教職員の協力を高める学校づくり〈NO.20〉 本音で話し、肯定的人間関係を 実りある学級懇談会とは
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-07-25付)

 一学期末のまとめとして、七月は学級懇談会を開く学校が多いと思います。

 ところが、参加者が減少し固定化され、教師の口から「保護者の参加者がこれだけ少ないのであれば、学級懇談会を年一回にしたらどうでしょうか」など、学級懇談会の開催に否定的な意見が出される学校もあります。

 確かに、保護者の皆さんは「学級懇談会といっても仕事を休むことがなかなかできないので参加できない」との声もありますが、どうしたら多くの保護者が集まってくれる学級懇談会となり、児童生徒のための応援団となってもらえるのか、あらためて考えてみたいと思います。

 こんな経験はありませんか。授業参観後の学級懇談会で、担任から保護者に話を頂くよう促しても、まわりの様子に気を遣いながら言葉少なくしか発言しない。また、担任も保護者からどうみられているのか気にしてしまい、思うような話ができない。

 緊張の中「何かありませんか」と質問しても保護者は下を向いている。仕方なく担任の一方的な話に終始するしかなくなる。しかし、一方的な話の危険性は「決めつけた」など誤解を生じる発言や態度となりやすく、保護者の不満を高めてしまうことにあります。

 学級で問題が生じたときや学級・学校行事など、教師と保護者、保護者同士が協力して活動できるよう、子どもたちの成長に役立てる関係を築くためには学級懇談会の機会を活用し、楽しく本音で話し合いながら、肯定的な人間関係を築くようにしなければなりません。

 一般的に保護者が学級懇談会に望むこととして、①自分の子どもや学級のことを知りたい②子どものことで、ためになる話を聞きたい③保護者同士、子育てについて話せるようになりたい―の三つが最も多いといわれています。皆さんの学級懇談は、保護者のニーズをとらえた内容になっているでしょうか。

 学級懇談会の進め方の一例を紹介しますと、事前準備として教室の戸をあけ、「どうぞお入りください」という雰囲気が伝わるようにし、机やいすを「コ」の字にしたり、机を隅に置き、いすだけにして、できるだけ座る距離感を縮めるようにします。

 つぎに、担任も輪の中に入り、最初は保護者懇談会の雰囲気を和ませるためのウォーミングアップとして、「肩たたきとおしゃべりでリラックスタイム」(近くの人とペアになり、肩たたきや、肩もみを通してリラックスをしながら、①自己紹介②わが子のいいところ③今、やってみたいことなどを語り合う)を行い、融和的な雰囲気をつくり出すようにします。

 また「握手で出会い」(保護者や担任が一緒に教室を歩き、合図のあと近くの人と笑顔で握手し、互いに自己紹介、好きな食べ物、趣味などについて聞き合います。できるだけ多くの人と交流を図るため、数回繰り返します)も有効です。

 懇談会の内容例として「子育ての宝箱」(四人グループになり、子育てをしていてホッとするような場面や、心に残っている嬉しい場面などを思い返し、順番に発表します)は、保護者同士の仲間意識を高め、他人のうれしさを聞くことで今後の子育てに希望と勇気をもつことがねらいです。

 さらに、「勉強への声かけ」(ペアになり、保護者としてうまくいった声かけを交流し、その後、子どもがやる気になるような声かけの方法を出し合い、全体に発表します)は、家での子どもとの接し方の参考となり、保護者同士の肯定的な連帯感が高まります。

 このほか、魅力ある学級懇談会づくりのための工夫が書かれた書物は、多数市販されています。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2018-07-25付)

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