公立高・特校長会議の道教委所管事項説明③ 主体的に各種研修参加を メンター方式等で充実図る(道・道教委 2019-05-15付)
赤間幸人局長
◆学校教育局
【公立学校全般にかかる事項】
▼教職員の資質・能力の向上
道教委では、平成30年度の教員研修の効果にかかわる評価・検証を通じて課題等を明らかにし、本年3月に31年度北海道教職員研修計画として改定した。
本研修計画では、本年度の重点的な取組のほか、新たに策定した管理職版育成指標に基づいて管理職研修を体系化し、各キャリアステージにおける研修内容の系統性が分かるように整理している。
校長においては、教職員が主体的、積極的に各種研修に参加するよう指導していただくほか、道教委の研修との関連を図りながら校内研修を実施するとともに、特に若手教員が多い学校においては、先輩教員から若手教員へ知識・技能を伝承するメンター方式による研修を推進するなど、研修の充実を図っていただきたい。
▼教育の情報化の推進
グローバル化や急速な情報化が進む中、情報活用能力の育成を図るためには、ICTを適切に活用した学習活動の充実を図ることが必要である。
道教委では、本道における教育の情報化の目指す姿として、29年12月に北海道における教育の情報化推進指針を策定し、昨年5月には、道内の先進的な事例をまとめた『教育の情報化に関する実践事例集』を発行した。
各学校においては、指針に基づき、教科等横断的な視点で、情報活用能力を育成するとともに、本実践事例集を活用するなどして、ICTを活用した指導力の向上を図る校内研修に取り組んでいただきたい。
また、特別な支援を必要とする生徒の学習上などの困難さを軽減させる視点から、必要に応じてICT機器を積極的に活用していただきたい。
▼北海道の部活動の在り方に関する方針等
本年1月に策定した部活動の在り方に関する方針では、各学校においても学校の部活動にかかる活動方針を策定することや、校内に部活動にかかる相談・要望の窓口を設置すること、学校の活動方針および相談・要望窓口の担当、連絡先等を学校のホームページへ掲載するなどして公表することを記載している。未実施の場合には、速やかに策定・設置していただきたい。
また、適切な休養日および活動時間についても定めている。成長期にある生徒が、学校内外の活動や食事、休養、睡眠などの生活時間のバランスのとれた生活を送ることができるよう、休養日や活動時間の設定に当たって、方針を順守していただきたい。
なお、方針に定める休養日および活動時間などの実効性を確保する観点から、本年度も、前年度に引き続き部活動の実態等に関する調査を実施する。協力をお願いする。
▼生徒指導および学校安全
児童虐待への対応について。
各学校においては、31年2月8日に閣議決定された「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策の更なる徹底・強化について」に示された、①要保護児童等の情報元に関する情報の取扱いや保護者からの要求への対応②休業日を除き、引き続き7日以上欠席した場合の速やかな市町村または児童相談所への情報提供③児童虐待に関する研修のさらなる充実―などの取組をあらためて徹底するようお願いする。
いじめ問題への対応について。
2月に道のいじめ防止基本方針に示された基本的な方向や具体的な取組を着実に実行するため、令和4年度までの期間に、道教委が重点的に取り組むべき内容をまとめた北海道いじめの防止等に向けた取組プランを策定した。
各学校においては、本プランに理解をいただき、いじめ防止等に向けた取組を計画的に実施し、いじめを生まない環境の醸成やいじめの問題への適切な対応に努めるようお願いする。
不登校児童生徒への支援について。
各学校においては、引き続き、相談窓口の周知徹底を図るとともに、
児童生徒理解・支援シートなどを活用し、すべての児童生徒が専門的機関等で相談・指導を受けることができるよう取組を進めるようお願いする。
自殺予防教育について。
前年度、本道の高校において自殺が疑われる事案が発生しているが、全国的に青少年の自殺防止が大きな課題となっている。すべての学校において、生徒の小さなサインを見逃さない見守り体制や相談しやすい体制づくりをより一層進めるとともに、自殺予防教育プログラム等を活用した、SOSの出し方を具体的に指導する教育の実践や、様々なストレスに対処するスキルを育む取組を進めるようお願いする。
