道小・道中・道公教 文教施策要望への道教委回答(道・道教委 2019-08-27付)
池野敦総務政策局長
道小学校長会(大石幸志会長)、道中学校長会(新沼潔会長)、道公立学校教頭会(安田仁昭会長)と道教委による令和元年度文教施策懇談会(8日、道庁別館)では、北海道における教育の課題に関して意見を交換した。「学力・体力向上と教育環境の条件整備」「生徒指導上の問題と解決の方策」「教頭を取り巻く現状と課題解決のための方策」について3者の代表が実情を説明し、道教委の見解を求めた。道教委の池野敦総務政策局長、小松智子学校教育局指導担当局長、赤間幸人学校教育局長、松本邦由教職員局長が所管事項について回答。取組状況や課題認識、今後の方向性を示した。概要はつぎのとおり。
◆池野敦総務政策局長
▼学力・体力向上と教育環境の条件整備
▽教員の定数改善に関する今後の取組
国では、例えば指導方法工夫改善加配の本道への配分については、平成29年度の984人から31年度は1040人であり、増加傾向となっている。
一方、新学習指導要領の円滑な実施や複雑化・困難化する教育課題などに適切に対応するためには、より一層の教職員定数の改善が必要である。
道教委は現在、習熟度別少人数指導に積極的に取り組む学校に対し加配措置しているほか、小学校の専科指導にかかる加配については24年度から措置しており、算数、理科、体育および外国語活動において専科指導を行う学校に加配している。
令和元年度は、体育専科のための加配教員を40人配置し、実施校数は54校となっている。
外国語専科については、加配教員および非常勤講師を合わせて61人配置し、実施校数は135校となっている。
道教委としては、国の方針を最大限生かすとともに、都道府県教育委員会連合会などとも連携しながら、定数措置のさらなる拡充について、引き続き国に要望を行い、指導体制の充実に努めていきたい。
◆赤間幸人学校教育局長
▼生徒指導上の問題と解決のための方策
▽スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーのさらなる充実とそのための人材確保・育成
道教委では、本道の広域性から、地域によってスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの人材確保に偏りがあることなどを、配置上の課題として捉えている。
そのため、人材確保が困難な地域への支援として、スクールカウンセラーについては、都市部から地方への派遣の充実を図るとともに、配置された学校を担当する単独校配置のほか、主に中学校を拠点校として、校区内の小学校および近隣の中学校を派遣校として併せて担当する拠点校配置、市町村単位で対象校を複数設定し、対象校を巡回する巡回配置などの配置形態の工夫改善などを進めている。
また、道教委で任用しているスクールソーシャルワーカーを未配置地域の市町村立学校にも派遣する取組を行っている。
人材育成については、道教委として、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーそれぞれの全道、地区別の連絡協議会を毎年開催し、情報提供を行うほか、スクールカウンセラー同士、スクールソーシャルワーカー同士や教育相談担当者等との研究協議や情報交換を通じて支援技術の向上などに努めている。
▽教育支援センターの整備拡充
不登校の児童生徒が、社会において自立的に生きる基礎を培うためには、当該児童生徒の意思を十分に尊重しつつ、多様な教育機会の中で、個々の状況に応じた必要な支援を実施することが大切である。
しかし、道内においては、教育支援センターを設置している市町村の割合が2割程度であり、未設置の主な理由として、市町村が運営する予算や場所の確保が困難であることが挙げられている。
道教委としては引き続き、未設置の市町村に対する設置の働きかけや、国に対して、委託事業を含む補助制度創設など、財政的支援の拡充等を要望していく。
▽スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置状況と今後の配置拡充
本年度のスクールカウンセラーの配置については、小学校、義務教育学校、中学校、中等教育学校合わせて481校増の1213校に配置校を拡充する。
スクールソーシャルワーカーについては、委託契約をした市町村数が36市町で、昨年より3市町増えた。
また、道教委で任用したスクールソーシャルワーカーも昨年に引き続き11人とした。
道教委としては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用が、いじめや不登校などへの対応として効果を上げており、学校の教育相談体制の充実を図る上で重要である。
