【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】外国語活動編③札幌小学校英語活動研究会(類家斉会長)第5学年 主体的に学ぶ授業づくりのポイント(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-11-21付)
アルファベットゲームをペアで交流する子どもたち
◆必要感ある言葉を積極的に使う授業を
2020年度には外国語科としての学びがスタートする5年生。4年生までの外国語活動に比べると学習内容や言語材料が大幅に増え、「指導できるのだろうか?」との思いが生じる。限られた時数の中で子どもたちに満足感をもたせるためには、魅力ある題材、主体性の持続、そして教師が単元のゴールに目指す子どもの姿を思い描き、その姿に向かって授業を構成していくことが大切だと考える。
ポイント1 Let,s Watch and Thinkでイメージをもたせる
「Hi,friends!」から「We can!」に教材が変わり、新たに加わった学習内容として「Let,s Watch and Think」が挙げられる。デジタル教材を活用するLet,s Watch and Thinkは、どのUnitでも扱う活動で、Unit2 When is your birthday?においては6回ものLet,s Watch and Thinkがある。どの単元においても大切にされていることは、視聴する前に教師と子どもの間のやりとりで十分にこれから学習することへの興味・関心を高めておくことである。テキストの写真を見て、どんな場面なのかを予想し、もっている知識を想起してからデジタル教材を視聴することは、それだけで主体的に聞こうとする姿勢を生む。そしてそのことが、ある程度まとまりのある文章の中からでも、知っている単語を抽出し、内容理解へとつなげていけるのではないかと考える。
Unit5 She can run fast.He can jump high.のLet,s Watch and Think2では、二人の登場人物の会話を聞いているだけの第三者が突然登場し、「He can~.She can~.」と二人の紹介を始める。一見すると違和感もあるが、子どもたちがはじめで出合う三人称という概念を余計な説明をせずに理解できる映像となっている。会話の場面では単に内容を聞き取るだけでなく、リアクションの方法やどんなふうに会話を続ければよいのかなど、自分が相手意識をもってやり取りをする際の参考にできるようになっている。そういった点にも意識して映像を見るように促していくと、より効果的な活用ができると考える。
ポイント2 相手意識のある対話ができるように
Unit7 Where is the treasure?における単元の目標は、「物の位置を尋ねたり答えたりする表現を聞いたり言ったりすることができる。また、簡単な語句を書き写することができる」「道案内で、場所を尋ねたり答えたり、簡単な語句を推測しながら読んだりする」「他者に配慮しながら、場所を尋ねたり道案内をしたりしようとする」の3つである。毎回の授業でチャンツやアクティビティをしながら新出表現や単語に十分慣れ親しむことは大事にしながらも、この学習においてゴールを目指す子どもの姿は、「他者に配慮しながら」ではないだろうか。
道案内において大切なことは、相手に正確に伝えることである。また、教えてもらう側も、確かめながら聞いて、どこまで情報を理解しているかを、相手に示しながら聞くことが大切である。「うまく道案内ができなかった」という児童の困り感から、互いに相手の理解を確認しながら対話を進めることが必要である、相手の言ったことをリピート(エコー)することが確認につながると気付かせ、リピート(エコー)を対話の技能として獲得する姿を目指していきたい。
ポイント3 オリジナリティを生かして
「伝えたい」「聞きたい」を生むために、子どもにとって必要感のある言葉を授業で積極的に使っていきたい。
例えば、Unit1 Hello,everyone.での自己紹介では、「好きな色・食べ物・テレビ番組・スポーツ」を先生や友達と交流する。「好きな〇〇」を考えたり、自分でクイズを作ったりする際には、子ども自身のオリジナリティを大事にしたい。
言葉を選ぶ条件は、①みんなが英語で分かるもの②友達と同じになりそうにないもの③楽しい気持ちになるもの、の三つである。この条件提示だけで、子どもはカタカナ言葉を思い浮かべたり、巻末のWORD LISTを頼りに言葉を調べたりする。また、「水色って英語でどう言えばいいですか?」と質問に来たり、「みんなに分かってもらえるかな?」と相手意識をもって言葉を選んだりする。
実際にコミュニケーションの場面を見ていると、意外性のあるものほど面白く、聞く方のリアクションも大きくなっている。逆に、友達と同じになってしまった場合も、珍しい相手を見付けたような気分になり、笑いが生まれていた。各Unitでの学びを児童にとって必要感のある生きたものにするために、その子らしさを取り入れられる学習展開を工夫したい。
外国語は世界を舞台に自分を表現するツールであり、世界を理解するツールであることを折に触れ子どもたちに伝え、「外国語が得意!」と自信をもって言う子どもが増えるような授業づくりをしていきたい。
(札幌小学校英語活動研究会 第5学年部会 札幌市立星置東小学校 教諭 西森美紀)
※次回は、「第6学年 主体的な授業づくりのポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-11-21付)
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