【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№49生活科編①北海道生活科研究会(山本豊会長)生活科における「つながり」を意識したカリキュラム編成 
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-16付)

伝えたい49
探検先の幼稚園で園児や先生に質問をして交流を楽しむ子どもたち

◆〝ときめく出合い〟から校種間連携へ

◎幼保小の連携を図るために

 本研究会では、視点を三つ設定している。一つ目の視点である「ときめく出合い」を柱にし、幼保小の校種間連携づくりの在り方について提案したい。

 まず、1年生の年間計画をどのように構成していくとよいかを本校の具体例を挙げながら紹介する。

ポイント1 行事のタイミングで想起させ、相手意識を高める

 本校では、二学期に学習発表会が実施される。今年度は近隣の幼稚園と保育園、合わせて三園の園児が来校し、主に低学年の発表を参観した。幼稚園・保育園児には、小学校のイメージを膨らませるという大きな意義がある。と同時に、1年生にとっては、まさに2年生に向かって力を発揮するきっかけとしたいというねらいがあり、この活動にはそれぞれのねらいをしっかりと位置付けるように設定している。

 新1年生一日入学を意識させ、子どもたちの活動をどのように構成していくかを考えていくことになる。ここで、学習発表会の出会いを想起させることで、どんなことを園児と一緒にすると、小学校に対して楽しみな気持ちが膨らむのかを具体化していくことになる。学習発表会での出合いを意味あるものにするために、このタイミングで想起させたい。

 ここでねらいたいのは「相手意識」である。一年間の学びの集大成として、一日入学を位置付けることで、その後の2年生の活動へとつなげていきたい。一日入学で得た手応えと、もっと頑張りたいという次の活動への目標が明確になることで、新たな出合いを楽しみにする子どもの姿を見出すことができる。

 新年度の入学式。本校では、式の途中に2年生による「歓迎の会」が設定されている。そこでの新1年生の表情こそが、新たな出合いによって生み出された自信に満ち溢れた姿である。新年度にこのようなスタートの場を設けることで、2年生という新しい学年の出合いを素敵なものに演出したい。

 続いて、2年生の年間計画を基に本校の活動を紹介したい。

ポイント2 児童と園児のやり取りを教師が価値付ける

 2年生で行う活動の一つに、まちたんけんがある。本校では、近くにある商店街、公共施設、事業所などを探検先に設定している。その中に、幼稚園を探検先として設定した。

 一回目の探検では、自分たちの地域の様子をとらえるために、学級ごとに行う。看板や、窓越しに見えるお店の様子、漂ってくる香りなど、五感を働かせながら地域の様子を見取ってくる。見付けたこと、もう少し知りたいことなどに分けて二回目の探検へとつなげていく。二回目の探検は、目的別にグループ編成をして探検を行った。生花店、眼鏡店などの他に、幼稚園も探検先に設定した。

 今回、2年生にとっては初の探検となった。事前に質問事項を考え、園児や先生に自分が考えたり、グループで相談したりしてきた質問に答えてもらうことが最大の目的であった。リハーサルはしたものの、なかなか声をかけられない子どもたち。幼稚園の先生方に促されて、園児や先生に質問することができた。児童の質問する姿に声をかける姿を見て、小学校二年間での成長を感じることができた。

 今までであれば、小学校側の視点に立って、子どもの成長を見取るだけだったが、今回は、園児にも目を向けてみた。そうすることで、様々な取組から園児が小学校に向けて、その素地となる活動や体験を積み重ねていた。

 例えば、年少の園児が自分の好きなクジラについて、大勢の前でとうとうと語る姿を目にした。その姿から、小学校で身に付けたい表現力に通じるものを感じた。そのことから、「幼稚園でも小学校でも同じところがあるんだね」と、私が子どもたちにその価値付けをしたところ、幼稚園の先生から、「まさに幼稚園で大事していることを伝えていただき、嬉しかった」との手紙をいただいた。

ポイント3 単元同士をつなげたカリキュラムを編成する

 こうしてみると、各単元を構成し、各単元同士をつなげていくことは、本研究会で提案している視点一、ときめく出合いがまさに、連続してつながっていると言える。

 その単元だけではなく、一年間を通して、生活科を学ぶ二年間を見通して、どのような出合いを生むと良いのかを考え、それを二年間の子どもたちの学びにどう位置付けていくかを具現化することが、つまり、ときめく出合いを意識したカリキュラム編成と言える。

 今後も、つながりを意識し、お互いにとって価値ある学びを創造していくことを大切にしたカリキュラムを更新し続けていく必要性を感じる。

 そうすることで、出合いの場は設定されるのではなく、子どもたち自身でときめく出合いを求めていく姿を目指していきたい。

(北海道生活科研究会 研究部長 札幌市立手稲中央小学校 教諭 寺田誠治)

※次回は、生活科編②「生活科の原点に立ち戻った教師のかかわるポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-16付)

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