【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】№50生活科編②北海道生活科研究会(山本豊会長)生活科の原点に立ち戻った教師のかかわるポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-18付)

伝えたい!第50回
活動のねらいを明確にもち、夢中になって観察する子どもたち

◆一人ひとりの成長の可視化を図る 

 生活科が誕生して30年余り。本研究会も生活科の黎明期から研究を重ねてきた。ここでは、新学習指導要領の改正点も意識しながら、もう一度生活科の原点に立ち戻って教師のかかわるポイントを示していきたい。

ポイント1 教材作りと教師のかかわり

 生活科は教科書のある教科であるが、教科書をそのまま教える教科ではない。子どもたちが生活している地域や身近な素材を教材化し、単元を構成し取り組んでいく教科である。

 また、生活科の教材はその目標に沿っていれば目の前の子どもたちに合わせ、単元の内容を工夫することができるのが特徴である。

 例えば、2年生の「まち探検」がどの学校でも同じような内容でできるわけではない。商店が多いところもあれば、住宅が多いところもある。同じ2年生でも、周囲の環境や子どもの経験・実態によって活動構成が変わってくる。教科書や基底編(教育課程編成の手引)に紹介されている活動構成のままではなく子どもたちの特性を生かしながら活動をコーディネートしていくことが必要とされている。

 本会では、これまで教材化、単元構成を進める際に「地域性を生かした素材の発掘」「子どもの思いを生かし広げる学習活動材化」「連続性のある単元構成」「必然性のある活動構成」「様々な対象の良さに気づき、考えを深められる単元構成の工夫」「子ども自身が見通しをもって活動に取り組める学習活動材・単元構成」をポイントとしてとらえ授業改善に取り組んできた。

 地域の教材化にはまず、教師自身が地域を知ることが大切である。昨年度の活動の記録をもとにしたり、子どもたちと一緒に歩いてみたりということが多いと思うが、より大切なのは事前に子どもたちの目線に立って歩き、教材化できるか判断しておくことである。

 例えば、夏休みなどを利用し、校区内を歩いて様々な(いろいろな)素材を見つけたり、入学時の子どもたちをコース別に下校させる際に、(少し)帰りに(遠回りをしながら)地域の様子を見て公園や店、住宅の様子など地域の素材を集めたりすることができる。機会を見つけて、実際に自分の足で歩き、子どもの目線に立つことで、それまで見えなかった子どもたちの日常の景色が見えるようになる。

 本会では、「まち探検」の授業構築を何度か行っている。その際、授業者によって少しずつ方法は違うが、事前に何度も地域を歩き、価値ある場所を発見している。さらに、これはと思った施設を訪問し授業の意図を伝え、協力を仰ぐことで子どもたちの活動を深化させることができた。

 少し大変に思えるかもしれないが、生活科を進める上では、こうした教師のかかわりを大事にしていきたい。このような教師の準備が子どもたちの活動を生き生きさせるように思う。

ポイント2 自覚的な学習と成長の可視化

 さらに、本会では「子ども自身が見通しをもって活動に取り組める」ことを大切にしてきた。自分の問いや思いから明確な目標をもち、人に与えられるのではなく、自らの意志で解決していくこと、自らの経験や考えを活動に結び付けていく学習を「自覚的学習」と押さえ、研究を進めてきた。「自覚的学習」は「主体的・対話的で深い学び」につながるものと考える。

 子どもが「自覚的学習」を行うためにもやはり教師のかかわりが大切である。私たちは、よく漠然と「〇〇について書いてごらん」「分かったことを書こう」と子どもたちに投げかけていないだろうか。具体性のない投げかけは子どもたちに混乱を招く。活動に具体性や明確な視点を与えることで子どもたちは何をすべきか理解し活動が焦点化していく。

 例えば、子どもたちに分かりやすく「見たこと、聞いたこと、触ったこと、感じたことを見つけてこよう」と投げかけ、五感を表すカードを使い「視覚化」していくとよい。活動のねらいが明確になることで、子どもたちはより深い気づきに近づくことができる。

 また、振り返りカードなどをもとに、子ども自身が活動を振り返ることを大切にすることで、教師や友達から価値づけてもらい自分の成長を確かめ、気づくこと、「成長の可視化」ができる。ユニバーサルデザインとしての「可視化」だけでなく、一人ひとりの「成長の可視化」を行うことが子ども自身の達成感や次への意欲を生むことになる。

 現在本会では、こうした個の高まりを集団につなげ、学ぶことの重要性を検証している。

 教師のかかわりがどのように個々の意欲を高め、学んできたことを集団の中でより深い学びへと進化させるための交流を生み出せるか、研究を進めているところである。

(北海道生活科研究会 事務局長 札幌市立前田北小学校 教頭 長堀裕信)

※次回は、北海道小学校理科研究会①「理科学習における主体的な学び」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-01-18付)

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