教職員の協力を 高める学校づくり No.95 パワハラと問われないために ミドルリーダーを育てる②(教職員の協力を高める学校づくり 2022-07-28付)
スクールリーダーの多くの皆さんからお聞きする内容に「指導のつもりでも教職員からパワハラではないかと問われることが心配で」とあります。しかし、指導を恐れて自校の教育の改善を進めることができなければ、児童生徒の育成に不利益が生じます。
パワハラとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える。または職場環境を悪化させる行為」(厚生労働省雇用環境・均等局、平成30年10月17日)を言い、指導とはある目的や方向に向けて意識的に教え導くことを指します。
この違いを目的論、必要論で捉えると、教職員の資質・能力の向上を目指すため教育内容の改善のサポートを目的としているのか。結果的に教職員を下に見て自分の感情を侮辱的な言葉を使い、精神的苦痛を与えていないか。職員室の人間関係から切り離すため、負の情報を流し無視したりしていないか。その指導は教育活動を進める上で、必要であるかどうかです。
また、教育を進める上で必要のない人格の否定や、プライバシーに過度に立ち入る問いなどは個への侵害と受け取られる可能性があります。
さらに留意しなければならないのは、指導や注意の程度が教職員の改善点や心配な行動と同等であるかどうかです。教職員の改善点や心配な行動の程度が大きい場合には、ある程度強い言動(人格を否定する、一方的に価値観を押し付けるなどは含みません)であっても、相当性が認められるのであればパワハラにはなりません。
しかし、指導や注意の必要性がそれほど大きくない場合にもかかわらず、強い調子で叱責する場合は、その指導に相当性があるかどうかが問われます。つまり指導や注意の仕方が、その原因となった教職員の行動等に見合ったものかどうかという基準がパワハラか指導かの境界になります。
指導をパワハラと誤解されないためには、目的を確認することが第一です。
つまり指導の名を借りた感情的な攻撃に陥らないためには、あくまでも相手の成長のためであると心に描き指導します。
また、相手の成長を図るためには、相手の話を途中で遮ることなく最後まで聞き入れることです。「事情を知らないのに、一方的に指導する」と捉えられては逆効果ですので、相手の話を聞きながら、指導すべき事実があるかどうか確認することが求められます。
さらに、相手の感情的な態度や言葉に巻き込まれ、「校長である私に対する態度は許せない」などと立腹するとパワハラの疑いが持たれ、以降の関係性に禍根を残してしまいます。教育相談の基礎理論を活用して相手の話を受け止め、事実関係を明らかにし、課題を一緒に協議して改善点を見いだすようにします。
また、指導に際しては、その教師なりの貢献を認めるようにするとネガティブなループに陥ることなく心を開き、意見を受け止めやすくなります。教職員との共通理解を確保し予防するため、職員会議や研修の機会に「パワハラとは何か」について研修を深め共有することもお勧めします。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
引用・参考文献
(厚生労働省委託事業・東京海上日動リスクコンサルティング(株)、平成30年8月)
(厚生労働省、職場におけるハラスメントの防止のために、令和2年6月2日)
(教職員の協力を高める学校づくり 2022-07-28付)
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