【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№48小学校編 北海道社会科教育研究会(吉井惠洋会長)小学校における主体的に社会に参画できる資質・能力の育成(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-11付)
◆仲間・個人の学びの足跡を視覚化させる
1 はじめに
本研究会では、21世紀の社会を、「国際化社会」「情報化社会」などと想定してきた。現在、社会のシステムそのものが大きな変革を迎えている。そんな予測困難な社会を切り拓きながら生きていく子どもたちに必要な資質・能力を育成するため、学んだことを活用して実社会・実生活の問題を解決していける力が必要であると考える。
小学校部会では、「協働学習」と「問題解決学習」を通して、児童が知識・技能を習得し、自らの問題解決力を高め、活用していくことに重点を置いた授業づくりを行っている。
授業のモデルとして、札幌市立新琴似北小学校の石橋純平教諭が行った6年生の実践をもとにポイントを説明していく。
2 授業について
題材 「新しい日本、平和な日本へ」
本時の目標 オリンピックに関する資料から、東京オリンピック開催に込められた日本国民の思いや願いを考え、適切に表現することができる。
ポイント1 グラフの対比から、子どもの意欲を引き出す
東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、国民がより間近でスポーツに触れ、スポーツに対する関心と理解を深めるとともに、その価値や意義を感じることができる絶好の機会である。このようなビッグイベントを教材化することは、子どもの意欲を引き出すものであると考えた。
今回の授業では、1964年と2020年のオリンピック予算グラフを提示し、二つのグラフを比較しながら、子どもの気付きや疑問などを表出させ、「なぜ、日本はこんなにお金を使って東京オリンピックを開催したのだろう」という学習課題づくりを行った。
ポイント2 学習に体験や活動を取り入れる
社会科の学習では、子どもが自らの問題意識をもち、問題解決の見通しを立て、必要な情報を収集したり、収集した情報を読み取ったり、読み取った情報を分類・整理してまとめたりする学習活動が、一層重要になってくる。
今回の授業では、教科書や資料集から、自分にとって必要な情報を整理・分析し、問題解決のために、自分なりの見方・考え方の根拠となるような情報を蓄積し、ノートにまとめる調べ学習の活動に重点を置いた。
ポイント3 豊かな自己表現ができる「交流の場」を設定する
豊かな自己表現を実現させるためには、社会的事象の特色や相互の関連、意味を多角的に考える力、社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力、考えたことや選択・判断したことを説明したり、それらを基に議論したりする力を養うことが大切である。
また、小交流(ペア学習、班交流)や全体交流など、様々な話す場づくりを教師がしかけ、どの子も気兼ねなく話し合いを進めていけるような場を充実させていくことで、個々の子どもたちが、多様な視点を身に付け、社会的事象の特色や意味などを多角的に考えていくだろう。
今回の授業では、オリンピック開催について調べた自分なりの見方・考え方が、協働学習を通して、友達との類似点・差異点を認識したり、自己の認識を再吟味・再構成したりすることによって、深まりのある交流を実感していった。
追究場面では、日本の復興と発展に関連した意見が多数出た。そこで、全体交流の中で聖火ランナーの秘話をVTRで提示し、「人」に焦点を当てた。さらなる問題を提起することによって、平和を願う姿にも着目し、より深い学びにつながった。
ポイント4 自分の学びを意識させる「自己評価の場」を設定する
子どもが学びのよさを自覚し、成長を実感していくには、学級の仲間と議論した「学びの足跡」や個人で考えた「学びの足跡」を視覚化することが大切である。
今回の授業では、自ら学んだことをノートに書き込むことによって、学びのよさを実感し、新たな問題を考えるきっかけになった。
(北海道社会科教育研究会小学校研究部副部長 札幌市立大谷地東小学校 教諭 橫澤 寛)
※次回は、北海道生活科研究会 生活科編を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-11付)
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