【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№51小学校理科編①北海道小学校理科研究会(永田明宏会長)理科学習における主体的な学び
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-21付)

伝えたい北理研①
電磁石の力を数値化する…事象に働きかける子どもたち

◆事象と向き合い、働きかけ続ける子に 

 新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が重視されている。では、どのような子どもの姿が主体的に学ぶ姿なのだろうか。また、それはどのような手立てで具現化することができるのだろうか。授業の実際を例に考える。

ポイント1 事象と向き合うことで実現する主体的な学び

 積極的に発表し、一生懸命にノートを書き、良い態度で話を聞く子どもがいる。授業に向かう姿勢として理想的で、実直で意欲的な素晴らしい姿である。しかし、こうした姿だけでは、「理科における主体的な学び」が成立したかどうかを判断することは難しい。目を向けるべきなのは、意欲的な姿が引き出される要因であり、子どもの内面である。どのような条件がそろった際に、考えを伝えたい、ノートに書きたい、仲間の考えを知りたい、という思いをもつのかに着目することが重要である。

 主体的に学んでいる子どもは、教師が「次はこれをやってみたら」と指示しなくても、次々と活動を続ける。子どもが主体となって事象への働きかけを繰り返し、問題を解決していくのである。第5学年「もののとけ方」の、水に食塩を溶かす場面を例にしてみる。

①水にさじ1杯の食塩を入れてかき混ぜ、全て溶かすことができた

②「次も溶けそうだ」と期待を膨らませ、2杯目を溶かす

③2杯目も全て溶けたので、同様に3杯目を溶かそうとしたが、溶け残りが出た

④「速くかき混ぜれば、溶かすことができるはずだ」と、働きかけ続ける

⑤それでも溶けないので、「食塩をつぶして細かくすれば」「もっと時間が経てば」などと新たな見通しをもち、働きかけ続ける

 このように子どもが働きかけ続ける姿は、主体的に理科を学ぶ姿ととらえることができる。その際、子どもが向き合っているのは、教科書でも教師でもなく、目の前の事象である。「次もできそうだ」と期待を膨らませ、「こうすれば」と見通しをもちながら、働きかけを連続させる主体的な学びの成立には、事象と向き合うことが不可欠なのである。

ポイント2 主体的な学びを生む3つの条件

 働きかけの連続を生むために、注目すべき条件は3つあると考える。

 1つ目は、「次もできそうだ」「もっとできそうだ」という期待感である。この心情が自ら働きかけようとする原動力となる。

 2つ目は、「こうすれば、こうなる」という見通しである。子どもは経験を基に見通しをもち、事象へ働きかける。見通しと同様の結果が得られると、期待感を膨らませ、続けて次の働きかけを行う。その一方で、見通しと異なる結果に直面すると、見通しを変えて働きかけを続ける。

 3つ目は、子どもが発想した工夫を実現できる、操作性の高い教材を扱うことである。

 では、第5学年「電流が生み出す力」の学習で、コイルの巻数を増やす場面を例に考えたい。この場面は、「巻数を増やせば、どのくらい磁力が強くなるのか調べよう」と課題を提示する実践が多いが、これだけでは働きかけが連続する学びにはなりにくい。巻数を増やして磁力を調べる、という作業的な働きかけを繰り返す活動になり、「次もできそうだ」「こうすればこうなるはずだ」という期待感や見通しが伴わないのである。

 そこで、次のような活動を構成する。

 コイルの巻数を一定にしたまま電流を5Aまで大きくすることで、ばねばかりを100g引くことができる力(以下、「100gの磁力」)を生み出せることが明らかになったとする。電流の大きさと磁力との関係をとらえた子どもに「巻数を増やせば、電流が小さくても、100gの磁力に届かせられるのだろうか」と問い、最大磁力を目指す活動を引き出すのである。子どもは「巻数を10回増やしてみたら磁力が10g強くなった」などの気付きを基に、「4Aならば巻数を20回増やせば100gの磁力にできる」などと巻き数と磁力との関係に見通しをもちながら実験を進める。一方、「1Aまで小さくしても、100gの磁力にするよう挑戦する」という部分では、考えが分かれる。それまでの経験では、1Aの磁力はわずか5g程度だったため、「いくら巻数を増やしても、20倍も増えるとは考えにくい」と考える子が出てくるからである。

 このような「1Aでも…」という問題意識の高まりは、解決に向けての期待感をさらに膨らませ、活動を活性化する。そして、「3Aでは80回巻きで、100gの磁力にできた。2Aでは100回巻きにすればできそうだ」「1Aでもさらに巻き数を増やせば100gの磁力にできそうだ」と、次々と見通しをもちながら期待感を膨らませ、働きかけを連続させるのである。

 また、こうした活動は操作性の高い教材を土台として成り立つ。電流を調整できる電源装置、子どもにとって整えて巻きやすい太いエナメル線、そして、磁力の測定を効率的に行えるばねばかりが、働きかけ続ける子どもを支えるのである。

 このように、目の前の事象と向き合い、働きかけ続ける姿こそ、理科における主体的な学びの具体像である。

(北海道小学校理科研究会 本部研究副部長 札幌市立桑園小学校 教諭 幡宮嗣朗)

※次回は、「理科学習における対話的な学び」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-21付)

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