【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.42小学校特別活動編②北海道特別活動研究会(小村淳会長)・オホーツク管内特別活動研究会(保科浩則会長)学校行事のポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-12-10付)

伝えたい第42回北特活2
教師の励ましも受け、学校行事で自分の振り返りを通して次へとつなげる

◆どのような自分になりたいか意思決定を

ポイント1 学校行事の役割と育成したい資質・能力

 学校行事は、全校又は学年という大きな集団が一つのまとまりとして組織的に行動する中で学びを深める活動である。そこが他教科等とは異なる特質であり、学校行事の教育的価値である。その学校行事の目標は、「全校又は学年の児童で協力し、よりよい学校生活を築くための体験的な活動を通して、集団への所属感や連帯感を深め、公共の精神を養いながら、資質・能力を育成することを目指す」ことである。

 そして、児童に育成したい資質・能力は、①学校行事の意義を理解し、内容に即した行動の仕方や習慣を身に付けること②人間関係をよりよく形成するための目標を設定したり、課題を見いだしたりして、協力して取り組むこと③身に付けたことを生かして、よりよい生活をつくろうとする態度を養うこと、である。これらを意識しながら、学校行事への取り組み方を工夫していくことが求められる。

ポイント2 見通しをもち、学びを深める学校行事に

 学校行事で育成する資質・能力を確かに育むために、①学校行事の意義の理解②計画や目標についての話合い③活動目標や活動内容の決定④体験的な活動の実践⑤振り返り、という学習過程を意識して進めることが重要である。

 各学校行事の大まかな流れは学校で計画されているが、児童が積極的に参加できる場面を意図的に設け、充実感をもたせることが学びを深める上で大切であるといえる。

 ここで教師が大切にすべきことは、この学習過程を見通して学校行事を構成することはもとより、年間を通して各学校行事の関連を図っていくことである。そうすることで、「児童が継続的に成長する機会」を保障する。また、各学校行事を通してなりたい姿を想像させて目標をもたせたり、話合いで決めたことを実践する場面で指導したり、取組の中で定期的な振り返り場面を設けて助言をしたりする際には、どの場面でも具体性をもたせる関わりこそが児童の自主的・実践的な活動へとつながる。

 儀式的行事では、学校生活に有意義な変化や折り目を付けたり、文化的行事では、普段の学習活動の成果を発揮したりするなど各学校行事の意義はそれぞれ異なるが、どれも学習過程を意識して取り組むことが、学びの深まりへとつながる。

ポイント3 自己の成長を実感するための工夫を

 学校行事は、児童の心が育ち、自己の生き方への考えが深まり、自己実現を図ろうとする態度を育む機会となる。さらに、学年や学校の集団を育成し、よりよい人間関係を形成する上でも大きな役割がある。それがより効果的なものとなるためには、学校行事の事前と事後の活動の効果的な在り方を考える必要がある。

【事前の段階】

 事前の段階では、学校行事の意義を児童自身が思考し理解する場を設けることを大切にしたい。低学年においては、教師が伝えることもあるが、中学年以上では今までの経験を生かして行事の意義を思考することで、主体的に取り組む姿勢が芽生えるためである。

 また、その意義を共有した上で、学級や個人目標を立てた。その活動で目指すべき自分の方向性が見え、本番まで一層主体的に臨むことができる。今の自分の姿が目標に対してどの程度達成されている姿なのかを実感するためにも目標設定の役割は大きい。

 また、目標を立てることで相互評価にもつなげることができた。互いに取り組む姿を認め合い、伸ばし合うことで自分の成長や課題に気付くのである。

 自分の気付きや課題を書き残し、それを互いにいつでも見られるように掲示することが、取組に対する意欲の継続へとつながり、互いに成長し合う集団づくりとなった。この繰り返しが本番で個々のよりよい姿を発揮する土台づくりとなる。

【事後の段階】

 事後の段階では、振り返りの場面を設定し、自己の成長を実感することが大切である。今回の学校行事を通して、「自分はどのような成長をしたか」「目標に対して自分はどのように取り組めたか」等、明確な視点で自分の姿を振り返ることである。その際には、これまでに行ってきた細かな相互評価を生かしながら振り返ることが望ましい。

ポイント4 学校行事で身に付けた力を積み上げる

 学校行事で得た成長の実感を日常の生活で生かす視点も大切である。学校行事が終わった後に、次の学校行事ではどのような自分になりたいか意志決定することである。また、学校行事で身に付けたことを日常生活の中でも意識させ、その姿が見られた時には成長を認め、一層自信をもたせて次の行事に臨ませることも重要である。自分の成長を保護者に発信する場を設けることなども活動の充実へとつながる。

 このように、日常生活の中にある学校行事の意義を教師自身が考えることで、児童の生活が充実する。年間を見通し学校行事を意図的・計画的に取り組むことには大きな意義がある。

(オホーツク管内特別活動研究会 網走市立南小学校 教諭 佐藤 宏) 

※次回は、「児童会活動のポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-12-10付)

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