【新春インタビュー 4種校長会に聞く②】幼小中高大接続の視点が重要 道中学校長会会長 橋本直樹氏(関係団体 2019-01-16付)
道中学校長会会長・橋本直樹氏
―校長会としての新年の展望をお聞かせください。
新たな年を迎えて、二月に開催される副会長研修会、専門部研修会、理事研修会、三月に行われる事務局研修会をもって本年度の活動を締めくくることになります。政令指定都市への税源移譲に伴い、経費の縮減・組織の在り方等を検討し改革を進めてきたその大きな節目の年として、いよいよ会長を含む五役のうち三人が札幌市以外という新たな体制でスタートした本年度、「つなげ合い 新たな道を拓く 道中」というスローガンのもとで、まさに「オール北海道」「チーム北海道」の思いを強くしながら活動を推進してまいりました。ここまで活動を進めてこれたのは、ひとえに本会の活動を熱心に支えていただいた全道五百七十四人の会員の皆様のおかげと心より感謝を申し上げます。また、本会の活動に多大なご理解とご支援をいただきました教育関係機関、関係団体の皆様に厚くお礼を申し上げます。
さて、新年の展望ということですが、まずは移行措置期間である新学習指導要領に関してです。
本年度、「社会に開かれた教育課程」を目指し「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善や授業力の向上をベースに、教育効果を最大限に高めるべく「カリキュラム・マネジメント」の確立が、各学校において取り組まれてきたことと思います。
四月からは多くの教科で本格的な移行措置が始まり、「道徳科」については、本年度の取組の積み重ねを土台に「考え議論する道徳」がいよいよ本格実施されることとなります。
私は、この新学習指導要領を自校のもの(自校の子どもたちのもの)にしていくための重要なポイントの一つが、幼小中高大接続の視点であると捉えています。
今回の学習指導要領改訂の背景に、高大接続改革が影響していることは、周知のとおりですが、高大接続改革(高校教育改革、大学教育改革、大学入試改革の三つの一体的改革)の高校教育改革については、初等中等教育の改革としてみつめなければならない面を多くもっていると思っています。そう考えると、中学校の学びをより効果的にするためには、教科を、各校種間をまたいで連続的にみつめることが今まで以上に大切であり、小学校の学習指導要領や高校の学習指導要領にも、組織として意識的に学ぶ機会をつくっていくことが求められると考えます。
次年度を迎える前に、私たち校長は自校の現状をみつめながら、その強みと弱みをしっかりと捉え、新学習指導要領全面実施に向けてその趣旨や背景を自校の教育課程に確実に落とし込んでいく。そんなビジョンを立て直す新年でありたいと思っています。
また、これまで本会が長い間、中心課題として取り組んできた「学力の向上」「体力の向上」についても、一定の成果がみられていますが、まだまだ課題は残されています。これまで同様に、各学校での「学力・体力向上プラン」の一層の充実に努めなければならないことも忘れてはなりません。
もう一つ押さえておきたいことは、学校における働き方改革です。これについては、課題のところでふれたいと思います。
変化や改革の波の真っ只中の年となることが予想されるからこそ、私たち校長は、あらためて「オール北海道」「チーム北海道」として、これまで以上に連携して学校改革を推し進めなければなりません。本会の会員が本年度以上につながり合うことが求められる年になると感じています。
―校長会の抱える課題と対策をお願いします。
まず一点目は、「組織の在り方」についてです。
冒頭にふれたように、本年度、歴史的一歩を踏み出し新たな道を拓きはじめましたが、さらに先へと道をつなげ整備していく作業が今後も引き続き必要です。
本年度から、会長が札幌を除く副会長による互選によって決定され、事務局次長一人と会計理事も札幌以外の校長で担うことになりましたが、次年度以降も常に先を見据えながら、組織として人の入れ替わりや引き継ぎを円滑につないでいくことが必要です。
また、昨年度から、四つの部のうち研修部以外は、経営部が石狩地区、対策部が空知地区、情報部が胆振地区と札幌以外の校長で担っていただいており、原則三年の継続担当ということで、その最終年度を迎える四月からは、それ以降も視野に入れながら人の入れ替わりや業務の継承をよりスムーズに、しかもより「オール北海道」という視野に立って進めていくことも必要になります。
