教職員の協力を高める学校づくり〈№93〉 メンター制度の活用 次世代の教員を育てるチーム職員室6(教職員の協力を高める学校づくり 2022-06-15付)
道教委から、初任段階教員育成のため学校の研修計画の中でのメンター方式の有効性が示されています。各学校において積極的な活用を期待し、平成29年3月発行の『教員の学びへのサポート』にメンター制度の導入や運用方法が紹介されました。今号ではメンター制度導入の意義や進め方について記述します。
学校でのメンター制度とは、年齢が比較的近い教職経験のある教員が、若年教員のメンタル面の悩みを聞き、サポートする制度を言います。一般にメンター制度にはメンター(助言する側)とメンティー(助言される側によるメンター研修会(メンターという助言者との対話や助言によって、継続的に成長を促していく人材育成の手法で、メンタリングとも言う)によって進め、近年課題となっている職場への適応力を高め早期離職を防ぐ効果が期待できるとしています。
メンター研修会の開催によるメンティーへの効果として①基本的な指導理念や指導方法への理解②教育活動全体における自身の課題把握③心理的な安定が述べられています。
また助言に当たるメンターにとっても①学習や生徒指導の指導法の再構築②若手教員の手本としての行動や態度を意識③後輩を育てるという意欲や使命感の向上に効果があると言われています。
北海道の初任段階教員配置校へのアンケート結果(道教委が平成28年10月に実施。対象は初任段階1年次、2年次、3年次の教員配置校の管理職)では、メンター研修会を実施した学校は全体の約6割で「初任段階の指導教員の指導力向上はもとより、学校全体の指導力の向上につながった」と回答した実施校は8割を超えています。
またメンター研修会の実施校では、初任者が成長している要因として最も大きいのは「先輩教員との出会いとそのアドバイス」となっています。
さらに学校力向上に関する総合実践事業に関わる調査結果(道教委が平成28年8~9月に実施。対象は実践指定校23校、近隣実践校73校、特別連携校22校)では、実践指定校で勤務する採用2年目の教諭に対する「自分の成長において重要であったものは何か」との問いでは「先輩による助言や声かけ」が最も多く、続いて「自分の成長に重要であったもの」では「校内の先輩教員による日常的な助言や声かけ」(ミニ研修やメンターチーム等を含む)が8割を超えています。
この結果から考察すると、先輩教員による助言や声かけ、メンター研修会は、若手の教員を育てるため極めて有効であると言えます。
つぎにメンター研修会を進める上での留意点を説明します。
▽第1点
メンター研修会ではメンターとメンティーの関係は、気軽な雑談ができフラットな相談が生まれやすい斜めの関係が望まれる。
▽第2点
メンターにはアドバイザーに徹するため聴き上手の先生が期待される。
▽第3点
メンタリングで知った情報、話した内容をメンターはメンティーの同意なく第三者に口外しない。
▽第4点
メンター・メンティーのみで解決できない問題が発生した場合、他のどの先生につなぐのか明確にする。
▽第5点
開催日は相互の同意により、定期的に勤務時間内に開催する。
▽第6点
話すテーマを事前にメンター・メンティーの間で共有する。
▽第7点
メンターとメンティーのマッチングは、教科や分掌、年齢の要素から合意のもとで決定する。
以上が留意点として挙げられます。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2022-06-15付)
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