31年度日高管内教育推進の重点 高・特校長会議で波岸局長説明 豊かな地域支える教育創造
(道・道教委 2019-04-24付)

管内高校特別支援学校長会議
波岸局長が3つの重点を示した

 【浦河発】日高教育局は17日、日高合同庁舎で31年度管内公立高校・特別支援学校長会議を開いた。波岸克泰局長が管内教育推進の重点について説明。テーマ「社会に開かれた教育課程を実現し、持続可能で豊かな地域社会を支える日高教育の創造」のもと、「未来社会を切り拓くための資質・能力を一人一人に確実に育む学校組織の活性化」「魅力ある学校づくりに向けた“働き方改革”の推進」「北海道の将来を支える教職員の育成」の3点を重点に設定。波岸局長は「日高の未来を子どもたちの育成を通して支えることが日高の教育に求められている」との考えを示し、管内教育の確実な前進へ向け積極的な取組を要請した。管内における教育推進の重点はつぎのとおり。

 北海道は今、急速に進行する人口減少や高齢化、道民の安全・安心を揺るがした北海道胆振東部地震、ブラックアウトの発生など、地域の存続にかかわる課題に直面している。

 また、グローバル化や高度情報化等の進展は加速度的となり、子どもたちが生きる未来社会は、AI・IoT、ロボティクスなどの最先端技術が高度化し、あらゆる産業や社会生活に取り入れられ、社会の在り方そのものが劇的に変わるSociety5・0の到来が予測されている。

 このような社会に生きる子どもたちに、どのような力を育むべきか。

 昨年、開催した管内の学力向上推進会議では、構成員である校長会、PTA、地域の方々の熟議によって、日高の子どもたちに身に付けさせたい力は「夢と志をもち、可能性に挑戦する力」であると共通理解が図られた。

 このように、子どもたちの現状、地域の実態、来るべき将来像を見据えながら、育成すべき資質・能力を具体化し、家庭・地域と共有しながら、その力を確実に育成する「社会に開かれた教育課程」を実現することが、今、学校には求められている。

 一方で、未来社会はあらかじめ用意されているものではなく、目の前の子どもたちが、我々を乗り越えて新しい価値を生み出すことによって、創り上げていくものであるという認識も重要である。

 すなわち、これまでわが国の学校教育が進めてきた既存の社会に適応する人材の育成にとどまらず、教師をはじめとする大人が子どもたちに働きかけることによって未来社会を創造するという認識が必要である。

 人口減少やJR問題等の地域課題に直面しつつも、新たな産業振興などを通して持続可能な地域社会の構築に向かっている日高、その日高の未来を子どもたちの育成を通して支えることが日高の教育に求められている。

 変化の先を読み、変化を取り込みながら、未来社会を生き抜くために必要な力を、すべての子どもたちに身に付けさせる新たな日高教育を創造することが、日高のあすを担う子どもたちの教育に携わる私たちに課せられた最大の責務である。

 こうしたことから、本年度のテーマを「社会に開かれた教育課程を実現し、持続可能で豊かな地域社会を支える日高教育の創造」とした。

 これは教育による地域創生であり、古(いにしえ)より地域発展の礎を教育に求めてきた先人の魂を、今日の時代に応じてあらためて受け継ぎ発展させるという時代への挑戦である。

 管内の教育に携わるすべての人たちが日高の未来を創り上げることに心を躍らせながら、管内教育を確実に前進させることを期待する。

【重点1 未来社会を切り拓くための資質・能力を一人一人に確実に育む学校組織の活性化】

 本年度の管内教育推進の重点の1つ目は、「未来社会を切り拓くための資質・能力を一人一人に確実に育む学校組織の活性化」である。

 新学習指導要領が目指す「未来社会を切り拓くための資質・能力を一人一人に確実に育む」という理念を実現するためには、教育課程全体を通した取組を通じて、教科横断的な視点から教育活動の改善を図っていくことや、学校全体としての取組を通じて、教科等や学年を超えた組織運営の改善を行っていくことが求められている。

