教職員の協力を高める学校づくり〈NO.17〉 運動会等は児童生徒を生かす場 すべての教育活動が子を高める機会
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-06-13付)

 運動会、体育大会の季節がやってきました。学芸会や学校祭(文化祭)とともに学校の二大イベントの一つです。各学校では、児童生徒が生き生きと活躍できるように、授業時数の工面をしながら特別時間を編成し、練習や準備に忙しい毎日を過ごしていることと思います。

 小学校では、体育的活動の発表の機会、中学校では体育の授業の一環として、高校では基本的競技力を高め、日ごろの発散の機会として行われるほか、小学校での白組、紅組など、中学校や高校でも集団のチームワークづくりなど様々な意味をもって行われています。

 現職在任中、役目柄、校区内の小学校の運動会を観戦する機会がありました。目いっぱいグラウンドで躍動する子どもたちに目を奪われましたが、その小学校では教職員が前面に出て指導している姿はほとんどみられませんでした。小学校に入学して間もない一年生や二年生の集合や出番の準備、諸注意はお世話係の上級生が行っていました。教職員は、ニコニコしながらその様子を見守り、口を極力出さないようにしているようです。

 この様子にとても興味をもち、校長や教頭、教務主任やPTA会長にも、「運動会はどのような方針で行っているのですか」と聞きました。

 すると、「主役は子どもたちだから」と同じ答えが返ってきました。

 さらに「運動会で使う重たい用具は、教職員や保護者がお手伝いをするけれど、それ以外のことは子どもたちで役割を分担し、活動できるようにしています」と重ねて答えてくれました。

 言葉どおり子どもたちは、練習の成果を披露するだけではなく、随所に運動会の主力として見事に携わっていました。

 当時の校長は「子どもたちは、競技に参加し頑張る、そのサポートは、教職員や保護者による行事という考えから、子どもたちが自分の競技に参加するだけではなく、可能な範囲で役割をもって活動させることが教育だと考えています。確かに子どもたちには競技に集中させたいし、それ以外の活動は子どもの疲労につながるのではないかという声があるかもしれません。しかし、ここから、子どもたちは様々なことを学び取ってくれるはず」と話してくれたことを思い出します。

 ある小学校、中学校の運動会や体育大会では、やたらグラウンドで教師の姿が目につきました。児童生徒の集合や整列さらに、注意も教師が前に出て長々行っていましたが、子どもたちは下を向き、話を聞いている感じはなく、教師が大きな声で叱責し、ほかの場面でも同様の様子がみられました。

 この様子をみて、子どもたちは、運動会や体育大会をどのように感じているのだろうか、充実感ややりがいをもって楽しんでいるのだろうか、それとも、どうなのだろうかとあれこれ考えさせられました。

 「それは分かるけれど、うちの学校の子どもたちは、それはできない。だから教師がやる」と聞こえてきそうです。

 しかし、運動会や体育大会など教育活動のすべては、子どもたちを高める機会であり、できないから、させないのではなく、どうしたらできるようになるのだろうかと考え進めることが、学校が担うべき課題であると理解しています。

(社会福祉法人恵友会監査室長・北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2018-06-13付)

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