【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.43小学校特別活動編③北海道特別活動研究会(小村淳会長)・オホーツク管内特別活動研究会(保科浩則会長)児童会活動のポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-12-12付)

◆児童の発意・発想を生かす活動を大切に

ポイント1 児童会活動で育てたい資質・能力をおさえる

 児童会活動の目標は、「異年齢の児童同士で協力し、学校生活の充実と向上を図るための諸問題の解決に向けて、計画を立て役割を分担し、協力して運営することに自主的、実践的に取り組むことを通して、第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す」と示されている。つまり、異学年で活動計画を立て、役割を分担して、協力して活動していく必要がある。

 そのため、教師は児童会活動を通して、児童に①活動のために必要なことを理解したり、行動の仕方を身に付けたりできるようにする②課題を見つけて話し合い、合意形成を図ったり、意思決定したり、人間関係をよりよく形成したりできるようにする③他者と互いのよさを生かして協働し、よりよい学校生活をつくろうとする態度を養うなどの資質・能力が育まれるように配慮して、指導にあたることが大切である。

ポイント2 児童会活動を四つの工夫等で進める

(1)学習過程を見通した取組で

 児童会活動の基本的な学習過程は、「①課題の発見・確認→②解決に向けての話合い→③合意形成をして解決方法を決定→④決めたことを実践→⑤振り返り→⑥次の課題へ向かう」という流れである。年間や1単位時間の活動、そして一つの集会活動等に向けて取り組む一連の過程も、おおむねこうした流れになる。

 その中で特に重要なのは、②・③であると考える。議題や提案理由に沿って話し合い、決定することは、1年生から6年生が学級会で経験していることである。学級で培った力を学校全体で生かし、児童が主体的に行動できるように、意図的に教師は指導していく必要がある。

(2)活動時間の設定の工夫で

 学習指導要領が示している通り、各学校においては、児童会活動のために適切な時間数を確保することが必要である。

 本校では、代表委員会と各委員会は別日に設定している。代表委員会は、高学年の児童や各学年の教師が参加したり、参観したりしやすい時間に設定して、児童会活動の委員会同士のつながりや全校で児童を育てることを意識している。

 みんなでつくり上げる達成感を味わうことや多くの大人の目で児童の活動を見守り、労いの言葉をかけることが、さらなる児童の自発的、自治的な能力を助長させていくことになる。

(3)児童の発意・発想を生かした活動づくりで

 児童会主催の集会活動は、全て教師が考えた活動をしたり、教師が作成した台本を読んだりするのではなく、児童の発意・発想を生かした活動を大切にしたい。教師の適切な指導の下、児童の発意・発想を生かして試行錯誤した集会活動の実践を通し、児童の自発的、自治的な能力は大きく育っていく。

 児童会活動における「異年齢集団による交流」は、学年の異なる児童と共に楽しく触れ合い、交流を図ることによって、異年齢集団におけるよりよい人間関係を深める活動である。本校では、学期ごとに全校児童が所属する縦割り班を編成し、児童会では、異年齢集団の交流として、縦割り集会を企画している。児童の発意・発想を生かした計画をし、ボールリレーや校内キーワード探し、大縄跳びなども実施した。

 指導する教師は、企画する児童に集会のねらいを理解させた上で、児童の自発的なアイディアを大切にした。

 児童の発意・発想を大切にすることは重要だが、一方で児童から集会のアイディアが出ないことがある。その時には、話合い活動の中で教師から折り合いをつけたアイディアを提示したり、出し合っているアイディアを整理したりすることも効果的である。

(4)児童に自信を育む教師の適切な指導で

 特別活動は、児童の自発的、自治的な活動によるものである。しかし、そこには必ず教師の適切な指導が必要となる。

 児童会集会活動は、児童会が中心となり企画・運営をした全校児童に関わる集会である。だからこそ、高学年の児童がリーダーシップを発揮し、自分の役割を果たすことで、高学年としての自覚や自信をもつことにつながる集会活動にしたい。高学年が自信をもって取り組む姿を低学年が見ることで、「自分もこんな活躍をしたい」と高学年への憧れや尊敬の気持ちを高めることにもつながる。

 そのような集会活動にするためには教師の意図的・計画的な事前指導が必要である。

 ねらいをしっかり確認させたり、起こりうる問題点を想定させたり、どのように進めていくのか事前の打ち合わせをしたりした結果、児童が本番の見通しをもち、自信をもって会を進行することができた。担当する教員の指導力を発揮することによって、学校生活の充実と向上のための課題や発意・発想を生かした活動が効果的に展開できるようになる。

(オホーツク管内特別活動研究会 網走市立中央小学校 教諭 澁谷明日香)

※次回は、「クラブ活動 指導のポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-12-12付)

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