教職員の協力を高める学校づくり〈NO.22〉 温かな思いとメッセージを 「保護者召喚」やめませんか
(教職員の協力を高める学校づくり 2018-08-24付)

 在任時代、教職員に「保護者召喚」と言う言葉は、決して使わないようにと説明してきました。また、管内や市町村の生徒指導研修会の折々にも、その話をさせていただいています。

 生徒指導上の問題が発生すると、担当の教師は該当の児童生徒の保護者に来ていただくことを「保護者召喚」ということがあります。高校でも生徒指導以外に単位取得や卒業認定の時期に保護者に来ていただくことを、「保護者召喚」という学校があります。

 そもそも「召喚」という言葉は呼び出すという意味の言葉であり、裁判所が被告人や証人などの出廷を命じるときに使う言葉です。さらに「召喚」には、上の者が下に控える者を呼びつけるという意味も含まれています。

 職員室で「保護者召喚」と言っている教職員は、このような意識で使っているわけではないと思いますが、行動や成績に問題がある児童生徒の保護者を呼び出し、上から目線で叱りつけるイメージをもってしまいます。このようなことから私は「保護者召喚」ではなく、「保護者と相談」と言い換えるよう教職員に伝えてきました。

 生徒指導上の問題を起こした保護者の立場を考えてみると、どんな思いで学校へ出向いて来るのでしょうか。来たくて来たのではなく、子どものことで呼びつけられたわけですから、多くは悲痛な面持ちで不安を抱えながらの来校となります。

 子どもは確かに親の保護のもとに生活していますが、保護者にしてみれば、学校で問題を起こすような子どもに育てようと思っていたわけでは決してありません。また「家庭ではこうしてください」「保護者としてこうあるべきです」など正論を教師から語られても、それがうまくできないからこうなってしまった保護者の悩みに届きようがありません。

 このような中、保護者は時が過ぎるのを待つように黙って話を聞くしかありません。しかし、保護者によっては「保護者召喚」の名のもとで学校に呼ばれ、学校の一方的な説明、指導に対して反発し、トラブルに発展する事例を多く目にしています。

 子どもを取り巻く問題は家庭の問題であり、学校の問題ではないという態度を取るのではなく、学校と保護者がともに責任をもち協力しながら対応する生徒指導の大原則に立ち返ることが重要です。

 「保護者との相談」とは、事実は事実として保護者に伝えながら、保護者の苦しみや子育ての悩みをくみ取り、子どもの将来のため、保護者と学校がどう協力して進めることがよいかを検討する場であり機会という意味です。

 保護者に学校に来ていただき、帰宅するとき、どのような気持ちで帰宅するのでしょうか。暗く沈んだ気持ちなのでしょうか。学校が一緒になって子どものために頑張ってくれるという温かな思いと、子育てへの勇気あるメッセージを与えられるのか、どちらが保護者や児童生徒から信頼される学校になるでしょうか。

 「保護者召喚」でなく、「保護者と相談」に言葉と内容を変えて対応していただければと思います。

(北海道医療大学非常勤講師・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2018-08-24付)

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