教職員の協力を高める学校づくり〈NO11〉 教職員の熱意が原動力に 学校改善を図る意味を考える(教職員の協力を高める学校づくり 2018-02-23付)
職場改善という言葉が教育現場でよく使われますが、教育活動や事務業務にかかわらず、人は経験年数が増え、年を取るにつれて、保守化の傾向を強めてしまいます。経験年数が増え、年齢が進むと今まで築いてきたもの、失うものが増え、適応力も低くなってしまい、言わば「既成の価値観への愛着」が増してきます。自己批判的な危機意識をもって新しいものを取り入れていこうとすることは重要ですが、今まで築いてきた内容を変えようとすることには大きな抵抗感をもってしまいます。
現状を批判的にとらえなければ、改善を進めることはできませんが、年配者や既得権益の意識が高い教職員はまるで自分が否定されたかのように感じ、教職員の問題意識の芽を摘み取り、提言をはねつけてしまうこともあります。ほかの教職員や学校リーダーが職場づくりのために改善案を提案しても、反対のための持論を展開し取り扱おうとしない。その心理には提案者が気に入らなかったり、自己の存在を誇張するためであったり、今までどおりでも特段問題はないし変える理由もないし、第一面倒であるという思いが含まれているようです。
新しい学校に異動すると様々な課題がみえるものです。しかし、ストレートに問題提起すると白眼視される傾向があります。その結果「ことし来たばかりなので、来年当たりから問題提起しよう」と思っていてもそのうち現状に慣れ、問題を感知する意識が衰えていきます。
ここで心配なのは「職場の問題意識が衰退する」ことです。また、上記のような発言は、職員の問題意識を削ぎ、チャレンジ精神を低下させてしまうことになります。特に、学校のリーダーがこのような姿勢では、子どもたちの教育活動や事務業務は進展しないばかりか停滞することになります。
危機管理でとらえると、マスコミに取り上げられる学校の問題は、社会から常識外として糾弾されることが多くあります。その多くは、学校組織自体が問題を問題として感じない状況に陥っていることが背景にあります。組織はひとたび確立されてしまうと、合理的な理由がなくてもなかなか改善されません。
教育現場では、学校リーダーが改善案を提示する機会が多くありますが、上記のような状況を変えるための一つとして、日常的に教職員一人ひとりと向き合い、よりよい教育活動を目指すための課題と方策について意見交換し、改善の必要性を説明する機会をもつことです。「既得権益の強い教職員がいたので教育改善や業務改善を図ることができなかった」「学校リーダーの理解がなく断念した」などの話を聞くたびに「そのことで一番迷惑を被るのは、児童生徒である」と説明しています。改善の必要性を感じている教職員の熱意が学校を変える原動力となります。
また、互いの問題意識には学校リーダーに限らず「ウエルカム」の姿勢をもって日々の活動に臨みたいものです。このような学校リーダーや教職員一人ひとりの姿勢が学校改善を進め教職員の協力性を高めます。
(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-02-23付)
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