 しかし、これまでの学校教育は、教師一人ひとりが多様で幅広い業務をそれぞれで自己完結的に職務として取り組むという個業型の組織で成り立ってきた。

 このことは、教職員一人ひとりがやりがいをもって、幅広く多面的な教育活動が展開できる一方で、ホームルーム担任や教科担任、部活動の顧問など、自分が担当する分掌を処理することに追われ、学校全体としての課題を教職員が共有して解決するという土壌が培われない要因の1つともなっている。

 今日、高校教育に求められている社会で生きていくために必要な力を共通して身に付ける「共通性の確保」と、一人ひとりの進路に応じた多様な可能性を伸ばす「多様性への対応」の2つを両立させるためには、校長が強いリーダーシップを発揮して学校組織マネジメントを行い、教職員が一丸となって課題解決に取り組む体制を構築する必要がある。

 そのため、つぎの3点に意を用いていただきたい。

 1つ目は、「年度の重点教育目標、育成を目指す資質・能力の一層の具体化と教育課程への明確な位置付け」である。

 現在、国においては、Society5・0の到来を見据え、文理両方を学ぶ高大接続改革が進められている。

 また、特別支援学校においては、多様な障がいの種類や状態等に応じた指導や支援がより強く求められている。

 移行期間1年目となる本年度においては、国の動向に注視するとともに、子どもの実態を分析・検討した上で、学校教育目標や育成を目指す資質・能力を、一層具体化し、いつ、どの教科、領域において、どのように育むのかを明確にした教育課程を編成・実施するようお願いする。

 2つ目は「“北海道教育推進計画”を踏まえたカリキュラム・マネジメントの強化」である。

 道教委では、次代を担う本道の子どもたちが社会の変化に主体的に向き合いながら、自らの可能性を発揮し、未来を切り拓いていく力を身に付けることができるよう、30年3月に道教育推進計画を策定し、本計画に掲げる高校教育に関する施策を着実に推進するため、31年3月に北海道高校教育アクションプログラムを作成した。

 また、特別支援教育に関しては、30年3月の道教育推進計画を踏まえ、新たに特別支援教育に関する基本方針を策定した。

 これらは、いずれも計画期間を30年度から5年間としており、この期間内に計画的に高校教育、特別支援教育の充実を図っていく必要がある。

 各学校においては、これらの計画をベースとして、自校の教育課程を見直し、子どもの学びの姿を通して、不断に検証・改善を行うカリキュラム・マネジメントを強化していただくようお願いする。

 3つ目は、「主任等の役割の明確化による校内組織の運営機能の強化」である。

 組織の活性化を図るためには、教務主任をはじめ主任等の役割を明確にし、各分掌の機能を強化することが不可欠である。

 とりわけ、若年層が多い管内においては、柔軟な発想と意欲を生かしつつ、学校運営に関する意識付けを行い、マネジメントに関する力を伸ばしていく機会を充実していく必要がある。

 今後は、それぞれの学校において、主任等の自覚をより一層促し、管理職と各教職員のパイプ役となって意思疎通に寄与するよう、役割を明確にしていただきたい。

【重点2 魅力ある学校づくりに向けた「働き方改革」の推進】

 重点の2つ目は、「魅力ある学校づくりに向けた“働き方改革”の推進」である。

 これまでの学校教育は、教師の高い意欲と使命感によって支えられてきたが、「子どものためなら長時間勤務もよしとする」という働き方の中で教師が疲弊していくのであれば、それは子どものためにはならないものである。

 教師のこれまでの働き方を見直し、日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性や創造性を高め、子どもたちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにすることが求められている。

 そのためには、「昨年まで行ってきたからやらないといけない」「地域から求められているからやめられない」という発想から抜け出し、「この教育活動は、自校が目指す教育目標の達成や育もうとしている資質・能力の育成のために、効果的なものとなっているのか」という視点から見直しを図ることが必要である。

