道教委全道代表高校長研で赤間局長 教科等横断的視点で 教育課程編成のポイント (道・道教委 2019-04-16付)
道教委が11日に道庁別館で開いた全道代表高校長研究協議会では、赤間幸人学校教育局長が講話した。新学習指導要領の実施に向け、学校で取り組むべきことを「カリキュラム・マネジメント」の3つの柱をもとに整理。新学習指導要領に基づく教育課程編成の実施に向け、育成を目指す資質・能力を明確化することや、教科等横断的な視点で教育課程を編成すること、教育課程の実施状況の評価・改善を図ることなどの必要性を説いた。概要はつぎのとおり。
現在、新学習指導要領の移行措置が始まるとともに、高校教育改革が進められている。
学校で取り組むべき多くのことを、できるだけシンプルな枠組みで整理して、取組を推進する校内体制を築くことが望ましいと考えている。
そうした取組を新学習指導要領に示されたカリキュラム・マネジメントの3つの柱で整理して、新学習指導要領の理念を実現する体制を考えてみる。
【教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと】
▼育成を目指す資質・能力の明確化
新学習指導要領に基づく教育課程編成の第一歩は、学校として育成を目指す資質・能力を明確化することである。
その中には、教科等横断的な視点に立った資質・能力として示されている「学習の基盤となる資質・能力」と「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」を位置付けるとともに、26年の中教審高校教育部会「審議まとめ」において、すべての生徒が高校教育を通じて身に付けるべき資質・能力「コア」として示された力などを含め、明確化しているかどうかあらためて確認していただきたいと考える。
なお、学力について、新学習指導要領において、高大接続改革で重視する学力の3要素を踏まえ、学校教育法に規定された基礎的な知識および技能、思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度に加えて、多様性・協働性の重視が示されたことに留意する必要がある。
各学校において、卒業までに、生徒がどのような資質・能力を身に付けることが必要かを、教職員の十分な議論を踏まえて明確化したことと推察するが、今後、全教職員で目指す資質・能力の育成に向けて取り組んでいくことが、新学習指導要領の理念の実現につながることであることを確認していただきたい考える。
▼教科等横断的な視点に立った教育課程の編成
高校は、特に、教科の独立性が強いと言われるが、各教科・科目等のどの単元で、教科等横断的な資質・能力を育むのかを明確にすることが求められる。
それを見える化するためには単元配列表を作成し、各教科・科目等の単元の学習活動のみならず、育成を目指す資質・能力の関連を記すことが有効である。
単元配列表を作成している学校の例をみると、総合的な探究の時間を軸に、各教科・科目との関連を示すと全体像が見やすくなる。
【教育課程の実施状況を評価し改善を図っていくこと】
▼教育課程の評価・改善を学校評価と関連付けて実施
学校においては、様々な調査結果やデータ等を活用して、教育目標の実現状況や教育課程の実施状況を検証し、改善していくことが求められる。
これまでも、各学校においては、PDCAサイクルに基づく学校経営の改善に取り組まれてきているが、今後は、目指す資質・能力が育成されているかどうかという観点も位置付けて、教育課程の評価と学校評価の関連を図ることが重要となる。
▼「高校生のための学びの基礎診断」の活用
道教委では、ことし3月に「“高校生のための学びの基礎診断”活用の基本的な考え方」を策定し、通知した。
道教委が作成する学力テストに加え、各学校が選択する認定ツール等を組み合わせて、学習・指導方法の改善に生かすこととしている。
各学校の実態に応じて、認定ツール等を選択するとともに、道教委の学力テストの経年変化等も検証し、生徒が苦手としている分野の改善が図られているかなどについて、学校として組織的に把握し、改善方策を推進することがこれまで以上に求められる。
◆高校教育改革を視野に経営
【人的・物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくこと】
▼カリキュラム・マネジメントの実現に向けた組織体制
各学校においては、組織として力を発揮することができるように、体制づくりを進めることが求められる。
カリキュラム・マネジメントを推進するためには、すべての教職員が参加することが求められ、教科等の縦割りや学年を越えて、学校全体で取り組んでいくことができるよう、学校の組織や経営の見直しを図る必要がある。