安全教育の充実について。
昨年9月6日に発生した北海道胆振東部地震においては、高校生一人が犠牲になるなど、児童生徒に被害が及んだことをはじめ、東胆振地域を中心に学校施設が正常に使用できなくなるなどの被害を受け、さらには大規模停電の発生による影響で、全道全域においてライフラインが寸断され学校教育活動に支障を来すなど、これまで経験したことのない困難な事態に直面した。
各学校においては、地震発生時や地震後の様々な場面において、児童生徒の安否確認や通学方法の確認、教育環境の整備、関係機関との調整など、適切に対応していただいた。
各学校においては、今回の地震等の検証や改善点を踏まえ、新年度から新たな安全計画等を実施していただくため、危機管理マニュアル作成の手引(平成30年2月)、緊急対応業務内容チェックリスト(31年2月)、学校における危機管理の手引改訂3版(31年2月)等を参考にして、前年度末を目途に各学校が作成している危機管理マニュアル等の点検や見直しを進めるようお願いした。
各学校においては、すべての教職員が危機管理マニュアル等を十分に理解し、迅速かつ適切な対応ができるよう、学校安全に関する取組の一層の充実を図るようお願いする。
▼学校体育および健康教育の充実
事故防止について。
学校体育活動においては、活動場所や設備、用具などの安全点検を適切に実施するとともに、生徒の体力や技能等を踏まえた活動計画の作成が必要である。
各学校においては、31年4月9日付通知に添付しているチェックリストを活用するなど、体育活動全般について検証・改善に取り組むようお願いする。
昨年は、熱中症によって救急搬送される事故が高校・特別支援学校で22件発生した。
これからの季節、気温や湿度等の確認を行うなど、事故の防止に向けて万全を期していただきたい。
また、アレルギーを有する児童生徒が学校にエピペンを持参しているケースが増えていることから、緊急時に教職員が誰でも対応できるようエピペンを持参している児童生徒の情報を共有するとともに、AEDを含めた心肺蘇生法など応急手当の研修や、体制の整備に努めるようお願いする。
オリンピック・パラリンピック教育について。
オリンピック・パラリンピック教育は、スポーツの価値への理解を深めるとともに、規範意識のかん養、異文化や共生社会についての理解など、多面的な教育的価値をもつものである。
各学校においては、31年2月25日付通知に添付している実践事例を参考に、既存の教育活動に位置付け・価値付けするなどして取組の充実を図るようお願いする。
また、体育の体育理論領域で、オリンピック・ムーブメント等について扱うこととなっている。確実に実施していただきたい。
学校保健委員会の活性化について。
近年、脳脊髄液減少症などの新たな健康課題や大規模な自然災害や事件・事故で被害に遭った子どもの心のケア等の対応が生じてきており、これらに適切に対応するため、学校医などの学校三師を委員に含め、専門的見地から指導助言を受けるとともに、委員会を年に複数回開催し、生徒の健康課題の解決に向けた取組の改善・充実を図るようお願いする。
食育の推進と事故防止について。
栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習慣の乱れ等に起因する健康課題に適切に対応するため、児童生徒が食に関する知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう、学校給食の食事内容の充実を図り、食育の推進に努めていただきたい。
また、前年度は道内の学校で食中毒が発生したほか、異物混入、食物アレルギーなどの学校給食を起因とする事故があとを絶たない状況があった。
あらためて、国の学校給食衛生管理基準および道教委が作成した学校給食衛生管理マニュアル、食物アレルギー対応の進め方、特別支援学校のための再調理のガイドラインなどに基づき、事故の未然防止に努めていただくとともに、実践的な研修の実施や事故発生時の連絡体制を全教職員で確認するなど、安全で安心な学校給食の提供に万全を期すようお願いする。
【特別支援学校にかかる事項】
▼特別支援学校学習指導要領等の改訂
特別支援学校幼稚部教育要領、小・中学部の学習指導要領については、すでに29年4月に告示され、幼稚部については昨年度から全面実施されている。
