教職員の協力を高める学校づくり〈No.94〉 ミドルリーダーの現状と課題 ミドルリーダーを育てる①(教職員の協力を高める学校づくり 2022-07-13付)
今号から6回シリーズで「ミドルリーダーを育てる」と題し、新たな章の連載を開始します。
あるスクールリーダー(校長、副校長、教頭、事務長)が「チーム学校とは言うが、そもそもミドルリーダーもおらず教職員がチームになっていない」と話してくれました。「スクールリーダーのリーダーたる存在意義は、学校の危機管理、ミドルリーダーを育てること、チーム学校をつくることです」と説明したことを思い出しています。
現代経営学の父と言われマネジメントの発案者であるピーター・ドラッカー(オーストリア経営学者、1909―2005)は、著書であるマネジメント論『マネジメント 基本と原則』(ダイヤモンド社)の一節に「成果を上げる責任あるマネジメントこそ全体主義(個人は全体を構成する部分であるとし、個人の一切の活動は、全体の成長・発展のために行われなければならないという思想)に代わるものである」と述べています。
また、リーダーは「権威」ではなく「責任」であるとも述べています。責任とは、自分が果たすべき役割や自覚であり、児童生徒のためにどう責任を果たし貢献していくのか。それを引導し育成する立場がスクールリーダーと言えます。
ミドルリーダーは学校や地域の実情によって教務主任、生徒指導主任、学年主任などその範囲は広いと言えますが、基本的な役割は「学校が直面する課題への適切な対応、改善について学校全体を見通し教科や学年との関連を広く見据えながら、学校内やチーム学校としてリーダーシップが発揮できる人材」と言えます。言い換えるならば、教育指導力があり組織運営に力を発揮し、同僚教員から信頼され教育力、経験、人物を基盤とする存在でしょうか。
しかし現在の学校組織は新採用教員が増加し、20~30代前半の若手教員と50代の年長教員が両極をなし、30代後半から40代前半の中堅教員が少ない年齢構成であり、ミドルリーダーそのものをどう育てるのかが学校の大きな課題となっています。
また、学校ではチームワークが強調されていますが、実際には個人志向の傾向が強まり、教職員相互の連携を必ずしも重視しない雰囲気も見られます。
さらに、ミドルリーダーや若手の教員を育てようと指導しても「パワーハラスメント」「モラルハラスメント」と言われかねないため気を使い、相手に真意が伝わっていないと感じることもしばしばあると聞いています。しかし、教職員相互の理解を促進させ、組織力を高めることは個々の教師の成長にもなり、教育実践力が高まることはご存じのとおりです。
学校の組織はかつて鍋蓋(なべぶた)組織と言われてきましたが、ミドルリーダーの確かな存在がスクールリーダーと教職員をつなぎ学校ビジョンを具体化し教育をリードしていく中軸的な役割を担うことによって学校マネジメント力を高めることができます。
課題は、何も言わなくても状況を察知し自然に活動できる自生的教職員を待つのではなく、教職員をミドルリーダーにどう育てるかが極めて重要な課題と言えます。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2022-07-13付)
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