 学校がとかく陥りがちな前例踏襲から脱却し、時間という限られた資源を最も効果的に使って、子どもたち一人ひとりに確かな学力、豊かな心、健やかな体を確実に育成するため、教師が自らの専門性を高め、より分かりやすい授業を展開するなど、教育活動を充実すること。

 このように教師が授業を磨いていくことに全力投球していくことができるような、教師にとって魅力的な学校を実現し、全道のリーディングケースとなり得る働き方改革を進めていただきたいと考えている。

 そこで、つぎの3点について意を用いていただきたい。

 1つ目は、「教職員の実感を伴った“働き方改革”の推進」である。

 幸いにも管内においては、ICTを活用して生徒の家庭学習の取組状況の把握を行ったり、課題を出したりするなど、教職員の創意を生かした新たな指導方法に挑戦し、学校改革につなげている優れた事例がある。

 新たなことに挑戦するときには苦労があり、時間を要するかもしれないが、指導の効果が子どもの姿に表れてくることで、それが教職員間に定着し、より短い勤務時間で高い成果を上げられるようになってくると考えている。

 皆さんには、在校時間が短くなったという実感だけではなく、自らの指導力が高まったと教師が実感できることを目指した働き方改革を進めていただくようお願いする。

 2つ目は、「校務分掌の見直しなどによる連携・協働体制の強化」である。

 学校が組織として効果的に運営されるためには、校長を中心とした管理職が経営方針やグランドデザインを具体的かつ明確に示し、教職員の意識や取組の方向性の共有を図るなど、校長がリーダーシップをもって学校組織マネジメントを行っていくことが不可欠である。

 その上で、教職員間で密な情報交換を行い、対話や議論がしやすい風通しのよい組織づくりを進める必要がある。

 皆さんには、校務分掌を見直し、例えば、キャリア・ガイダンス部や総合教育推進部など、校務分掌の再編を進め成果を上げている道内の事例を参考とし、各分掌の機能を高め、連携・協働体制を充実していくようお願いする。

 また、働き方改革の推進に当たっては、29年3月の学校教育法の一部改正によって、事務職員の職務規定がそれまでの「事務に従事する」から「事務をつかさどる」と改定された趣旨を教職員に丁寧に説明し、事務職員が校務運営に積極的に参画する体制を構築していただくようお願いする。

 3つ目は、「学校間ネットワークの構築」である。

 少子化の進行に伴い、管内の多くの小・中学校は、学年1学級または複式学級の規模になっている。

 高校においても、間口数との関係で教職員数が限られ、担当者が1人のみの教科のある学校が多い中、教員が互いの授業を参観し、指導方法の検討を行うことが難しくなっている。

 また、ホームルーム担任が各学年1人のみの学校においては、学年の生徒の実情についてや指導方法などについての悩みを相談する相手が限られてしまい、相談された教員も自分の担当業務に追われている状況がある。

 このような状況を打破し、授業の質の向上を図るためには、学校間のネットワークを構築し、同じ学年・教科を担当している教員同士が、同一単元等の指導方法について相談や協議ができる体制を築いていく必要があると考えている。

 道教委では、北海道高校「教科等の本質的な学びを踏まえたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法改善のための実践研究(通称SCRUM)」において、遠隔システムを活用し、指定校における主体的・対話的で深い学びの視点からの指導方法の確立などに向け、指定校間の連携やネットワークの構築に努めている。

 こうした研修体制を活用するなど、管内や圏域内で教員が情報交換できるネットワークづくりも検討していく必要があると考える。

 皆さんには、こうした取組について教職員の意見やアイデアを聞きつつ、学校間のネットワークの構築について実践研究を進めていただくようお願いする。

【重点3 北海道の将来を支える教職員の育成】

 今後、教職員の大量退職期を迎え、初任者が増加する傾向は続くと見込まれており、教職員の年齢構成のバランスの不均衡が一層加速する懸念がある。

 このピンチをチャンスに変え、若手の教職員が多いということは、新しい取組に積極的にチャレンジする職員集団として鍛えられる好機であるととらえたい。

 若手が新しい時代の新しい教育の創造に果敢に挑戦し、この日高管内で勤務した経験を、本道の教育課題などに対応する専門性・実践的指導力を身に付けた教職員の育成につなげたいと考えている。