また、高等部の学習指導要領については、ことし2月に告示され、その中で、総合的な探求の時間について、本年度から学年進行で実施することなど、高校と同様の対応が求められている。
校長の皆さんには、リーダーシップを発揮し、新しい学習指導要領の趣旨や内容についてあらためて教職員に周知いただき、それぞれの学校において、カリキュラム・マネジメントを計画的・組織的に行い、教育の質の向上が図るよう取組をお願いする。
▼個別の教育支援計画
個別の教育支援計画は、学校と関係機関等との連携のもとに行う、生徒に対する長期的な支援に関する計画であり、これまでも各学校における作成・活用の充実をお願いしている。
昨年8月には、文部科学省と厚生労働省による家庭と教育と福祉の一層の連携を推進するための方策を検討したトライアングルプロジェクトの報告を受け、学校教育法施行規則が改正され、特別支援学校に加え、特別支援学級および通級による指導を受けている生徒についても個別の教育支援計画の作成が義務付けられた。
なお、高校に在籍する障がいのある生徒などについても、個別の教育支援計画を作成し、活用に「努めること」とされていることから、各学校においては、趣旨を踏まえ、作成、活用の一層の推進に努めるようお願いする。
【高校教育にかかる事項】
▼新学習指導要領に伴う移行措置等
新学習指導要領が告示され、令和4年度からの実施に向け、本年度から総則等で移行措置が始まった。
特に、総合的な探究の時間については、各学校における教育目標を踏まえ、総合的な探究の時間を通して育成を目指す資質・能力を示すことや、他教科等の目標および内容との違いに留意しつつ、教科等横断的な視点で取り組んでいただきたい。
また、道徳教育については、全体計画を作成し、道徳教育推進教師を中心とした全教師による道徳教育が求められていることから、各学校においては道徳教育推進教師の役割を明確にするとともに、生徒や学校の実態に応じ、道徳教育にかかる指導の方針や重点および各教科・科目等との関係を明らかにして取り組んでいただきたい。
▼道高校「教科等の本質的な学びを踏まえた主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの学習・指導方法の改善の推進のための実践研究(SCRUM)」
本年度、国で本事業の指定を受けている地域は、北海道を含め、10都道府県であり、そのうち高校が中心となっているのは4道県である。
道においては、平成28年度から文科省の指定を受けて、札幌北高校、函館稜北高校、旭川東高校、釧路湖陵高校が拠点校として、すでに2年間先行して実施した。
現在、拠点校である夕張高校、静内高校、遠別農業高校、帯広柏葉高校の4校をはじめ、サポート校4校、推進校6校、連携校29校を指定して、組織的な授業改善の推進に取り組んでいる。
非常に広域である北海道で、多くの推進校や連携校を置いて全道的に展開していこうという取組は、国からも高い評価を得ている。新学習指導要領の趣旨を踏まえ、本事業を通して、内実の伴った、質の高い学びを実現する授業改善に、学校全体で組織的に取り組んでいただきたい。
SCRUMに取り組んできた多くの学校で、授業改善に向けた組織的な取組が進められている。近隣校同士等での情報共有に努めていただきたい。
▼グローバル人材の育成
前年度から始めた北海道グローバル人材育成キャンプについて。本道のグローバル化を担う人材の育成を目的として、道南、道東、道北、道央の各地域でネイパル等を会場とし、高校生を対象に実施する。
定員は各会場30人程度、実施時期は夏季休業または冬季休業中の3日間であり、4月から募集を開始している。
各学校においては、生徒の参加はもとより、外国語担当教諭やALTの協力についても配慮願う。
本年度の文科省新規事業「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」に、登別明日中等教育学校がグローカル型の指定校、稚内高校および湧別高等学校が地域魅力化型のアソシエイトに指定された。
登別明日中等教育においては、ふるさと北海道を持続可能な社会に導くため、異なる文化背景をもつ外国人と協働しながら地方創生に尽力するグローカルリーダーを育成することを目的に、市町村、高等教育機関、産業界等との協働によるコンソーシアムを構成し、地域課題の解決等の探究的な学びを実現する取組を行う。
