教職員の協力を高める学校づくり〈№83〉 懲戒処分要件 分かりやすく 生徒指導とリーガルマネジメント(教職員の協力を高める学校づくり 2022-02-01付)
教職員の協力を高める学校づくり81・82号ではスクールロイヤー制度を中心に、生徒指導とチーム学校、宮城県のスクールロイヤーの実践報告を紹介しましたが、今号では、生徒指導上の諸問題の対応や生徒規定についてリーガルマネジメントによって概説します。
学校教育法第11条では、教員は生徒に対して「懲戒」を与えることができるが「体罰」は禁止されているのはご存じのとおりです。
しかし、懲戒と体罰の見解の違いの区別が難しいとされ、法では当然のように有形力前面禁止論(目に見える物理的な力の行使により行われた懲戒)が採用されていますが、当該生徒の目的、様態、継続時間から体罰には当たらない場合があると判断されています。
そもそも、児童生徒に罰を与えるという目的ではなく、他の児童生徒への蹴る、殴るなどの暴力行為を静止させ、生徒指導上反省を促すため、教育的な見地から手首を強くつかみ指導したなどは、体罰に当たらないとされ、教師の児童生徒に対する懲戒行為は、懲戒行為を受けた児童生徒の訴えや、保護者の主観的意見によって判断するのではなく、児童生徒の日常における行為、発達の課題、性格、その時の状況によって総合的に判断されるべきであるとしています。
教師の暴言・威嚇による児童生徒の欠席や不登校は東京都では停職・減給・処分対象となっており、言葉の暴力も体罰と見なし処分対象としていますが、体罰とは違い傷害の判断がしづらく、判断が主観的になりがちです。
暴言・威嚇を受けた児童生徒や保護者の主観的な判断に基づき対応するのではなく、客観的に見て、その状況での指導に妥当性があるかどうか。同時に指導を受けた他の児童生徒はどう感じたのかなどの感受性の問題など、多面的に捉え対応する必要がありますが、暴言・威嚇は人権を踏みにじる行為であり、法の規準と同様、教育的指導の適正が問われることになります。
学校教育法施行規則第26条第2項に、退学・停学・戒告の「懲戒処分」が明記され、生徒の内省を促す事実上の懲戒として、自主退学、謹慎(自宅謹慎、学校内謹慎)、校長による説諭等の「教育的指導」があります。
教育的指導の自主退学、謹慎等は、法的効果を伴いませんが、教育を受ける権利に影響をもたらすことから、該当の生徒の理解や保護者の理解・協力を得ることが極めて大切です。
懲戒処分や教育的指導は本来、懲戒の処分によって達成すべき目的と懲戒の程度との均衡を保つ比例原則・平等原則(達成されるべき目的とそのために取られる手段としての権利・利益の制約との間に均衡を保つ原則)や、利益原則(得られる利益と失われる利益)を考慮し学校で策定しているガイドラインによって施行されますが、処分の根拠が感情論に陥りやすい傾向がみられるとの指摘もあります。
また、懲戒処分は先に挙げた学校のガイドラインとして明記されていますが、それぞれの処分要件(処分の具体的な内容)を理解しやすく記述する必要が求められています。
さらに、懲戒処分や教育的指導を行うに当たって弁明・反省を聞く機会を与える手続きは、処分前の生徒指導の機会に設けられているため法令の解釈では必要ないとされていますが、保護者の理解を得る機会とともに、生徒指導が一方的な指導に終始することがないよう弁明の機会を設けるようにします。
各学校におかれましては、生徒指導をリーガルマネジメントの視点で捉え研修する機会を持たれてはどうでしょうか。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
東京都教育委員会「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」
『学校内弁護士』神内聡著日本加除出版株式会社、2016
『スクールロイヤー』神内聡著、日本加除出版株式会社、2018
(教職員の協力を高める学校づくり 2022-02-01付)
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