教職員の協力を高める学校づくり〈№24〉 良好な人間関係が重要 いじめ問題の予防と対応(2)(教職員の協力を高める学校づくり 2018-09-28付)
いじめは、みようと思ってみなければ発見することはできませんし、いつでもどこでも起こり得る問題との認識をもつべきですが、未然防止のためには、学級や部活動などその集団の人間関係がどれだけ良好な関係であるかどうかが重要です。
一般的に、いじめがどのようにして進んでいくのかを表で示しましたが、④の段階で初めていじめが可視化されることになります。
お分かりのように、いじめの様子が担任や担当の教師、さらに集団の仲間に明らかになるためには、①から③までの段階を経ていることになります。その間、児童生徒は執拗ないじめを受けることになります。こうならないためにも未然防止の機能をどう築くのかが、学校に課せられた重要な課題です。
未然防止の機能でまず考えるべきことは、いじめられている児童生徒の友人が、単なる楽しいだけの人間関係で一緒にいるのか、それともいじめられている友人の側に立てるのかでは状況はずいぶん違ってきます。
同様に、教師も児童生徒にとって、悩みや不安を打ち明けられる存在であるかどうかが問われるところです。
教師や親やカウウンセラーからアドバイスを受けても相談しない理由は、①秘密を守ってくれない②何も変わらない③ちょっと待ってとは言うけれど後がない―などが挙げられています。
①の秘密を守ってくれないは、本人の了解を得るようにし、担任、養護教諭、部活動の顧問、保護者などのチーム守秘義務で対応すること、さらに事情を他の児童生徒に聞く場合はいじめられた本人の了解を得ることを前提とし対応します。
②の何も変わらないは、児童生徒の立場を考慮することなく安易な対応に終始してしまうなど、教師の認識の甘さがこのような状況をもたらしてしまう事例を多く目にします。言っても何も変わらないといじめられた児童生徒は、アレキシサイミア(感情症)を発症し、教師への不信と恨みをもち、それ以降教師に心を開くことはなくなります。
③のちょっと待ってくれと言うけれど後がないと、「どうせ私は大事にされていない」など児童生徒に大きな失望感をもたせてしまいます。教師は児童生徒の危機感を感じ取り、何をさておいても相談に応じたいものです。どうしても手が離せない用事があるならば、○○分後に来てほしいと約束することが大切です。
いじめられている児童生徒は、「ぼくはいじめられて苦しい。誰も分かってくれない。この状況がいつまで続くのか先が見えない」と無力感に陥ります。その結果、自己葛藤により頑なでゆがんだ価値観をもつことになり、居場所のない感覚や頑張りがきかない根こぎ感(根のない状態)にさいなまれ、デフェンスコモンズ(自分は自分であるという共通感覚)の感覚が消失し、何を聞かれても、何をしても無気力な状況に陥ってしまい、結果的に鬱を発症することもあります。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-09-28付)
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