さらに、スクールリーダーが熱意をもって経営の方針を教職員全員に伝え自ら動くこと、様々な教育活動を教職員相互が高め合う機会としてとらえ直し、実践し、検証を繰り返していくことによって、教師の協同は築かれると理解しています。
教師の協同づくりの方策は学校の事情によって様々ですが、リーダーとしての校長の姿勢が非常に大事です。もっともらしい精神論だけでは、教師の協同をつくり上げることはできません。精神論を振りかざすことは、教職員の心の疲弊を招き、ネガティブ思考に陥りやすい状況をつくり出しかねません。
私が重視したのは、実践にかかわる様々な情報の共有化でした。
日常的に生徒や保護者に関する情報をもっているのは、校長よりも教職員です。しかし、何かの決めごとや采配となると、教職員より情報量が少ない校長が行わなければなりません。
よりよい学校づくりのためには、日常から教師との継続的な対話を重視していなければ、適切な判断ができないばかりか、教職員と校長の意識にかい離が起こりあつれきを生む危険性もあります。
情報の共有化は、一人ひとりの教職員が学校運営に関する当事者意識をもつことにつながります。当事者意識をもつことは、それぞれの教師が進めようとする学校づくりを“わがこと”として考え、実践することになります。
学校づくりの方針は校長が示し、教職員との意見交流を経て改善し、実践に際しては教職員の共有化を重視し、求めに応じて校長が助言するようにしました。
また、教師の協同を築く上で、できるだけ裁量権を可能な範囲で委譲しました。すなわち、校長が考えたことがらを上意下達で進めるのではなく、個々の考えを反映できるようにし、教職員の教育満足度を高めるようにしました。
当時は私自身、反省や課題が多く試行錯誤の毎日でしたが、スクールリーダーによる協同づくりの働きかけと、それに応じようとする教職員の同僚性によって、学校づくりを進めることができたと振り返っています。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
「実践的学校経営戦略 少子化時代を生き抜く学校経営」 岩田雅明 ぎょうせい(2009)
「教師の協同を創るスクールリーダーシップ」 杉江修治・石田裕久編 石垣則昭ほか著 ナカニシヤ出版(2018)
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-09-22付)
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