【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】外国語活動編②札幌小学校英語活動研究会(類家斉会長)第4学年 主体的に学ぶ授業づくりのポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-11-19付)

伝えたい!第34回札小英研
子どもたちが遊びたいと思う遊びの英語表現

◆達成感を味わわせ、意欲を高める工夫を

◎経験の積み上げが動機付けに

 3年生から外国語活動が始まり、外国語活動2年目となる4年生。知識や技能ばかりでなく、体験を通して外国語でコミュニケーションが取れる楽しさや、外国語を使って何かができたときの達成感をじっくり味わわせてあげたい。その経験の積み上げこそが、高学年以降の動機付けとなる。

ポイント1 「聞く必然性」をもたせて

 Let’s Try!2では、聞く活動が多く設定されている。単元を通して何度も繰り返し聞くという活動の中で、子どもたち自身が英語の音声と意味とを結びつけていくことをねらっている。より効果的に活動を進めるために「聞く必然性」をもたせ、たっぷり聞かせることが大切である。そのためには言葉との出合わせ方を工夫すること欠かせない。

 単元の最初では、突然英単語を提示するのではなく、自然な会話の中で、「何だろう、知りたいな」という目的意識をもたせて、視覚教材やジェスチャーを交えながら何度も繰り返し聞かせたい。

 具体的にUnit8“This is my favorite place”で考えてみる。教師は、校内のお気に入りの場所の写真を裏返して持っており、それを指しながら“This is my favorite place.”とジェスチャーを加えながら伝える。

 その際に、黒板に校内の拡大地図を貼っておくと、「場所のことかな」「どこの写真なのだろう」と推測しながら聞くことができる。“I like playing tag.”“I like basketball.”“I like dodgeball.”などいろいろヒントとなる教師の好きなものを写真やイラスト、ジェスチャーを交えて紹介し、再び裏返しの写真、拡大地図を指しながら“This is my favorite place.Where is my favorite place?”と問う。児童が「きっと体育館だ!英語で何というのだろう」と聞きたくなったときに、“That’s right!The gym is my favorite place.”と言うのである。「お気に入りの場所を紹介する単元だよ」と言わなくても、たっぷりと聞く活動に浸り、単元の見通しをもてる導入になるだろう。

ポイント2 慣れ親しみ活動の工夫

 聞くことの慣れ親しむ活動としてLet’s Listenがある。同じくUnit8のLet’s Listen②は、登場人物と好きな教室イラストとを線で結ぶ活動である。突然音声を聞かせて線で結ばせがちであるが、それではどの子も「聞き取れた」という達成感を味わうことは難しい。そこで、音声を聞かせる前に、やりとりをしながら登場人物の名前を紹介したり、イラストの教室を確認したりしておくとよい。また答えとなる“~is my favorite place.”の前で止めて推測させてから聞かせる、2度目は止めずに聞かせて確認させるなど、どの子も聞き取れるように児童の様子を見ながら工夫するとよいだろう。

 話すことでは、特にスモールステップに慣れ親しみの活動を組み立てたい。まずは教師やデジタル教材の音をまねて口慣らしをする段階。チャンツやポインティングゲームなどはこの段階である。次の段階として、自分で語を選択し、簡単ながらも自分の思いをのせて発話するゲームがある。Unit3で使えるカードディスティニーゲームは、出たカードの単語について、自分が好きかそうでないかをそれぞれの子が答えるゲームなので、“I like~.”“I don’t like~.”に慣れ親しみながらも、自分なりに思考し自分の好みを伝えることができる。慣れ親しんだ後の、次の友達と好きなものについてインタビューし合う活動等につながるのである。

ポイント3 他教科等と連携して

 子どもたちが主体的に学ぶには、児童の興味、関心、実態を踏まえた知的好奇心を満足させるような外国語活動の時間を想像することが必要である。1年間の学習内容を見通し、他教科等との関連を図ることで学びの効果が高まる。例えば、Unit5“Do you have a pen?”では、おすすめの文房具セットをつくる活動がある。そこで、社会科と関連させてみる。4年生では、地震や防災について学ぶ単元があり、社会で学んだ知識を使って、外国語活動で「自分のおすすめ防災リュックを作ろう」という単元を組むこともできる。防災グッズを“Do you have~?”を使ってやり取りして集めて、自分なりの思いが詰まった防災リュックを作るのである。「こうしたい」「社会で習ったことを使うと…」と知的好奇心が高まり、子どもが主体的に学びだすだろう。

 また、教科ではないが、Unit2“Let’s play cards.”では、最後に友達の好きな遊びを尋ね合う活動がある。そこで人気だった遊びを学級遊びと連動させて考えるだけでも、子どもの意欲は高まるはずである。その際、子どもたちの実態や好みに合わせて英語表現を増やすことも検討したい。

 このように、単元のゴールに向けて子どもの活動を細分化することでできた達成感をどの子にも味わわせ、子どもの意欲を高める工夫をした授業を行っていきたい。

(札幌小学校英語活動研究会 第4学年部会 札幌市立美しが丘小学校 教諭 坪田めぐみ)

※次回は、「第5学年 主体的な授業づくりのポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-11-19付)

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