教職員の協力を高める学校づくり〈NO12〉 教職員と双方向の意思疎通を 組織を押し上げる学校リーダー
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-03-19付)

 啓発図書の中でも『できる上司とそうでない上司』『上司のリーダーシップとは』などの本がミリオンセラーになっていると聞きます。このミリオンセラー本で共通していることは、できる上司とは「仕事ができる個人的な有能な人物」を指すのではなく、「組織(人)を押し上げる人」を指すと述べていることです。

 個人的な能力が優れている人は、学校リーダーとなっても、ほかの教職員より優れているため、自分で仕事を抱え込んでしまう傾向があります。つまり、人に任せるよりも自分で進める方がよいと考えがちです。

 さらに、個人の能力が優れている学校リーダーには、生徒指導、学習指導、学級経営、事務業務などを安心して任せることができるし、一人で何人分もの仕事を進めることができるので、重宝され組織としての問題も生じにくいのです。

 しかし、そのような教職員や学校のリーダーが異動したあとはどうなるのでしょう。当然様々な問題が露見しやすくなります。「あの先生がいてくれれば」「あの事務職員がいてくれたときには」とぼやいても問題は解消、解決しません。

 このように特定の教職員に委ねて業務運営を進めると、職場全体の危機意識や問題意識の目は育たないことになります。個人的な仕事をできる人に依存している職場は危ういのです。

 それではどう組織(人)を押し上げていくのかの一例を説明します。

 まず、日常、意図的に、学校リーダーは教職員とツーウェイ・コミュニケーション(双方向)を自らの業務として位置付けるようにします。特に、ネガティブな思考に覆われている教職員には、過去に自分が進め成果を上げた教育活動や業務など、ポジティブな視点で話を聞くようにします。

 つぎに、この学校がさらによくなるための課題は何かを聞き、「そうですね」「そのような考えには一理ありますね」「そのようなことを考えてくれたのですね。うれしく思います」など、同調し寄り添いながら話を聞き、決して言葉を遮ったり否定したりしないようにします。

 また、同僚への批判は「そのようなところもありますが、○○のように頑張っているところもありますね」と話し、学校リーダーとしての公平さを保つようにします。

 つぎに、教職員と話した内容をメモしておきますが、よりよい学校を築くためのアイデアは逃さずメモし、仕事をお願いするときに「この間の先生との面談を受け、この仕事は○○さんにお願いするのが適任と思いました」と説明し、つぎに、引き受けていただいたら「○○さんのお蔭で学校が○○のように高まります」「○○さんがやっていただいたら大幅な業務改善が進み、教職員が感謝すると思います」など、組織への貢献を説くようにします。

 承認を得たあと、仕事の完了予定日を明らかにし「お願いしたこの仕事をどのように進めようと思っていますか、私も協力しますので」と付け加え、相手の進め方を引き出すようにします。

 つぎに「困ったらいつでも相談してください」ではなく「困ったときは随時相談してほしいのですが、仕事を進める上で相談を受ける日時を決めておいた方がよいと思いますので、曜日と時間をあらかじめ決めておきましょう」と言います。

 こうすることで相手に仕事の進み方をいちいち尋ねることがなくなり、気分を損ねることはなくなります。仕事の完了後はねぎらいと感謝の言葉を述べ、今後の仕事への抱負を自ら話してもらうようにします。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2018-03-19付)

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