【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№58小学校家庭科編②北海道小学校家庭科教育連盟(石澤優子会長)新しい家庭科~実践編~主体的・対話的で深い学びに向けた授業改善
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-02-06付)

伝えたい道小家連2
課題意識をもち、生活をよりよくしようとする子どもたち

◆学びと生活つなぐ授業づくりを

 今回の改訂では、家庭科の特質に応じた物事を捉える見方・考え方を働かせながら資質・能力の育成を目指すこととしている。「生活の営みに係る見方・考え方を働かせ」とは、「家庭科が対象としている家族や家庭、衣食住、消費や環境などに係る生活事象を協力・協働、健康・快適・安全、生活文化の継承・創造、持続可能な社会の構築等の視点で捉え、生涯にわたって自立し共に生きる生活を創造できるよう、よりよい生活を営むために工夫すること」を示している。これらの趣旨を踏まえて実践した2つの授業を紹介する。

【実践例①】6年生「暑い季節を快適に」~音に関する授業~

 今回の改訂で「住まいの主な働き、季節の変化に合わせた生活の大切さや住まい方については、主として暑さ・寒さ、通風・換気、採光、及び音を取り上げること」とされており、「音」についての内容が新設された。「学校周辺や家庭での様々な音を取り上げ、音には快適な音や騒音となる不快な生活音があることを理解できるようにする」「生活を豊かにする季節の音を大切にしてきた日本の生活文化に気付くことができるようにする」「騒音については、家族や地域の人々との関わりを考えて、生活音の発生に配慮する必要があることにも気付くようにする」とあり、それらを踏まえ「暑い季節を快適に」の題材の中で「音」を扱った授業実践を行った。

 暑い季節を快適に過ごす工夫として風通しをよくするために、窓を開ける機会が増える。窓を開けると生活の中の「音」が聞こえてくる。まず、実感を伴った理解を図るため、様々な身の回りの音について、騒音計を用いて音の大きさ(dB)を測る活動に取り組む。そのためには、各学校で騒音計や騒音計アプリを使用できる環境を整える必要がある。

 音の大きさを数値化することで、「小さいのに不快に感じた」「大きいけれどあまり気にならない」などの数値と感じ方のずれから、音の種類によって感じ方が変わるという気付きを生むことができる。

 また、その音が快・不快もしくは気にならないと感じるかどうかの違いについて、各自が感じたところに、シールを貼って分布図のように表すという手だてを工夫したら、自分とは感じ方が違う人がいることが一目瞭然となった。「人によって感じ方が違う。置かれている状況によっても感じ方が変わる。だから、共に暮らす誰もが快適に過ごすため、自分の出す音に配慮したい」という思いをもつことができた。

【実践例②】5年生「わくわくミシン」~ランチマット製作と家族・家庭生活についての課題と実践に関する授業~

 家庭科の授業というと、調理や製作などの実習を行うことが主な学習と捉えられがちである。しかし、「生活の中から問題を見いだして課題を設定し、それらを解決する力や、よりよい生活の実現に向けて生活を工夫し創造しようとする態度等を育成する」など、家庭科の目標は、単に調理したり製作したりすることで達成されるわけではない。

 本連盟では、今年度、ランチマット製作を通し、ミシン縫いの基礎的な知識・技能を身に付けさせるだけでなく、「家族のことを考え、家庭生活をよりよくしたい」という思いをもち続けていくことができるような授業実践を行った。

 前の題材で、ごはんとみそ汁について学んでいる子どもたち。家庭での実践を行う際に、自分が製作したランチマットを敷いて、冬休みに「家族レストラン」を開きたいという思いをもち続け、題材の最後まで学習していくことにした。

 まず、子どもたちは「ミシン縫い」の学習をし、基本的な技能を身に付ける。既習の「手縫い」も生かして、自分だけでなく、家族が喜ぶランチマットを作る。「ミシン縫い」は速く丈夫に、直線で縫うことができる。「手縫い」は、糸の色をすぐに変えたり、曲線のデザインも縫ったりすることができる。それぞれの特徴を知った上で、身に付けた技能を生かしてオリジナルのランチマットを製作する。

 そして、実際に家庭でごはんとみそ汁を作り、家族と共に「家族レストラン」の食卓を囲み、自分がよりよい生活を創り出す喜びを実感できる学習となった。また、家族との触れ合いや団らんの温かさを味わい、衣と食を結び付け日常生活に生かすことができると知り、学習内容の一つ一つがばらばらなのではなく、つながっているということも子どもたちに実感させることができた。

 このように製作のみで終わるのではなく、題材全体を通して、家族・家庭を意識した課題意識をもたせることが大切である。

 2つの実践例のように、日常生活から疑問や気付きを生み、学んだ内容を生かし家族の一員として生活をよりよくしようと工夫改善しようとする力などを育成する授業が求められている。

(北海道小学校家庭科教育連盟 研究部長 札幌市立屯田南小学校 教頭 髙橋美保)

※今回をもって、2年間のシリーズ連載は終了します。

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