教職員の協力を高める学校づくり〈No.33〉 不登校予防は学校全体で 年間活動計画に位置付け(教職員の協力を高める学校づくり 2019-12-25付)
前々回、前回と続けて文部科学省の平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果を不登校の対応のための情報としてお伝えしましたが、多忙な中で毎日の業務を進めている教職員の皆様にとって、不登校対応は先の見えない状況に陥り対応に苦慮されていることと思います。今回は不登校予防に求められる基本的な考え方を記述します。
不登校の予防には、生徒会を中心に学校独自で取り組む活動、構成的グループ・エンカウンターやピア・サポート活動、ソーシャルスキル活動などの導入は有効であることは広く理解されていることと思います。
例えば、ご存じのピア・サポート活動は、一定のピア・サポートプログラムを学んだ子どもたち(ピア・サポーター)が、他の子どもたちと共に支え合う関係を築くことにあり、その活動は年間を通して行うことが目的とされています。
また、北海道内のある中学校ではソーシャルスキル活動を全学年全学級、年間10回、計画的に導入したところ、生徒の親和性が高まり不登校やいじめが著しく減少したとの報告を受けています。
不登校予防で重要なことは、学校の年間の活動計画に位置付け全校を挙げて取り組むことであり、特定の先生が特定の学級で年数回活動をしても学校として期待される成果には達しません。予防的活動を実践されている教職員が中心となり、必要な活動を学校全体に広げることが必要であり、そのためには管理職の理解が必要です。
また、学校生活の7割は授業であり、授業の中に予防的生徒指導の要素を盛り込むことが重要です。次年度から「主体的・対話的で深い学び」を授業改善の課題とし、小学校より順次、新学習指導要領が全面実施されます。
授業改善のキーワードである「主体的・対話的で深い学び」の「対話的」を単なる話し合いではなく、話し合いのルールを確立しながら、誰にでも公平で公正な機会が与えられ、支え合い認め合い、学び合う活動に高めていくと学習理解が深まるばかりではなく、子どもたちの居場所づくりとすることができます。第31回、第32回で、文部科学省の平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(令和元年10月25日公表)で示したように、不登校は小中高校ともに「友人関係を含め集団活動への不適応」と「学力不振」が主なきっかけとなっています。「主体的・対話的で深い学び」の授業づくりを上記のような学習理論によって積極的に進めている全国の学校から、不登校やいじめの予防につながっているとの実践が多数発表されています。
時代の流れが大きく変わろうとしている今日にあって、子どもたち同士の関係づくりや教師の子どもたちへのかかわりを変えていかなければなりません。当然、身に付いていると思われる力や態度が身に付いていなければ、様々な不適応を起こしてしまいます。また、家庭や地域のせいにしても目の前の不登校は一向に改善はしません。
教職員の皆さんとの懇談の中で、不登校は「個人」の責任であると発言された方がいました。学校の社会的役割は言うまでもありませんが、大切なのは社会生活を送る上で必要な学力を身に付けること、集団で活動するためのコミュニティ・スキルを身に付けることにあります。集団生活や学業の問題よりも、個人の責任としたい気持ちは理解できますが、不登校の対応について学校ができることを皆さんとともにあらためて考えていきます。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
引用資料
平成30年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」について(令和元年10月25日文部科学省初等中等教育局児童生徒課)
(教職員の協力を高める学校づくり 2019-12-25付)
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