教職員の協力を高める学校づくり〈NO.16〉 そのきまりの合理的根拠とは 集団秩序は自分たちで築き上げて(教職員の協力を高める学校づくり 2018-05-30付)
学校の常識は、社会の非常識と批判された時代がありました。私もその渦中、教職員時代を過ごしてきました。
特に問われたのは学校の決まりごとです。学校訪問の際、「この学校の○○という決まりの、根拠はなんですか」と聞くと「前から決まっているので」とか「学校の決まりごとなので」など答えに窮する場面がみられます。
当然、このような状況では、児童生徒や保護者の疑問となり、あきらめや不満を募らせてしまいます。
過去に、「学校が決めたのだから」「学校を守るため」と称し、子どもたちにそぐわない内容であっても、強制的に守らせた時代がありましたが、今それは通用しないばかりか、批判にさらされることになります。
合理性に欠ける学校の決まりは、子どもたちの健全な育成のため見直しを図らなければなりません。
根拠が不明確な決まりのほとんどは、いわば学校の秩序を守るための防波堤として機能させることに意味があり、子どもの側からすると抑えつけの手段になっていることが目につきます。特に、生徒指導は強権であると自負する教職員や、過去荒れていたという学校の一部にそのような傾向が残っています。
私の経験上、合理的根拠に乏しい学校の決まりは、かえって反発され、生徒指導上の問題が生じてしまうことを多く目にしてきました。
理不尽な決まりであっても、決まりがなければ学校は荒れてしまい集団の秩序を保つことができなくなるなどの恐れをもつのではなく、児童生徒を信じるところから出発すべきです。
過去、合理性のある学校の決まりづくりとともに、生徒の学校生活における自律性を高めるため、校則検討委員会を生徒会主導で組織させ、従来の学校の決まりを「学校規定」と「生活の約束」に分離するなど、教職員とともに学校の決まりづくりに取り組んだ経験があります。
学校規定とは登校時間や自習時間、昼食時間などが該当し、互いに迷惑をかけることなく楽しく学校生活を送るための決まりを「生活の約束」として生徒に作成を委ねました。
また、学級討議や校則検討委員会、さらに特別活動での「集団の秩序」や道徳の時間での「仲間を思いやる心」などを全学級で取り組んだ結果、生徒は、教職員に対する信頼を深めるとともに、自治意識が高まり、集団生活における規律や秩序を自ら守ろうとする自浄作用が働き、生徒個々のモラルも向上し、生徒指導上の問題は皆無となりました。
その後、生徒会主導により「生活見直し集会」が定例で行われ、「生活の約束」の見直しについて活発な討議が行われたことを思い出します。
集団の秩序は与えられるものではなく、自分たちの手で築き上げるようにした成果によって、それぞれの生徒に根付いた「生活の約束」となり、地域や保護者からも賛同を得ることができました。
(社会福祉法人恵友会監査室長・北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-05-30付)
その他の記事( 教職員の協力を高める学校づくり)
教職員の協力を高める学校づくり〈NO.21〉 長期休業中は子の状況把握を 夏休み明けが危険です
夏季休業中ですが、ことしも例年以上に暑い毎日が続いています。 言うまでもありませんが、夏季、冬季、学年末の長期休業日は、学校教育法施行令第二九条に定められおり、授業を行わない日であって...(2018-08-10) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈NO.20〉 本音で話し、肯定的人間関係を 実りある学級懇談会とは
一学期末のまとめとして、七月は学級懇談会を開く学校が多いと思います。 ところが、参加者が減少し固定化され、教師の口から「保護者の参加者がこれだけ少ないのであれば、学級懇談会を年一回にし...(2018-07-25) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈NO.19〉 日常以上に情報交流意識して 教師の教育相談を考える
一学期のまとめとなる七月となりました。あと、二週間ほどで夏季休業となりますが、中学校の部活動であれば北海道大会を目指す重要な大会が続き、高校は高体連地区大会も終了し、学校祭を数日後に控えた...(2018-07-11) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈NO.18〉 日常こそ若手や人を育てる機会 育成が機能しない職場は業務衰退
「あの先生が異動すると、あとはどうなるのだろう」と教職員や保護者から不安の声を聞くことがあります。学校の管理職は、その先生に代わる先生を希望しますが、なかなかそうはいかないのが人事です。 ...(2018-06-27) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈NO.17〉 運動会等は児童生徒を生かす場 すべての教育活動が子を高める機会
運動会、体育大会の季節がやってきました。学芸会や学校祭(文化祭)とともに学校の二大イベントの一つです。各学校では、児童生徒が生き生きと活躍できるように、授業時数の工面をしながら特別時間を編...(2018-06-13) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈NO15〉 保護者から信頼される家庭訪問とは 教師間や学校間で内容共有し交流を
授業確保のため、家庭訪問を夏季休業中へ移行した学校もありますが、北海道内の学校はゴールデンウィーク明けに予定している学校が多いように思います。今回は「保護者から信頼される家庭訪問とは」と題...(2018-05-18) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈NO14〉 ゴールデンウィーク前後を乗り切る 職場見通し声かけと情報連携を
本年度のスタートが切られ、あっという間に数週間過ぎました。ゴールデンウィークを前にした今、同僚の教職員の皆さんや児童生徒に心配な様子は見られないでしょうか。 ゴールデンウィーク前後は、...(2018-04-25) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈No.13〉 経営案は職員間で共有化を 活動のねらいと振り返りも大切に
三十年度の教育活動が、教職員の活気にあふれた姿と、はつらつとして登校してくる児童生徒によってスタートしました。四月は出会いの月であり、新たなスタートの時です。 教育活動は前年度の活動の...(2018-04-04) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈NO11〉 教職員の熱意が原動力に 学校改善を図る意味を考える
職場改善という言葉が教育現場でよく使われますが、教育活動や事務業務にかかわらず、人は経験年数が増え、年を取るにつれて、保守化の傾向を強めてしまいます。経験年数が増え、年齢が進むと今まで築い...(2018-02-23) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈NO10〉 日ごろから積極的な声かけを 〝話が聴ける職場〟の重要性
別項にてコミュニケーションの基礎理論について説明しましたが、コミュニケーションは単なる言葉のやり取りではなく感情のやり取りです。さらに、コミュニケーションは話すことととらえがちですが、最も...(2018-02-19) 全て読む