本事業においては、生徒が取組の成果を発表するHOKKAIDO高校生ミーティングや、事業の成果を普及するための研究成果発表会、研究協議会等を実施する。生徒や教員の積極的な参加について配慮いただきたい。
また、本年度は、高校生が参加する国際会議として、「世界津波の日」2019高校生サミットin北海道およびG20観光大臣会合における地元学生との交流事業が予定されている。
「世界津波の日」高校生サミットについては、9月10、11日、海外44ヵ国から約270人と、道内の公立高校15校の生徒を含む国内参加者約170人が集まり、自然災害の脅威と対応を学ぶための分科会等を実施する。
また、サミットの前の9月7~9日には、海外参加者が道内各地を訪問するスタディツアーが予定されており、参加校においては、サミット当日および事前学習ツアーの生徒の参加に配慮いただくととともに、各訪問地の学校には、海外参加者との交流に協力いただきたい。
G20観光大臣会合における地元学生との交流事業については、9月25、26日に倶知安町で開催されるG20観光大臣会合において、倶知安高校、倶知安農業高校および5月19日に実施される全道高校プレゼンテーションコンテストの入賞校が、「観光による地域創生」に関して提言を行う。生徒や教員の参加について、配慮いただきたい。
▼高校における特別支援教育
道教委では、前年度、道立高校4校において、通級による指導を実施し、本年度も4校において実施する。
各学校が通級による指導について理解を深め、指導体制を整備することが求められていることから、ことし3月に通級による指導の手引を作成し、各校へ配布したほか、通級による指導を実施している道立学校の通級指導担当教員を、他校の校内研修会の講師として活用する高校通級指導担当教員活用事業を昨年に引き続き実施する。活用いただきたい。
また、道立特別支援教育センターにおける高校教員を対象とした講座や各管内において実施する特別支援教育充実セミナー、特別支援学校の教育課程研究協議会などの研修会へ積極的に参加していただきたい。
▼キャリア教育の充実
27年度から3年間実施した小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業では、小学校、中学校、高校間の体系的なキャリア教育に取り組むため、12年間を見通したキャリアノートを作成し、学んだことを振り返りながら、将来の生き方を考えたりすることができたなどの成果がみられた。
高校におけるキャリアノートの事例を、同事業のホームページで公開していることから、各学校においては、学習指導要領の特別活動で示されている生徒が活動を記録し蓄積する教材の参考としていただきたい。
前年度からは、本道の基幹産業への理解を深めるため、知事部局と連携して北海道ふるさと・みらい創生推進事業を実施し、道内の中学2年生と高校1、2年生を対象として、農業や建設業などの魅力や、職業に就いた場合の生活等を紹介するガイドブックを配布している。
また、高校生が地域の課題を解決するための取組を企画・立案し、地域の方々と協働して、地域社会の一員としての意識をもちながら、課題解決に取り組むプロジェクトを実施しており、10月末に札幌市内で中間成果発表会を開催し、その様子をインターネットで配信する。
こうした地域の課題を探究する活動は、自己のキャリア形成の方向性と関連付けて、生徒の関心も高まりやすいことから、各学校においては、地域と主体的に連携・協働し、地域の特性や教育資源を活用したキャリア教育の充実に取り組んでいただきたい。
【学校経営にかかわる留意事項】
▼新学習指導要領の理念を実現するカリキュラム・マネジメントの推進
現在、新学習指導要領の移行措置が始まるとともに、様々な教育改革が進められている。学校で取り組むべきことが多岐にわたっているが、必要な取組をできるだけシンプルな枠組で整理して、取組を推進できる校内体制を築くことが望ましい。新学習指導要領で重視しているカリキュラム・マネジメントに示された3つの枠組で、取り組むべきことを整理して、新学習指導要領の理念を実現する体制づくりを考えてみる。
▼教科等横断的な視点で組み立てること
▽育成を目指す資質・能力を明確化する
