教職員の協力を高める学校づくり〈No.88〉 若手育成 どのようにすべきか 次代の教員を育てるチーム職員室1
(教職員の協力を高める学校づくり 2022-04-13付)

 今号から6回シリーズで「次世代の教員を育てるチーム職員室」と題し、新たな章の連載を開始します。

 再任用制度の拡大が進んでいますが、これまで教育を支えていただいた先輩教師が次々と退職期を迎えている一方、新採用の教員の採用が多くなっています。学校によっては若手教員と退職前の教員が大半を占め、ミドルリーダーを担うべき30代中盤から40代の教員が不足し学校の教育機能がうまく発揮されないことや、昭和世代の皆さんからは「あの頃は良かった…」といった話を耳にします。

 昭和時代は教師という肩書が社会的に理解されていました。しかし時代が進み、学校教育について様々な話題が取り上げられ、児童生徒や保護者にとって「先生が言うのだから」だけでは通用しない時代となっています。

 教職経験が豊かな先生から「若手の育成をどのようにすべきか、大変気を使っている」と相談を受けることがあります。日ごろ、ジェネレーションギャップ(世代間のずれ)に戸惑いを覚える先生は少なくありません。

 今日の大量採用時代に入職した次世代の教員には、いくつかの特徴が見られ、教員を積極的に志望し真面目で素直な者が多いと言われています。

 半面「ゆとり世代」に当たり、言われたことには真摯に取り組むが「指示待ち」で、ややもすると自主的に動かないと指摘されています。情報化社会に育ち、社会経験、生活体験、対人関係、対自己、対課題に向き合い「揉まれる経験」がキャリア豊富な教職員の皆さんの若手時代と比べて少ないのも事実です。

 教師の業務は生徒、保護者との人間関係づくりや同僚とのコミュニケーションが根幹となります。若手教員が、教育実践者としてどのように基盤を築いていくのか、社会人としてどう成長するのか。たやすい問題ではありません。

 特に初任者としての1年目、初任校で仕事の仕方を体得し、同僚と協働し、いかに職場に適応するかは教師人生の分かれ目となります。その際、初任者としての失敗は、乗り越えるべき壁は成長の鍵でもあります。学級づくりがうまくいかない、授業が思うように進まないことを同僚、先輩教員に相談し、助言、支援を得ながら乗り越えることが、つぎのステップにつながります。

 教育実践者として成長する要因を挙げると①経験を通しての学び②役割モデル(先輩教員)との交流③チームでの学習会(学年・教科、若手教員)④校外での研修会の参加―などが挙げられます。特に①の経験を通しての学びの影響が大きいと言われています。

 経営学者の松尾睦は、民間のマネージャーに対する実証的研究・事例研究を行った考察として、経験を通して学ぶには「適切な思いとつながりを大切にし、挑戦し、振り返り、楽しみながら(ストレッチ、リフレクション、エンジョイメント)仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができる」と述べています。

 ここでいうストレッチは「高い目標に向かって挑戦する姿勢」であり、リフレクションとは何かアクションを起こしている最中やアクション後に「何が良くて何がだめであったかを振り返ること」です。

さらにエンジョイメントは「やりがいや意義を見いだして、仕事を楽しむこと」であると述べています。コロナウイルスの感染拡大、また教職員の働き方改革の進展によって、教職員間のコミュニケーションが十分に図る時間が取れない。若手の教員を育成しようとしても時間的束縛が大きいとの声も聞かれますが、皆さんの後継者として次世代を担う教員育成の原理について次回から記述します。

(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)

引用・参考文献

松尾睦『経験学習入門』ダイヤモンド社(2011年)

(教職員の協力を高める学校づくり 2022-04-13付)

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