教職員の協力を高める学校づくり〈No.36〉 不登校 全体像を把握 当事者の立場で情報収集
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-02-14付)

 不登校対応の課題として、対応に苦慮し「心理的要因」を重視するあまり、保護者に「病院に行ってはどうか」と告げ、保護者の不信感をかうことがあります。学校でまず行うことは対処・対応を図ることではなく、可能な限り幅広く全体像をとらえることです。

 ご存じのように医者が患者を見立てるときに、体温、血液や尿の検査データ、レントゲンやMRIなど幅広く全体の状況をとらえなければ、適切な診断を下し治療することは難しいはずです。

 不登校の場合も同様であり、今の状況はどうなのか、何がきっかけなのか、どのような背景があるのか、今できることは何か、今後どうすることが望ましいのかなどを知らなければ適切な支援を行うことはできません。不登校の全体像を把握するため必要な情報を集め、分析し、どう見立てていくかが不登校対応には重要です。

 それでは不登校を見立てるためには、どのような情報を集めるのかを説明します。

 ①としては「欠席のきっかけ」です。不登校につながったきっかけは何であったのか、前号で示した「本人の問題に起因」「学校生活に起因」「家庭生活に起因」、さらに「急性型」「慢性型」を加えた6つの分類を活用し理解を深めます。

 ②は「欠席前の様子」の情報を得ることです。具体的には「欠席、遅刻、早退が多かったかどうか」「成績はどうであったか」「学級では楽しく元気に過ごしていたか」「友人はいたのか、また、楽しくかかわっていたか」「クラブ・部活動は積極的に参加していたか、クラブ・部活動での人間関係はどうであったか、また、活動の成績はどうであったか」「授業では学習内容を理解し、意欲的に参加していたか」「家庭状況に変化はなかったか」などの情報を得ることです。

 特定の児童生徒を除き、ほとんどの子どもたちは元気で学校生活を送っていたはずです。不登校になってしまった元気のない姿を見て、その子の本来の姿であるととらえるのではなく、元気がよかったときの情報を集め、その情報をもとに、どのような状態であるのかを把握し目標に向かって対応を図るようにします。

 ただし、無理な目標は、対応を誤り回復を遅らせることになりますので注意が必要です。

 つぎに不登校の情報は担任などが、親しい子に「学校を休んでいることで何か知っている」と聞くことが多くありますが、その親しい友人との関係悪化や、仲良しグループからの「はずし」が不登校のきっかけになっていることもあります。聞くのは親しい友人ではなく、教師から見て、人間関係がしっかり保つことができる信頼できる子から聞くようにします。

 また、家庭での状況を把握するため、保護者に「学校では問題はありませんが、家庭で何かありましたか」と聞いてしまい、保護者の不信をかうことがあります。この聞き方は「家庭に問題がありませんか」と保護者に言っていることになります。家庭訪問では「家での様子はどうですか」「学校に来られなくなる前、気にかかることがありますか」と聞くようにします。

 さらに他の教師から情報を得る場合は、まず、「子どもには直接聞かないでください」とし、教師の情報を聞くようにします。教科担当の教師や部活動顧問の教師は善意で、自分とかかわりのある子から情報を得ようとします。そうすると、対立している人間関係のある子の耳に入ってしまい、対応に苦慮し、子どもの間の噂になることもあります。情報の得方には不登校の児童生徒や保護者の立場に立って対応しなければなりません。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

引用・参考文献

「続 上手な登校刺激の与え方」 小澤美代子著 2006 本の森出版

「傷つきへの心理的援助」 前川あさ美著 2004 ぎょうせい

「子どもの認知行動療法」 児童心理増刊 2010 金子書房

(教職員の協力を高める学校づくり 2020-02-14付)

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