教職員の協力を高める学校づくり〈No.23〉 深刻な社会問題という認識を いじめ問題の予防と対応(1)(教職員の協力を高める学校づくり 2018-09-12付)
カウンセリングの研修会で東京に出向いたとき、文科省の生徒指導担当の方と親しくお話をする機会がありました。そこで話題となった一つに「いじめの認知」がありました。
いじめは当然、あってはならないことであるものの、「いじめはないわけがない」とのスタンスで各学校は取り組んでいただきたいとの話がありました。
いじめの認知件数が上がるということは、それだけ注意深く子どもたちの様子を見守っていることに通じ評価できると話していました。
また、いじめの早期発見は大切ですが、教職員がいじめを発見したときには、そのいじめはすでに始まっており、重要なのは未然防止であるという点など共感できる懇談内容でした。
いじめ防止対策推進法(2013年:平成25年法律第71号)の第1章総則「目的」では、「いじめは、教育を受ける権利を侵害し、心身の健全な成長と人格の形成に重大な影響を与え、生命・身体に重大な危険を生じさせる」とあります。
また、いじめの定義を「当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人間関係にある他の児童生徒が行う、心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と改正し、今日に至っています。
改正後の本法律は(1)「いじめは家庭教育の在り方に大きな関わりを有している」、(2)「いじめ問題は、教師の子ども観や指導の在り方が問われる問題である」と踏み込んでいます。
さらに法の改正を受けた「いじめ防止などに関する普及啓発協議会(2015年)」では、いじめの認知に当たっての基本的な視点として、「(a)個々の行為が、いじめか否かの判断は、被害児童生徒の立場に立って行う。(b)早期発見のための解釈は要らない。必要なのは事実のみである。(c)はっきりしないものは全て疑え」と提示し、いじめ問題は極めて深刻な問題であるとの認識を示し、裁判事例をみても同様の視点による踏み込んだ判決となっています。
いじめは強い弱いに関係なく行われ、一回の行為であってもいじめであり、いじめられた側がいじめられていると判断すれば、それはすべていじめです。
いじめた児童生徒側や教師からよく聞く残念な話に、「いつもあの子はああだから…」などいじめられる側にも問題があるかのような内向きの意見を聞かされます。これは重大な認識違いです。
また、けんかなど仲違いから始まったいじめは、けんか両成敗ではなく、事後の結果によって判断しなければなりません。最初は双方向のトラブルであっても、最終的に片側の児童生徒が登校することができなくなるなどが生じた場合は、相手側のいじめであるとの認定がなされます。
近年、問題となっている「いじり」も、いじられている相手が精神的に不調となりいじめられていると訴えるならば、いじめと認定されます。
このような内容に教育現場では、「そこまで考えなくても…」「まさかそんなことは…」など認識不足を感じる発言を聞くことがありますが、いじめは単なる学校の問題としてではなく、極めて深刻な社会問題であるとの認識をもたなければ対応はできませんし、そのような甘い認識がいじめを助長させることになります。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-09-12付)
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