教職員の協力を高める学校づくり〈No.32〉 小中 学業不振など要因に 不登校 高校は友人関係など(教職員の協力を高める学校づくり 2019-12-09付)
前回に引き続き、文部科学省の平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(令和元年10月17日公表)の状況を記述します。
不登校の要因を分類別でとらえると、小学校(国立、公立、私立を含む、複数回答あり)では「不安」の傾向がある児童数は全不登校児童中35・9%となっています。さらに「不安」の傾向を状況別に分類すると、「いじめを除く友人関係をめぐる問題が不安」があると答えたのは42・4%、「学業不振」が41・9%となっています。
つぎに「無気力」の傾向がある児童は全体の26・6%であり、内容を状況別に分類すると「学業の不振」が38・6%で最も多く、次いで「学校のきまりをめぐる問題」に課題を抱えているが24・5%、「クラブ活動・部活動への不適応」も24・5%となっています。
また、「いじめを除く友人関係に課題」を抱えていると答えたのは全体の14・0%で、内訳は「教職員との関係をめぐる問題」が50・9%、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が42・9%となっています。
中学校(国立、公立、私立を含む、複数回答あり)では、全不登校生徒中「不安」の傾向があると答えた総数が全体の32・4%となっており、内容を状況別に分類すると「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が全体の35・2%、「学業不振」が34・4%となっています。
つぎに「無気力」の傾向がある生徒は不登校全体の30・0%となっています。内容を状況別に分類すると、「学業の不振」が44・7%で最も多く、「進路にかかる不安」が28・6%、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が12・4%となっています。さらに「学校における人間関係」に課題を抱えていると答えたのは不登校全体の18・7%であり、状況別に分類すると、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が46・0%、「教職員との関係をめぐる問題」が45・0%となっています。
このことから小・中学校では、「学業不振」「教職員との関係をめぐる問題」「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が不登校の主な要因であることが理解できます。
高校(国立、公立、私立を含む、複数回答あり)の全日制では、総不登校数中、「不安」の傾向があると回答したのは25・9%であり、内容を状況別に分類すると、「いじめを除く友人関係」をめぐる問題が全体の21・3%、「学業不振」が29・3%、「教職員との関係をめぐる問題」が21・0%、「進路にかかる不安」が55・3%となっています。
つぎに「無気力」の傾向がある生徒は31・7%であり、状況別に分類すると「学業の不振」が47・3%、「進路にかかる不安」が24・9%、「学校の決まり等をめぐる問題」が31・1%、「入学・転編入学時の不適応」が39・7%です。さらに「学校における人間関係」に課題を抱えているが全体の18・7%で、状況別に内容をみてみると、「いじめを除く友人関係」をめぐる問題は63・8%となっており「教職員との関係をめぐる問題」が43・4%、「クラブ活動・部活動等への不適応」が41・7%となっています。
定時制(国立、公立、私立を含む、複数回答あり)では、「不安」の傾向がある生徒が全体の16・1%で、状況別に分類すると、「進路にかかる不安」が44・2%、「いじめを除く友人関係」をめぐる問題が22・9%、「教職員との関係をめぐる問題」が23・2%、「入学・転入学・進級時の不適応」が26・5%となっています。
つぎに「無気力」の傾向がある生徒が全体の36・3%であり、状況を分類すると「学業の不振」が47・0%で最も多く、次いで「進路に係る不安」が33・4%、「教職員との関係をめぐる問題」が32・3%、「入学・転編学・進級時の不適応」が43・6%となっています。
「学校における人間関係」に課題を抱えていると答えたのは全不登校生徒中8・2%であり、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が48・9%、「教職員との関係をめぐる問題」が32・3%、さらに「遊び・非行」の傾向があるは不登校全体の15・9%を占めています。
高校では全日制、定時制ともに、「友人関係をめぐる問題」「教職員との関係をめぐる問題」「学力不振」「進路にかかる不安」「入学・転編学・進級時の不適応」が不登校の主な要因となっています。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
引用資料
平成30年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」について(令和元年10月17日文部科学省初等中等教育局児童生徒課)
(教職員の協力を高める学校づくり 2019-12-09付)
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