教職員の協力を高める学校づくり〈No.54〉 求められるリーダーシップ 職員室の心理学 5(教職員の協力を高める学校づくり 2020-11-27付)
教育の場だけではなく、様々な場や機会でリーダーシップの在り方が問われています。今回は「職場に求められるリーダーシップ」と題し説明いたします。
社会心理学では、「民主型」「専制型」「放任型」の3種類のリーダーシップの型に類型(似たものの間に共通に認められる型)化できます。
①民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップとは、リーダーを中心としたメンバー全体で議論を行いながら方針や行動を決めていくタイプのリーダーシップです。部下を押さえつけずに自主性を引き出す効果があるため、モチベートに適し、多くの意見を集められるので、より適正な方法をみつけ出しやすくもなります。また、職員の満足度が高まり、教育活動が進展しやすくなります。
②専制型リーダーシップ
専制型リーダーシップとは、すべての決め事をリーダーが行い、部下はそれに従う形を取るタイプを指します。「上から下へ」の言葉に代表されるリーダーシップです。現代においては「上司だから言うことを聞く」という職員ばかりではなく、むしろ職員の心が離れ、改善案を提示しても特定の教職員以外は、無反応など職員の総合力を結集した教育活動に結び付きません。
③放任型リーダーシップ
放任型リーダーシップとは、その名のとおり、部下を放任するタイプのリーダーシップです。決定を個人に委ね、リーダーはそれを観察します。主体的に動けて、やる気や責任感もある職員に囲まれていれば効果的ですが、そうでなければ手を抜き怠ける可能性もあり、職員のタイプに応じて結果が大きく変わり、まとまりに欠け職員室内がグループ化します。
それではどのようにしてリーダーシップを図るのがよいのでしょうか。
①コミュニケーションを図る
職員に対してリーダー自らコミュニケーションを図ります。職員に対して進ちょく状況や困っていることがないかなど、日ごろから確認するようにします。職員はリーダーに「気にかけ、言葉をかけてほしい」と願っています。コミュニケーションが不足しているリーダーは、信頼を欠きやすくなります。必要に応じて職員の面倒もみつつ、小まめにコミュニケーションを図ることが大切です。
②モチベート(動機を与える、興味を起こさせる)する
モチベーションを維持する方法は職員によって異なります。相手が求めていることを基本に、かかわりを大切にします。自分自身をモチベートできる職員は、「自信」がある職員ですが、そのような職員は「承認」を求めています。小まめに声がけし「認める」ことが承認欲求を満たし、やる気を喚起させます。
つぎに自分をモチベートできない職員には、厳しく指導しても響かず、優しく接しても変わらずということがみられます。そのような職員には、職員の頑張った経験を振り返らせ、「仕事の楽しさ」を共有するようにします。
③結果確認をする
職員が活動した結果を確認します。それは大きな行事ばかりではありません。職員を気にかけながら、小まめに確認した上で、行き詰まりや困りごとなどの対処法等をアドバイスします。
本年3月に退職した道央圏のある高校の校長は、積極的に生徒や教職員の輪に入り、面倒見がよく生徒、職員、保護者、地域から厚い信頼を得て見事な学校改善を図りました。お話を聞くと「生徒や職員、保護者、地域との対話を大切にしていました」と話してくれました。
(北海道文教大学人間科学部子ども発達学科教授・石垣則昭)
参考・引用文献
「社会心理学」 池田謙一・唐沢譲・工藤恵理子・村本由紀子著 有斐閣
「認知心理学」 箱田裕司・都築誉史・川畑秀明・萩原慈著 有斐閣
「人間関係の心理学」 齋藤勇著 誠信書房
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-11-27付)
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