【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№54小学校理科編④北海道小学校理科研究会(永田明宏会長)子どもの見通しと問題解決の活動
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-28付)

伝えたい第54回、北理研④
この磁石も北に向くよ…経験が子どもの見通しとなる

◆事実認識や情意、解決方法を明らかに 

 理科における子どもの活動の中心は、言うまでもなく観察、実験である。理科の目標に示されている通り、「自然に親しみ、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行う」という一連の過程において、子どもの資質・能力が育まれる。では、子どもが「見通しをもつ」ことと問題解決の活動とはどのように関係するのだろう。

 新学習指導要領では、子どもが「見通しをもつ」こととその意義について、以下のように具体的に示された。

・「見通しをもつ」とは、見いだした問題に対して、予想や仮説をもち、それらを基にして観察、実験などの解決の方法を発想することである

・「見通しをもつ」ことにより、予想や仮説、解決するための観察、実験の方法、得られた結果について、子どもは自らの活動としての認識をもつ。つまり、観察、実験が主体的な問題解決の活動となる

・「見通しをもつ」ことで、予想や仮説と観察、実験の結果の一致、不一致が明確になる。いずれの場合も妥当性の検討という意味で価値があり、このような過程を通して、様々な視点から考えの妥当性を検討する態度が育まれる

 これらのことから、子どもの主体的な問題解決の活動及び資質・能力の育成には、子どもが「見通しをもつ」ことが必要不可欠であることが見えてくる。

◎子どもが見通しをもち、問題解決に向かうための手立て

 では、子どもが見通しをもち、主体的な問題解決の活動に向かうために必要な手立てとはどのようなものだろうか。私は、次の3点が重要であると考える。

①子どもが目的や問題へつながる事実を認識すること

②子どもに「達成したい」「明らかにしたい」といった情意があること

③解決の方法が明らかになっていること

 この3点について、第3学年「じしゃく」の学習を例に具体的に考えてみたい。

場面1 調べる対象を広げたとき

 この単元は、磁石の働きについて調べ、その性質を明らかにするとともに、磁石に引き付けられる物、引き付けられない物があるという身の回りの物の性質についてもとらえていく。

 磁石の指北性について調べる場面がある。ここでは、磁石には極があり、N極は北を指すことをとらえることに加え、子どもが自ら磁石の性質を調べるために、予想や仮説を基に見通しをもって活動する姿を引き出したい。そのために、棒磁石の極と指北性を調べた後に、小さな豆磁石、円型の磁石、U字型磁石、ドーナツ型磁石等、様々な形の磁石を扱う。

 3年生の子どもは、色、形、触り心地など、見た目や様子の印象で判断する傾向がある。そのため、棒磁石とは違う形の磁石では、性質や働きが全く同じであるとは言い切れないのである(①)。このことが、「色、形、触り心地が違っても極はあるのだろうか」という問題につながる(②)。子どもは、棒磁石の極や指北性を調べた経験を基に見通しをもち、方位磁針に近付けたり、発泡スチロールに載せて水に浮かべたりする方法を発想する(③)。そして、小さな豆磁石は一方の面だけがいつも北を向くことや、円型の磁石は、平らな面に極があり、その面が北を指す事実を発見するのである。

場面2 前の活動を使って新しいことを調べるとき

 この活動の経験は、磁石が鉄を磁化することを調べる場面でも生かされる。子どもは、磁石と一緒にしまっていた小さな虫ピンが、磁石と反発する事象と出合う。すると、その虫ピンにも極があるのではないかという考えや、虫ピンはただの鉄だから極はないという考えが表出し(①)、やがて「磁石と一緒にしまっていた虫ピンにも極はあるのだろうか」という問題につながる(②)。そこで子どもは、様々な見た目や形状の磁石を使って性質を調べた経験を生かし、虫ピンを方位磁針に近付けたり、水に浮かべたりすると解決するのではないかという見通しをもつ(③)。

 このような学びが単元を通して繰り返されることで、子どもは「調べたい」「明らかにしたい」と意欲を高め、自ら活動に向かっていく。さらに、友達とともに活動を作ることで、自らの考えを大切にしながらも、他者の考えを受け入れる態度を身に付けることができるのである。

 子どもが見通しをもち、主体的な問題解決の活動に向かう姿は、目的や問題につながる事実の認識、情意面の高まり、解決の方法の明確化の3点によって生み出される。特に、子どもが「見通しをもつ」ことは、解決の方法の明確化に対して大きな効果を発揮すると言える。単元を構成し、活動を位置付ける際には、これらの3点を念頭において検討することが大切である。 

(北海道小学校理科研究会 本部研究部 副部長 札幌市立幌北小学校 教諭 冨田雄介)

※次回は、北海道技術・家庭科教育研究会・技術科編を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-28付)

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