【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】No.56中学校技術・家庭科編家庭分野 北海道技術・家庭科教育研究会(岩本正美会長)新学習指導要領実施に向けた実践計画
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-02-01付)

伝えたい技術家庭科学習課程参考例
家庭科、技術・家庭科(家庭分野)の学習過程の参考例(クリックすると拡大表示されます)

◆見方・考え方働かせ他者と意見交流を

 平成29年3月に新学習指導要領が告示され、同年7月に中学校学習指導要領解説技術・家庭編(以下、解説【技術・家庭編】)も発行された。

 新たに加わる内容もあるが、中学校技術・家庭科が目指す最終的な目標は、「よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて、生活を工夫し創造する資質・能力と態度の育成」と、大きな変化はない。したがって、この目標を達成するために「何を学ぶのか」「どのように学ぶのか」「何が身についたのか」について、教育課程を軸としながら改善・充実することが求められている。

 今回は、新学習指導要領に対応しながら、各内容の目標に迫るためにどのような実践計画を立てることが可能かを紹介したい。

ポイント1 問題解決的な学習の充実

 学習過程を踏まえた改善を考えた時に、「生活の中から問題を見いだし、課題を設定し、解決方法を検討し、計画、実践、評価・改善するという一連の学習過程」を重視することが求められる。

 すなわち、問題解決的な学習の充実である。

 中学校技術・家庭科における問題解決的な学習は以下の通りである。

◎生徒自らが問題を見いだして適切な課題を設定し,学習した知識及び技能を活用し主体的・意欲的に課題解決に取り組み,解決のための方策を探るなどの学習(解説【技術・家庭編】より抜粋)

 これまでも本教科では特に力を入れて実践を重ねてきているが、より一層の充実を図るとするならば、次の二点が考えられる。

①生徒が自ら課題を見いだす

 題材や本時の導入部分で、生徒が自ら課題を見いだす促しを教師が工夫する必要がある。

 例えば、事前に題材の内容について、生徒の実態や意識を把握するためのアンケート調査などを利用することが考えられる。

②題材を通した問題解決的な学習の充実

 一時間単位の問題解決的な学習も可能だが、生徒が見いだした課題を自身でじっくり解決していくためにも、題材を通した問題解決的な学習を計画し、実践することも必要と考える。

 解説【技術・家庭編】P65にも、家庭分野における学習過程の参考例が記載されている(=図参照)。

 生徒が、題材のはじめに課題を設定し、解決を目指すために、必要な知識や技能を習得していき、それらを活用することで課題が解決するという内容である。課題解決後には、生活を工夫し創造する能力や態度が育成されるだろう。

 これまでの授業実践を整理しながら当てはめていくことで、後述する「主体的・対話的で深い学び」を実現することも可能になると考える。

ポイント2 課題の発見と解決に向けて主体的・対話的で深い学びを行う

 中学校技術・家庭科における「主体的・対話的で深い学び」を次に示す。

□「主体的な学び」…現在及び将来を見据えて,生活や社会の中から問題を見いだし課題を設定し,見通しをもって解決に取り組むとともに,学習過程を振り返って実践を評価・改善して,新たな課題に主体的に取り組む態度を育む学び

□「対話的な学び」…他者と対話したり協働したりする中で,自らの考えを明確にしたり,広げ深めたりする学び

□「深い学び」…生徒が生活や社会の中から問題を見いだして課題を設定し,その解決に向けた解決策の検討,計画,実践,評価・改善といった一連の学習活動の中で,生活の営みに係る見方・考え方や技術の見方・考え方を働かせながら課題の解決に向けて自分の考えを構想したり,表現したりして,資質・能力を獲得する学び(解説【技術・家庭編】より抜粋)

 生活の営みに係る見方・考え方を働かせ、知識や技能を生活経験等と関連付けて深く理解するとともに、日常生活の中から問題を見いだして様々な解決方法を考え、他者と意見交流し、実践を評価・改善して、新たな課題を見いだす過程を重視した学習の充実を図る。

 特に、題材計画や授業づくりで意識することは、深い学びの実現には、生活の営みに係る見方・考え方を働かせることが必要になる。

 先述した上図の内容に題材のどの部分で「主体的な学び・対話的な学び・深い学び」が色濃く実践できそうかを掲載したので参考にしていただきたい。

ポイント3 社会とのつながりを意識した振り返りの場を設定する

 授業や題材を終えた生徒が、これまでの学びが社会とどのようにつながり、いかしていくことができるのか、もしくは、いかされているのかを考えることができる振り返りの場を設定する。

 こうした振り返りを繰り返し行うことで、生徒は「何が身についたのか」を実感し、学びの価値を理解することになるのである。

 また、そこから新たな課題を発見することになることもある。そして、多面的に物事を把握することができるようになり、よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて、生活を工夫し創造する資質・能力と実践的な態度が育まれていくものと考える。

(北海道技術・家庭科教育研究会 研究部長 札幌市立札苗中学校 教諭 半澤 亮)

※次回は、北海道小学校家庭科教育連盟「新しい家庭科~新学習要領から」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2019-02-01付)

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