 そこで、つぎの3点について意を用いていただきたい。

 1つ目は、「時代の変化を先読みし、常に授業改善に取り組む教員の育成」である。

 近い将来、我々の身の回りに存在する様々なセンサーや活動履歴などから得られるビックデータが、AIによって解析され、その結果がインターネットに接続されることによって、様々な分野で作業の自動化などといった革新的な変化が起こると予想されている。

 この変化は、教育界にも及んできており、例えば、つぎの教科用図書にはQRコードが掲載されることや、IT分野を生かしたEdTech(エドテック)の開発など、子ども一人ひとりの能力や適性に応じて個別最適化された学びに関する研究が進められており、黒板とチョーク、ノートとプリントだけを使い、教師が一方的に教える指導方法や目的が不明確な話し合い活動、グループ活動は、淘汰される時代に変わろうとしている。

 こうした時代の変化の中で、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を進め、一人残らずすべての子どもに基礎的読解力、数学的思考などの基盤的な学力や情報活用能力を身に付けさせることが求められている。

 管内においては、こうした時代背景を的確にとらえ、ICTを活用して、インターネットで外国の高校生と意見交換や情報交流を行う授業や、タブレット端末を活用して体育実技の様子を動画撮影し、技術の向上に向け生徒同士がディスカッションを行いながら、技能の習得に取り組ませている授業など、新しい発想で指導方法の改善に取り組み、成果を上げている教師がいる。

 皆さんには、教育の世界にもEdTech等によって指導の質的転換が迫っている状況を教職員と共有し、一人ひとりの教職員が時代の変化の先を読み、変化を取り込んで新たな指導にチャレンジすることができる環境づくりに努めていただくようお願いする。

 2つ目は、「組織に変化を生み出すミドルリーダーの育成」である。

 道内の教職員の大量退職期を迎えている今日、次世代のリーダー育成が全道的に大きな課題となっている。管理職候補の少ない要因は様々あるが、その一つとして組織を動かす面白さや醍醐味を経験していないことも上げられるのではないかと考えている。

 校長の方針のもと、個々の教職員のキャリアステージに応じて、自らの役割を自覚させながら、組織に働きかけ変化を生み出す経験を積ませることが組織の活性化にもつながる。

 皆さんには「北海道における教員育成指標を踏まえつつ、人事評価などの機会をとらえて、個々の教職員に対して、組織の中におけるミドルリーダーの役割について自覚を促し、実際にその役割を果たす場面や機会を設定するなど、組織に変化を生み出すことができるミドルリーダーの育成に努めていただくようお願いする。

 3つ目は、「常に変化し続ける人材の育成について」である。

 社会が大きく変化していく中、持続可能な学校としていくためには、学校もまた変化することが求められている。

 例えば「職員だけ」の学校経営から、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、部活動指導員などと連携した「チーム学校」へ。

 「教師だけ」が指導に携わる学校から、教師とは異なる知見をもつ各種団体や様々な地域住民等とも連携・協働し、「開かれた教育課程」を実現する学校へ。

 「紙だけ」で指導や運営が行われる学校から、ICTなどの先端技術も活用した学校へ。

 「同一内容だけ」を教える教育から「一人一人の特性」に応じた教育へ。

 こうした変化に対応する学校を創るためには、常に学び変化し続ける人材が必要である。

 その変化に戸惑い動揺するのはなく、未来や将来の姿に希望と夢を抱き、変化に心躍らせながら教壇に立つ教師には、子どもたちにも同様な心の変化を自ずと起こす力があると信じる。

 皆さんには、自らが変化し続ける存在として学び続け、高みを目指していただくとともに、そのような姿を教職員に対して日常的に示すことで、変化し続ける教職員を育成していただくようお願いする。

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1日高管内教育推進の重点(高校)
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