そのため「オール北海道で道産子を育てる」という基本姿勢のもと、各地区、各学校によって現状や課題に違いはあるでしょうが、各地区中学校長会の連合体たる「チーム道中」として、様々な思いを共有し、全会員が主体者意識をもって取り組んでいかなければならないと思っています。
また、CS化や義務教育学校の増加、各地区の組織体制の現状なども踏まえると、道小や各地区の意向も十分に汲みながら、慎重にではありますが、道小、道中の統合にかかる話題にもふれていかなければならないと思います。
経費の縮減もこれまで着実に進めてきましたが、札幌以外の役員が増えたことも踏まえ、さらに改革を進めていくことが必要です。
二点目は、「教員の働き方改革」についてです。
今月「部活動のあり方に関する方針」が策定され、、北海道アクション・プランの見直しや各市町村の行動計画の見直しなどが進んでいきます。各学校でも、部活動に関する活動方針の策定や各市町村の行動計画に基づいた取組が求められることになります。
学校における働き方改革を推進していくためには、本来担うべき教員の業務を整理し、教員の意識改革を進めるとともに、「チーム学校」の実現に向けた専門スタッフや外部人材の活用を促進するための制度や環境の整備も必要です。
北海道の広域性や都市部と郡部による様々な状況の違いもありますが、だからこそ自校の現状に当てはめ、家庭、地域、行政との連携をより細やかに進めながら、業務の明確化や適正化を図り持続可能な学校体制の構築に向け、我々校長のリーダーシップがより一層求められる年になると思っています。
また、これまでも課題とされてきた「学力・体力の向上」や「豊かな心の育成」は、今後も継続した課題になることは言うまでもありません。
これらの課題を解決していくためにも、全日本中学校長会が作成している「全日中教育ビジョン“学校からの教育改革”」をもう一度確認し直し、本会会員が同じ方向を向きながら課題解決に当たっていくべきであると強く感じています。
―新年度の重点的取組を伺います。
「社会を生き抜く力を身に付け、未来を切り拓く日本人を育てる中学校教育」を研究主題に掲げた、四ヵ年継続研究の最終年度を迎える新年度は、九月二十七日、二十八日の両日、岩見沢市で開催される第六十一回道中研究大会空知・岩見沢大会で一つの成果を示さなければなりません。私たち道中の研究交流の場として、研究大会とりわけ各分科会の充実が大きな意味をもつことに変わりはありません。
新学習指導要領を睨みながら、各地区校長会で共同研究してきた内容がしっかりと発表され、それをもとにした研究交流がまた各地区校長会へ還元されていくように進められることを強く願っています。
また、前述してきたように「道徳科」や新学習指導要領実施のための「社会に開かれた教育課程」や「カリキュラム・マネジメント」の確立、そして「教員の働き方改革」の推進については、本年度以上に重点的に取り組んでいくことが求められます。各地区校長会とのつながりを一層強めながら、ともに職能向上を図り、前進していきたいと思っています。
このような様々な課題を解決していくためにも、新年度も引き続き、道小学校長会と道公立学校教頭会とともに「北海道文教施策・予算策定に関する要望書」を道教委へ提出させていただきながら、これまで以上に道教委との良きパートナーシップが図れるように努めていきたいと思っています。
我々に課せられている教育課題はまだまだ数多くありますが、北海道総合教育大綱や新たな北海道教育推進計画も押さえながら、日々の教育実践の中で、わが国の教育が大事にしてきた「不易たるもの」を土台に、着実に改革に取り組むことが必要です。
道中学校教育の振興のために、これまで先達が積み重ねてきた成果をつなげ、保護者・地域の理解と協力を得ながら、教育関係機関・関係団体と協働し、本年度のスローガンである「つなげ合い 新たな道を拓く 道中」の思いのもと、歩みを進めたいと考えています。引き続きご理解とご支援をよろしくお願いいたします。
(はしもと・なおき)
昭和58年道教育大函館分校卒。倶知安町立倶知安中を振り出しに、積丹町立野塚小中、クアラルンプール日本人学校、岩内町立岩内第一中、余市町立余市西中に勤務。16年蘭越町立三和小教頭、18年岩内第一中教頭、21年神恵内村立神恵内中校長。仁木町立仁木中、蘭越町立蘭越中を経て、30年留寿都村立留寿都中校長。
昭和35年9月13日生まれ、58歳。小樽市出身。
(関係団体 2019-01-16付)
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