教職員の協力を高める学校づくり〈№96〉 モチベーションを高めるミドルリーダーを育てる③(教職員の協力を高める学校づくり 2022-08-19付)
様々な組織体では、職員のモチベーションを高めるため、社会心理や教育心理から多様なアプローチがなされています。
今号ではミドルリーダーのモチベーションをどう高めるかについて、アメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタール(1933―)などの理論によって記述します。
ロバート・ローゼンタールは「期待」と「結果」による因果関係を研究し「人は期待されたとおりの成果を出す傾向がある」というピグマリオン効果(『動機づける力、モチベーションの理論と実践』ダイヤモンド社)を提唱しました。
また、ピグマリオン効果と同等の研究として「注目や関心によって生産性が上がる」とするホーソン効果、逆に上司や同僚が「ネガティブな言動によって悪い印象を持ちながら接すると、モチベーションが低下し良くない人になってしまう」とするゴーレム効果も他の心理学者によって発表されています。
この研究成果をスクールリーダーの立ち位置に当てはめると、ミドルリーダーにどう接するかによってモチベーションを高め教育活動を推進できるか、またそうではないかの違いが大きくなります。
さらに過剰で無理な期待ではなく、そのミドルリーダーへできる範囲の期待をかけることは、スクールリーダーが期待に応えようとし結果的に相談を含めコミュニケーション量が増え、自ら教育の進展に尽力することにつながります。
ことにスクールリーダーの重要な責務は人材を育てることですが、つぎのような事柄に留意し、ピグマリオン効果やホーソン効果を活用してはどうでしょうか。
1 裁量権を与える
メンタルヘルスの保持・増進を促進させ、生きがいを持って教育活動を進めようとするミドルリーダーを育てるためには、自分で意思決定し挑戦できる範囲を与えることが必要です。裁量権が小さく「スクールリーダーの言うように進めればいい」では、モチベーションは高まりません。また期待する結果から遠ざかってしまいます。
さらにミドルリーダーを育成するためには、仕事の目的と期待するゴールは何かを明らかにし、どの範囲まで裁量権を与えるのかを事前検討します。
2 つながりを実感できる
仕事の丸投げは、裁量権を与えることにはなりません。仕事の依頼はミドルリーダーを育てる機会として捉え、注目と関心を寄せ、努力を認め激励し相談を受けるなど、教職員にとって「つながり」が実感できるような声かけが大切と言えます。
スクールリーダーの皆さんの中には、人を育てるためには厳しく叱咤激励すべきであり、褒めることは甘やかすことになるという方がいますが、果たしてそうでしょうか。
社会心理学では褒める・認めることの効果を「相手から信頼を得られる。相手のモチベーションを引き出せる。相手が自分に自信を持つことができる」と立証されています。
教育活動に意欲を持って挑戦できるミドルリーダーを育てるためには、行動への評価(褒める、認める)を行うことによって強化(心理学用語では、刺激による反応を強めること)されますので、相手の状況をよく見て継続的に努力の過程を褒め、認め、激励したいものです。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2022-08-19付)
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