新学習指導要領の理念の実現に向けた教育課程編成の第一歩は、学校として育成を目指す資質・能力を明確化すること。具体的には、教科等横断的な視点に立った資質・能力として示されている学習の基盤となる資質・能力と現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を位置付けるとともに、26年6月の中教審初等中等教育分科会高等学校教育部会審議まとめにおいて、すべての生徒が高校教育を通じて身に付けるべき資質・能力「コア」として示された力などを含めて、明確化することが大切である。
なお、学力について、高大接続改革で重視する学力の3要素を踏まえ、学校教育法に規定された基礎的な知識および技能、思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度に加えて、多様性・協働性の重視が示されたことに留意していただきたい。
函館西高校は、学校教育目標(①変化に対応し、新しい価値を見出せる人を育む②地域を思い、未来を想像できる人を育む③自他を尊び、共生できる人を育む)の実現に向け、育成を目指す資質・能力をつぎのように位置付けている。
函館西高の育成を目指す資質・能力
・自己開示力=自分を知り、学ぼうとすることができる
・課題発見力=疑問を持ち、課題を見出すことができる
・段取力=先を見通して、物事を進めることができる
・思考力=要点をつかみ、多面的多角的に考えることができる
・発信力=状況に応じて、分かりやすく伝えることができる
函館西高は、ことし4月に函館稜北高校との再編によって、探究を重視した普通科単位制高校としてスタートし、探究の過程を重視して、目指す資質・能力を明確化した。
各学校においては、卒業までに、生徒がどのような資質・能力を身に付けることが必要かを、全教職員の十分な議論を踏まえて、明確化することが重要である。さらに、目指す資質・能力を、地域や中学校と共有していくことも大切である。
▽教科等間のつながりを意識して教育課程を編成する
教育課程編成においては、教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成を、適切に位置付けることが求められる。各教科・科目等のどの単元で、教科等横断的な資質・能力を育むのかを明確にすることが求められる。
そのためには、単元配列表を作成し、各教科・科目等の単元の学習活動に加え、育成を目指す資質・能力の関連を記すことが有効である。その際、総合的な学習の時間を軸に、各教科・科目との関連を示すことによって、全体像が見やすくなる。ただし、相互の関連を当初からすべてを書き込むことにこだわりすぎず、実際に授業を行い、生徒の反応を確認しながら、調整して完成させていくという進め方が現実的ではないかと考える。
▼教育課程の実施状況を評価し改善を図ること
▽教育課程の評価・改善を学校評価と関連付けて実施する
学校においては、各種調査結果やデータ等を活用して、教育目標の実現状況や教育課程の実施状況から、課題を見い出し、改善方針を立案・実施していくことが求められる。これまでも、中間反省や年度末反省等を通して、PDCAサイクルに基づく学校経営の改善に取り組まれてきているが、今後は、目指す資質・能力が育成されているかどうかという観点も位置付けて、教育課程の評価と学校評価の関連を図ることが重要である。
▽高校生のための学びの基礎診断を活用する
本年度から利活用が開始される高校生のための学びの基礎診断を、学習や指導の改善に生かすことも求められる。道教委では、ことし3月に“高校生のための学びの基礎診断”活用の基本的な考え方を策定したところであり、道教委が作成する学力テストに加え、各学校が選択する認定ツール等を組み合わせて、学習・指導方法の改善に生かしていただきたい。
▼人的・物的な体制を確保すること
▽カリキュラム・マネジメント実現に向けた組織体制
高校は、類型や選択科目等が多様であることから、各学校の実態を踏まえて体制づくりを工夫し、組織として総合的な力を発揮していくことが重要。カリキュラム・マネジメントを推進するためには、すべての教職員が参加することが求められ、教科等の縦割りや学年を越えて、学校全体で取り組んでいくことができるよう、学校の組織や経営の見直しを図る必要がある。
カリキュラム・マネジメントを推進するためには、すべての教職員が参加することが求められ、教科等の縦割りや学年を越えて、学校全体で取り組んでいくことができるよう、学校の組織や経営の見直しを図る必要があり、カリキュラム・マネジメントを推進する分掌や委員会などの組織を位置付けることも効果的である。