▼主体的・対話的で深い学びの実現に向けた体制づくり
授業改善は一人ひとりの教師が創造的に取り組む営みであるが、今後は、資質・能力の育成を目指す主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、学校全体で組織的に取り組むことが重要である。
道教委では、27年度から文部科学省の指定を受け、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの学習・指導方法改善のための実践研究に取り組み、現在、拠点校4校、サポート校4校、推進校6校、連携校29校を指定して、組織的な授業改善の推進に取り組んでいる。
道教委では、この取組をSCRUMと称しているが、SCRUMに取り組んできた多くの学校で、授業改善に向けた組織的な取組が進められているので、近隣校同士等での情報共有に努めていただきたいと考える。
なお、授業改善に向けては、「生徒の発達の支援」の観点から、①学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図っているか②学習活動を行う場合に生じる、障がいのある生徒などの困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を行っているか③高大接続改革やキャリア教育の視点で学校と社会の接続を目指し、卒業までに身に付けるべき資質・能力を育成しているか―の3点についても、組織的に取り組むことが重要である。
このため、校内において、授業改善を推進する組織と、生徒指導・教育相談の担当分掌、特別支援教育に関する校内委員会、キャリア教育や進路指導に関する担当分掌等とが連携できる体制づくりが求められる。
特別支援教育にかかわっては、高校で「通級」が制度化されたことにも留意が必要である。
こうした体制づくりに当たっては、関係機関などとの連携を図ることも大切である。
▼地域との協働による高校改革の推進
現在、昨年6月に策定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2018」などによって、地域との協働による高校改革が推進されている。
道教委では、昨年度から道ふるさと・みらい創生推進事業に取り組み、OPENプロジェクトの15校の研究指定校と4校の奨励校が、生徒が主体的に地域の課題を見付け、自治体や企業などと連携して設置した地域みらい連携会議と連携して、地域の課題の解決を図る実践研究に取り組んでいる。
この実践は各学校が取り組む総合的な探究の時間における、地域や社会とのかかわりを重視する取組の先進事例として参考にしていただきたい。
また、学校評議員制度や学校運営協議会制度、地域学校協働活動等を活用して、地域でどのような子どもを育てるのかといった目標、すなわち、各学校で育成を目指す資質・能力を地域や中学校と共有して、地域とともにある学校づくりを進めていくことも求められている。
これからの学校においては、一人ひとりの教員の個性を大切にしながらも、全教職員の協働による、カリキュラム・マネジメントを推進する校内体制を築き、新学習指導要領の理念の実現に向け、組織的な取組を進めていくことが求められていると考えている。
さらに、現在進められている高校教育改革を視野に入れておくことも学校のリーダーに求められる。
文科省が示した「Society5・0に向けて取り組むべき施策の方向性」や、教育再生実行会議の第11次提言中間報告における「新時代に対応した高校改革」、OECDが示した「2030年に向けた学習枠組み」などを将来、各学校にどのように取り入れていくか、校長として構想を練る時間ももっていただきたいと考える。
3月に策定した道高校教育アクションプログラムの「本道高校教育の推進方策」には、今後、道教委が推進していく施策の基本的な方向性が示されているので、各学校の本年度、来年度の実践、あるいはその先のビジョンを考える上で、十分に参考としていただきたいと考えている。
アクションプログラムには、具体的に示していないが、道立学校におけるICT環境整備を進めていく構想をもっており、今後、環境整備と教員のICTを活用した授業実践の両方を並行して進めていくことが必要となるので、道教委と学校が緊密な連携を図って、取組を推進していきたいと考えている。
本道の高校教育を取り巻く課題は山積しているが、今後とも、課題解決に取り組み、本道の高校教育の充実・発展のために、校長の皆さんとともにこの一年の仕事をさせていただきたいと考えているので、引き続き、理解と協力をお願いする。
(道・道教委 2019-04-16付)
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