【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.36札幌小学校英語活動研究会(類家斉会長)第6学年 主体的に学ぶ授業づくりのポイント(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-11-26付)
友達とのやり取りをするスモールトークで“話す経験”を積む
◆教材の特徴生かし、学ぶ意欲を引き出す
6年生の外国語学習では、子どもの発達段階と教材の特徴を結び付けた授業づくりが鍵になる。ここでは、教材の特徴を生かし、子どもが主体的に学ぶことができることを目指した実践の一部を紹介する。
ポイント1 比較や推測のできる場面を
6年生の子どもは、英語を見聞きする中で、状況から意味を推測したり、学んだ内容を整理したりすることができるようになってくる。それを生かすことによって、子どもの学びを深めさせたい。
例えば、『Hi,Friends』と『We Can!』に共通して登場する言語材料として、職業の名前がある。各単語をただ羅列して覚えるように促しても定着は難しい。そこで、それぞれの単語を意図的に提示し、比較させるのである。子どもは、職業名には“er”や“ist”が末尾に付くものが多いことに気付く。名詞や動詞に“er”や“ist”が付くと、人物や役割を表すという規則性に迫ることができる。そして、日本語の職業名と比較させることによって、日本語においても「師」「士」「家」といった漢字が同じような役割を果していることに気付いていく。外国語の学びを通して日本語を再発見するとともに、構造的に言葉を捉えることができる。
ポイント2 「ストーリータイム」を生かして英語の響きの面白さを
『We Can!』には、各単元の最終ページに「ストーリータイム」が収録されており、これは絵本の読み聞かせのように扱うことになっている。絵本の良さは、①良質なまとまりのあるインプットを②繰り返し③場面とともに与えることができるという点である。特に『We Can!2』では、最後にライム(押韻)が登場するところが最大の特徴と言える。
このライムを、教師から与えるのではなく、子どもに気付かせるためには、韻を意識してリズミカルに読んでいく必要がある。繰り返し聴かせる中で、ジェスチャーを付けたり強調したりすることによって、特徴を捉えさせることができると考える。もちろん、英語に自信のない方は音声教材を利用することもできる。
こうしたインプットを繰り返すうちに、子どもはやがて「次もあるはずだ」と、ライムを探すようになる。ここが最も大切な部分である。音に注意しながら読み聞かせを聴いたり、文字を見て見当を付けたりすることができるようになる。
ポイント3 「スモールトーク」は簡単なやり取りで
「スモールトーク」も、『We Can!』の特徴の一つである。文部科学省のハンドブックでは、5年生はインプット、6年生はやり取りが中心になっている。簡単な事柄について、友達同士で話し合う活動を継続的に授業に取り入れていくイメージである。
留意したいのは、移行期の6年生はまだまだ外国語学習の経験が浅いということである。十分に慣れていない状態でスモールトークを行っても、子どもにとっては負担になってしまう。そこで、6年生の初期段階はインプットを中心にし、やり取りは内容をごく簡単なものに絞って行うことを提案したい。
子ども同士のやり取りでは、つい学習中の言語材料を使い「現在よりも少し難しいもの(I+one)」と考えてしまいがちだが、逆に「現在よりも簡単なもの(I―oneまたはtwo)」の内容で話させるのである。そうすることで、子どもは負担感なくどんどん話すことができる。この「どんどん話す」というということが大切である。こうした経験を積むことによって、流暢に英語を話す感覚を掴み、スピーキング能力を高めるとともに、自信につなげることができる。
ポイント4 「書く」活動への意欲を引き出し、満たす活動を
高学年の子どもは、英語を「書いてみたい」という関心・意欲が高い。英語の歌やチャンツ、友達同士の会話に関心の低い子どもでも、「書いてみたい」という思いをもっていることもある。こうした子どもの願いに応える活動を授業の中に位置付けることも、教科化に向けてより可能になった。
例えば、今年度や来年度は、限られた時数の中で単元を消化していくため、自己紹介の学習を学期半ばに行うなど、日常としては不自然な場面になる場合がある。しかし、「書く」活動を取り入れることで、「相手」の幅を広げることができる。同じ地域の中学生、保護者、または未来の自分などに書いて伝えることによって、「自己紹介」に大きな意味を見出すことができるのである。
当然ながら、書く活動は時間をかけて丁寧に指導していく必要がある。アルファベットの字形に注意させることはもちろん、ある程度の型を提示し、ワードリストを参照させることが欠かせない。また、単語間に適切なスペースを空けさせることも、英語の構造に気付かせるためにしっかり指導したい部分である。困難が伴う場合も多いが、作品が完成した後の子どもの達成感は大きなものになると考える。
このように、授業の中に発達段階に適した活動を組み込み、子どもの気付きや創意工夫を生かした授業を行うことにより、主体的に学ぶ態度を育むことができるのである。
(札幌小学校英語活動研究会 第6学年部会 札幌市立北光小学校 教諭 佐々木 歩)
※次回は、北海道中学校理科教育研究会「課題探究的な学習の展開」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-11-26付)
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