引き続き、国に対して、スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーの活用事業の拡充や、制度の充実を要望していく。
◆小松智子学校教育局指導担当局長
▼学力・体力向上と教育環境の条件整備
▽学校と家庭・地域との連携促進
子どもたちが様々な人々とかかわり、多様な経験を重ねながら、新しい時代を生き抜いていく力を身に付けるためには、学校はもとより、家庭や地域社会が教育の場として十分な機能を発揮することが重要である。
学校を核として、地域全体で子どもたちの学びや成長を支えるコミュニティ・スクールの導入や、学校の教育活動を支援する地域学校協働活動の促進など、学校と家庭・地域が連携・協働した取組を充実する必要がある。
こうしたことから、道教委としては、コミュニティ・スクールの導入促進および効果的な運用と家庭・地域との連携・協働体制の確立を目的とするコミュニティ・スクール推進協議会や、学校と家庭・地域の連携を担う人材の育成を目的とするコーディネーター等協議会を開催するとともに、各地域における地域学校協働活動などの実践事例等を掲載した各種資料を作成し、情報の発信に努めるなど、各市町村において、教育委員会と関係部局の連携のもと、学校と家庭・地域の連携・協働体制が一層充実するよう支援していく。
◆松本邦由教職員局長
▼学力・体力向上と教育環境の条件整備
▽臨時的任用職員などの安定的な人材確保の計画
教員の欠員は、学級担任を固定できずに、児童生徒に不安が生じる場合などが考えられるほか、教員において長時間勤務が助長される要因となることも想定され、少なからず学校運営に影響が生じる。
道教委では、YouTubeを使った広報や教員養成課程のある道内外の大学を訪問し、教員志望者の推薦依頼を行うことなどのほか、本年度から教員採用選考において東京会場を設けた。
引き続き、こうした取組を進めるとともに、学校における働き方改革の取組を着実に推進し、教員が健康で生き生きと勤務できる職場環境の整備を図り、教員のやりがいや魅力等についてPRするなど人材確保に努めていく。
▼教頭を取り巻く現状と課題解決のための方策
▽教頭職の負担軽減
道教委では、道内すべての道立学校において、働き方改革を進めるため、業務改善の方向性を示した学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」を作成するとともに、市町村に対して、所管する学校に対する時間外勤務の縮減に向けた業務改善方針・計画を策定し、それぞれの地域の実情に応じた取組の実施をお願いしている。
また、アクション・プランの取組の一つとして、学校を対象として行う調査業務などについて、廃止や縮小、統合など、実施の必要性を踏まえて業務の見直しや、各種届出および報告事項等の見直しを行ってきている。
今後も調査業務等の精選を図るとともに、提出書類や様式の簡素化等を進める取組を行うなど、業務負担軽減に向けた各種取組を積極的に進めることで、長時間勤務縮減につなげていきたい。
また、これまで進めてきたアクション・プランの取組に加え、民間コンサルタントからの提案といった新たな取組などを積極的に進める。
さらに、教頭の負担軽減などのため、主幹教諭配置校のさらなる拡充に向けた教職員定数の一層の改善について、引き続き国に要望していく。
▽管理職を目指す人材の確保
教頭職の職責の重さや広範多岐にわたる業務対応、ライフスタイルにおける価値観の変化や多様化などを要因として、管内によっては教頭昇任を目指す教員が不足している状況にある。
道教委では、管理職をはじめ、管理職候補者を含めた人材の育成が重要と考えており、本年3月、教員育成指標を踏まえた管理職の育成指標を策定した。
また、優秀で学校運営への意識の高い人材を幅広く登用できるよう、令和2年度の教頭選考から、養護教諭や事務職員等から受検できるようにするとともに、教諭からの受検者については、筆記選考を免除した。
管理職候補者の育成については、今後とも貴会などとも連携を密にしながら、資質向上のための研修会への参加を促すなどして、有為な人材の発掘・育成に努めるとともに子育てや介護などの事情に対応するため、各管内や地域の実情を考慮した人事上の配慮や女性登用の拡大など、管内ごとの取組や課題を全道的に共有しながら、教頭候補者の人材確保に向けた条件整備について積極的に取り組んでいく。
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赤間幸人学校教育局長
小松智子学校教育局指導担当局長
松本邦由教職員局長
(道・道教委 2019-08-27付)
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