教職員の協力を高める学校づくり〈№76〉自己指導力を高める機会に 校則3(教職員の協力を高める学校づくり 2021-11-10付)
同校は「宿泊こそできなかったが仲間づくりの有意義な機会とすることができた。今後も継続して、地域の一員として様々な問題を学び、解決しようとする姿勢を育てたい」としている。
前号、教職員の協力を高める学校づくり(75号)生徒指導の再考〈校則2〉では、教職員の理解と協力を得ながら校則改定の実践を記載しましたが、あらためて当時を振り返ってみると、校則の内容を問うことよりも校則を守らせることに終始していたことを反省しています。教師は校則を生徒に守らせ、生徒は校則を守る立場にあるとし、にらみをきかせていました。
特に多感な思春期を過ごしている生徒にとって、校則は教師の権威の象徴の一つであり、矛盾を感じながらも、黙って受け入れなければならず、「学校では○○は認められないけれど、学校以外では問題ない」と、校則には現実の児童生徒の生活と剥離がみられました。
果たしてこのような状況で、校則が目的とする児童生徒の自律性を育てることができるのだろうかと疑問に感じ、過ごしたことを思い返しています。
私の教職経験として、児童生徒や教師からみても矛盾が多いとされる校則指導は、厳格に順守を指導する教師と、指導に消極的な教師に二極化する傾向がみられ、その結果校則への解釈が個別的となり、ちぐはぐな対応によって必要な指導が徹底されない状況がみられました。児童生徒、保護者への説明責任、さらにどのように指導するか教師間で協議する機会が必要であったと後悔しています。
アメリカの心理学者で、教育学者のエドワード・L・ソーンダイクは、「満足が伴う反応はその他の条件が同じならば、その場面とより強固に結合し、不快が伴う反応はその他の条件が同じならば、その場面との結合は弱くなる」とし、効果の法則である「正の強化」の研究を進めました。
正の強化を校則に当てはめると、校則が児童生徒にとって満足であるか不満足であるかは、「その場面と強固に結合すること」が強まるかどうかであり、強まるならば、正の強化によって校則を自ら守ろうとする意識が強化されると解釈できます。つまり、校則が児童生徒にとって満足できる内容であるかどうかであり、満足できる校則のためには、校則の内容と、改善に至る手続きが重要であると理解できます。
結論を述べると、校則を改定することだけを目的とするのではなく、時間をかけ、継続的に「校則は自分たちのものである」との自覚を高めさせ、ムーブメントとして展開することに教育的意義があります。
校則は生徒指導の中核的要素です。変えなければならないと理解していても、多忙感によってなかなか手をつけられない。生徒の実情を頭に浮かべ、校則改定を児童生徒の手に委ねてしまい、取り返しのつかない内容となれば、学校の秩序は保つことができないなど、不安視することが多いと思います。児童生徒の手に委ねるといっても学校の機能は指導助言を前提としています。
現状に見合わない校則は見直すようにとの通知があり、先急ぎ校則をあらためて見直す機会となっていますが、単に校則の項目を見直し変更するだけではなく、児童生徒の成長発達に求められている自律性を高め、自己指導力(その時、その場で、どのような行動が適切であるか、自分で判断し、決定して実行する力)を高める機会として取り組んでみてはどうでしょうか。
(北海道文教大学人間科学部教授・石垣則昭)
引用・参考文献 「効果の法則・学習心理学」科学辞典
(教職員の協力を高める学校づくり 2021-11-10付)
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