浦河高校では、キャリア・ガイダンス部を、総合学科としての系列科目選択指導にとどまらず、学校教育目標に示す資質・能力の育成に向け、教科等横断的な指導や探究的学習を全校的に推進するなど、全分掌等の組織を統括してカリキュラム・マネジメントを推進する組織として位置付けている。また、全校的に授業改善を推進する組織にも位置付けている。
浦河高のキャリア・ガイダンス部の役割(一部抜粋)
各分掌、各年次、各教科、各委員会との全体的連携・調整を所掌する。
・「産業社会と人間」「総合的な探究の時間」を軸に、教科等横断的な指導や探究的学習を推進する。
・単元配列表を活用し、重層的・効率的な教科等横断的活動の機会の充実を図る。
・「問いを立てる力」を重視した探究活動に関する指導方法等を研究開発・周知を行う。
▽主体的・対話的で深い学びの実現に向けた体制づくり
授業改善は一人ひとりの教師が創造的に取り組む営みであるが、資質・能力の育成を目指す主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、組織的に取り組むことが重要である。
道教委では、27年度から文部科学省の指定を受け、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの学習・指導方法改善のための実践研究に取り組み、現在は拠点校4校、サポート校4校、推進校6校、連携校29校を指定して、組織的な授業改善の推進に取り組んでいる。
現在サポート校である旭川東高校は、28~29年度の拠点校として、校内の組織的取組を推進するとともに、連携校での授業見学や研究協議を通して成果の普及を図っている。他の拠点校等においても、授業改善に向けた推進体制を整え、校内で共有すべきことを確認しながら取組を進めている。
旭川東高の授業改善に向けたプロジェクトチームによる「授業改善にかかる重点事項」(抜粋)
・主体的で対話的に学びを行うことの意義を明確にし、納得させる。
・分からないことを分からないと言える雰囲気や言えるメリットを伝える。
・教室がどんな発言でも受容される安全・安心の場であるよう配慮する。
なお、授業改善に向けては、新学習指導要領および解説に示された、つぎの点についても、組織的に取り組むことが重要である。
①学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図る
②学習活動を行う場合に生じる、障がいのある生徒などの困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を行う
③キャリア教育の視点で学校と社会の接続を目指し、卒業までに身に付けるべき資質・能力を育成する
このため、授業改善を推進する組織と、生徒指導・教育相談の担当分掌、特別支援教育に関する校内委員会、キャリア教育や進路指導に関する担当分掌等とが連携できる体制づくりが求められる。体制づくりに当たっては、関係機関等との連携を図ることも大切。
▽地域との協働による高校改革の推進
地域との協働による高校改革が推進され、昨年6月に策定された、まち・ひと・しごと創生基本方針2018では、「高校が、地元市町村・企業等と連携しながら、高校生に地域課題の解決等を通じた探究的な学びを提供するカリキュラムの構築等を行う取組を推進する」としている。
道教委においては、前年度から道ふるさと・みらい創生推進事業のOPENプロジェクトにおいて、15校の研究指定校と4校の奨励校が、生徒が地域の課題を見つけ、自治体や企業等と連携して設置した地域みらい連携会議と連携して、地域の課題の解決を図る実践研究に取り組んでいる。
そのほか、学校評議員制度や学校運営協議会制度、地域学校協働活動等を活用して、地域でどのような子どもを育てるのかといった目標を共有し、教育課程を介して学校と地域がつながることによって、地域とともにある学校づくりを効果的に進める体制を整えていくことも求められている。
これからの学校においては、教育実践の充実を図りながらも、全教職員の協働によるカリキュラム・マネジメントを推進する校内体制を築き、新学習指導要領の理念の実現に向け、組織的な取組を進めていくことが求められている。
(シリーズ終わり)
(道・道教委 2019-05-15付)
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