【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№52小学校理科編②北海道小学校理科研究会(永田明宏会長)理科学習における対話的な学び
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-23付)

伝えたい52回、北理研②対話的な学び
水は動いているのかな…仲間とともに事象に働きかける

◆子ども自ら対話を求める姿を引き出す

 新学習指導要領において、育成を目指す資質・能力が明確化された。ここでは、「対話的な学び」という視点から理科の授業を見つめ直し、具体的な授業改善の方向を探る。

 理科の学びでは、子どもが自ら問題を見いだし、科学的に解決する過程が重要である。新学習指導要領では、科学的に問題を解決するために必要な3つの条件を以下のように示している。

○実証性…考えられた仮説が観察、実験などによって検討することができる。

○再現性…仮説を観察、実験などを通して実証するとき、人や時間や場所を変えて複数回行っても同一の実験条件下では、同一の結果が得られる。

○客観性…実証性や再現性という条件を満足することにより、仮説が多くの人々によって承認され、公認される。

 これらの条件を検討する手続きを重視しながら問題を解決していくことが、子どもが問題を科学的に解決する姿なのである。これらの条件の中で、客観性の検討は他者との関わりによって可能となる。問題を科学的に解決する過程には、子どもが対話的な学びに向かう場面がある。そして、教師が一方的に対話の場を設定するのではなく、子どもが自ら対話を求める姿を引き出すことがポイントである。

◎対話的な学びを引き出す手立て

 では、子どもが自ら他者との関わりを求めていく姿と、それを引き出す手立てとはどのようなものだろう。第4学年「もののあたたまり方」の学習を例に考える。

 水の温まり方を予想し、実際に温め、温まり方を考える場面である。ここでは、水が上から温まるのは、温まった水が上に移動するのではないかと、温度の変化と水の動きとを関係付けて語る子どもの姿を引き出したい。そのような姿を引き出すためには、子どもの対話を軸とした次の二つの手立てが有効である。

ポイント1 観察や実験の方法の違いが対話のきっかけになる

 一つ目の手立ては、水の温度変化を調べる実験で複数の温度計を用いることである。

 子どもは、金属の温まり方を、熱したところから全体へと広がるようにとらえている。すると水も金属と同じように部分から全体へと連続的に温度が変化していくと予想するものである。

 そこで、温度計を2本使い、同時に2か所の温度を測る活動を行う。その際、温度計を設置する場所について考えの違いが表れる。どのように温度が変化すると考えるのか。どこを測ればそれが分かるのか。熱したところからどのように熱が伝わっていくのかという考えが、温度計の場所という実験方法に表れる過程で、子どもの対話が生まれる。

 さらに、グループごとに様々な場所に温度計を設置した場合、子どもはその結果を話し合う中で、その相違点や共通点から問題を見いだす。上の方が温度の変化が早い、下の方は温度の上がり下がりを繰り返すなどの事実から、温度計の場所を揃える必要性に気付いたり、水が金属とは違う温まり方をしていることに気付いたりするのである。

ポイント2 判断の違いを意識することが対話のきっかけになる

 二つ目の手立ては、実験中に結果について検討するよう促すことである。

 子どもは水の温まり方など、因果関係が見えにくい事象に向かうと、「何とかはっきりさせたい」と繰り返し実験を行うものである。それは子どもが実験の目的を意識し、主体的に活動に向かう姿のあらわれである。そのようなときは、なぜその場所に温度計を設置したか、結果から水の温まり方はどう考えられるかなど、子どもの思考を引き出すことが大切である。

 そのとき、水が動いているなどという考えを理解できない子どもいる。同じグループで同じ結果を見ているはずなのに子どもにより判断が違うことから、対話の必要性が生まれる。理科だからこそ、グループでの実験を生かした少人数での必要感のある対話が、学びに深まりをもたらすのである。

 以上のことから、子どもが自ら対話を求める姿は、

・予想や仮説を基にして実験の方法を考える場面(実証性の検討)

・グループごとの結果を比較し、違いや共通点から問題が生まれる場面(再現性の検討)

・実験の結果を検討し、考察する場面(客観性の検討)

で表れることが分かる。

 教材の可能性を見つめ直すこと、子どもが結果から、対話を通してどのように思考するのかを想定することが今後の授業改善において大切である。

 問題解決の過程を大切にしてきた理科だからこそ、子どもにとって必要感のある「対話的な学び」が実現できるのである。

(北海道小学校理科研究会 本部研究部 副部長 札幌市立中央小学校 教諭 近藤大雅)

※次回は、「理科授業における深い学び」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-23付)

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