【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.41小学校特別活動編①北海道特別活動研究会(小村淳会長)・オホーツク管内特別活動研究会(保科浩則会長)低学年の学級会におけるポイント(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-12-07付)
『はさみ』を守る児童のポスター作り
◆振り返り、方策を考える過程を
ポイント1 低学年指導の重点と留意点
1年生の学級会で、どのような資質・能力を育成するかは、小学校6年間の特活指導に大きな影響を与える。小学校学習指導要領解説の特別活動編P78に示される「発達の段階に即した指導のめやす」では、自分たちで話合い活動を進めることや、意見を言い合うこと、合意形成が図れるようにすることが挙げられている。このめやすを意識して学級活動の指導を行うことで、特別活動が目指す資質・能力の育成につながる。
今回の実践では、新学習指導要領の目標で示された、三つの視点のうちのひとつである「人間関係形成」に重点を置いた。児童の間に、認め合ったり、互いのよさを生かしたりする関係性を築くことを目指す。
低学年の学級会について、小学校学習指導要領解説特別活動編では、「教師の助言を受けながら発表の仕方や意見の聞き方等の、基本的な話合いの進め方を身に付けるように配慮する」とある。特に1年生であれば、司会や記録の役割を教師が担ったり、児童と分担したりすることで、児童が運営の仕方を段階的に理解できるようにすることが大切である。
視覚に訴え、話合いの過程を明確にすることも重要である。「出し合う」「比べ合う」「決める」等の、マグネットで貼り付けられるカードや、「何時何分まで」を示す時計の掲示物等を用意しておく。これらの手立てによって、流れに沿って話し合うことや、時間を意識することを考えられるようにする。
1年生は、幼稚園・保育園の頃から、遊びの中で自分の思ったことを伝えたり、相手の思いに気付いたりする経験をしている。「みんなと仲良くなるには、どんなことをしたらいいかな」「遊びを決める時に、どうやって決めたの」等の言葉をかけて、幼児期の経験を掘り起こしながら学級会を進めていく。
そのためには、学級の中で互いに話し合える雰囲気づくりが必要になる。「自分が考えた事を言っていいんだ」「みんなの意見を聞いてみたい」と思えるような学級経営が重要である。
ポイント2 学級会の実際
初めての学級会は、議題を「学校生活で困っていることを話し合おう」、提案理由を「仲良く安心して学校生活を送るため」とした。「生活をよりよくするための課題を見いだす」経験をするためである。話合いの柱は2本立てた。柱1は「どんなことに困っているか」、柱2は「課題を解決するための工夫を話し合う」とした。
柱1では、児童の多くが「廊下を走る人が多くて、危ないので困っている」という意見をもっていた。教師が確認を取りながら、「廊下を安全にしたい」という意見でまとめた。
柱2では、この課題を解決する工夫を話し合った。「出し合う」段階では、議題から大きくずれていたり、実現が難しかったりするものでない限りは全て肯定的に受け止める事が重要になる。1年生段階で「頑張って自分の考えを言ってみよう」「迷っていたけど、やっぱり言ってみよう」という、児童の思いや願いを引き出すには、児童の発言一つ一つを、その場その場で価値付けていくことを心がけたい。低学年段階であれば、即時評価する方が効果的だと考えられる。
意見を出し合う中で、生活科の学校探検で確認した「廊下のきまり『はさみ』(走らない、騒がない、右を歩く)」に言及する児童が出てくる。他教科、他領域の学びをつなごうとする姿勢を取り立てて価値付けることで、各教科等が独立したものではなく、往還的な関係にあることを意識させる。
こうして「『はさみ』を守るように呼びかける」「看板を立てて呼びかける」「紙に書いて呼びかける」「走っている人を見かけたら声をかける」等、今までの経験や、上級生が委員会活動等で取り組んでいることを取り入れた意見が出た。そして、それぞれの意見によさがある事を確認し、「まずは今からできる事をやってみよう」と、残った時間を使ってポスター作りを行った。
ポイント3 今後の展開
入門期である1年生の学級活動で重要なのは、「話合いの進め方に沿って、自分の意見を発表したり、他者の意見をよく聞いたりして、合意形成して実践することのよさを理解すること。基本的な生活習慣や約束やきまりを守ることの大切さを理解して行動し、生活をよくするための目標を決めて実行すること」(学習指導要領第6章の第2〔学級活動〕の3の(1))である。自分たちの意見が形になって残ったり、校内の誰かに反応をもらったりすることで、「みんなで決めて、実践してよかった」という実感をもたせることになり、さらなる実践への意欲が湧く。
今回の学級会では、まずはポスターを作成し掲示したが、今後は掲示場所や内容の見直しを行うなど、さらに一歩進めた実践を行う必要がある。
「やってみて、振り返る」にとどまらず、「振り返って方策を考える」という指導過程を積み重ね、次学年につながる学級活動を展開していきたい。
(オホーツク管内特別活動研究会 網走市立中央小学校 教諭 佐藤拓)
※次回は、「学校行事のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-12-07付)
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