教職員の協力を高める学校づくり〈No.35〉 不登校6タイプの特徴 問題解決的対応など必要(教職員の協力を高める学校づくり 2020-01-30付)
前回は、3つの要因(本人の問題に起因、学校生活に起因、家庭生活に起因)と2つの進行状況(急性型、慢性型)を記述しました。今回は、要因と進行状況を組み合わせ、6タイプが不登校の分類と見立てし、それぞれの特徴を説明いたします。(『続 上手な登校刺激の与え方』小澤美代子著の分類を一部改変)
(1)本人の問題に起因する急性型
①感受性が強く、深く悩む
②真面目、几帳面である
③こだわりをもつ
④友人はいる
⑤成績は悪くない
⑥思春期の不安・葛藤が強い
⑦神経症的な状態がみられる
⑧発達に問題はない
⑨親の養育・保護能力に問題はない
(2)本人の問題に起因する慢性型
①敏感過ぎる(音、光、言葉、雰囲気)
②おとなしく目立たない
③心身が丈夫ではない
④何事にも不安や緊張が高い
⑤友達をつくるのが苦手
⑥学習の基礎でつまずく
⑦頭痛、腹痛を訴える
⑧発達上の問題を感じる
⑨親自身に不安や不全感がある
(3)学校生活に起因する急性型
①性格は明るく活発
②勉強や運動は頑張る
③友達をつくる力はある
④発達上問題はない
⑤友達とのトラブル
⑥学習の挫折
⑦教師の厳しすぎる指導、叱責
⑧家庭環境は問題ない
(4)学校生活に起因する慢性型
①内気で自己主張がうまくない
②勉強が少しずつ遅れてきた
③友人関係が維持できない
④学級崩壊を経験している
⑤進級、入学などで変化がある
⑥いじめが慢性化している
(5)家庭生活に起因する急性型
①家庭生活に急激な変化があった
②最近顔色が悪く、表情が暗くなった
③最近投げやりな態度が目立つ
④短期間に適応力が低下した
⑤発達上の問題はない
⑥保護者に精神的余裕がない
⑦最近服装の乱れや忘れ物が目立つ
(6)家庭生活に起因する慢性型
①家庭崩壊がある
②反抗や不服従がみられる
③保護者が長期的病気である
④虐待が疑われる
⑤保護者の保護能力が低い
⑥経済的に困窮している
⑦いつも不安そうにしている
⑧家庭が過保護・過干渉である
特に本人の問題に起因する急性型や慢性型は、担任と学校カウンセラーと連携し、カウンセリングや心理治療が有効と思われます。
学校生活に起因する場合は、対人関係や学習などの問題解決的対応が必要であり、教育的支援が有効です。
さらに、家庭生活に起因する急性型や慢性型は、家族関係などの関係調整が必要となり、児童相談所や市町村の福祉課、さらに虐待などは警察署との連携が求められます。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
引用・参考文献
『続 上手な登校刺激の与え方』小澤美代子著 2006 本の森出版
『傷つきへの心理的援助』前川あさ美著 2004 ぎょうせい
『子どもの認知行動療法』児童心理増刊 2010 金子書房
(教職員の協力を高める学校づくり 2020-01-30付)
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