【リポート】世界津波の日高校生サミットスタディツアー 海外生徒を劇でもてなし 成功の裏に生徒らの努力 霧多布高(学校 2019-09-30付)
【釧路発】10・11日に札幌市内で開かれた「世界津波の日」2019高校生サミットin北海道。サミットに先立つ6日から4日間の日程で行われたスタディツアーでは、約260人の高校生と引率者が道内各地を訪問し、防災の取組を学んだ。訪問先には高校6校が含まれており、各校の生徒と交流を深めた。6校の中で唯一、2日間にわたって海外高校生を受け入れた霧多布高校(武藤禎弘校長)には、両日合わせ約160人が来校。プログラムの一つとして劇「赤いまり」を上演した。心のこもったおもてなしを成功裏に終えることができたが、その裏側には教員と生徒の努力があった。
◆紙芝居から劇の上演へ
スタディツアー開催を5ヵ月後に控えた4月、受け入れプログラムを一任されていた寺嶋優駿教諭は、ウェルカムセレモニーに続く出し物として、生徒による防災紙芝居の朗読を考えていた。しかし、プログラム案を伝えた渡邊真教頭がつぶやいた言葉は「それじゃあ、ちょっと面白くないかな」だった。
紙芝居は、津波による被災体験を集めた文集『赤いまり』のエピソードをもとにしたもので、2年前に生徒が作成した。同校が所在する浜中町は、昭和35年に発生したチリ地震による津波被害を受けており、『赤いまり』には当時の被災体験が描かれている。紙芝居はこれまで、町の防災フォーラムや気象台などが主催するイベントで生徒が朗読し、好評を博しており、同校の貴重な財産の一つとなっている。
「紙芝居に代わるものが何かあるだろうか」。頭を悩ませていた寺嶋教諭だったが、同僚の佐藤憲幸教諭が前任校で演劇部の顧問だったことを思い出した。「紙芝居をベースとして劇を上演することはできないか」。
佐藤教諭に相談したところ、脚本、演技指導を買って出てくれた。劇は英語で上演する必要があるため、英語科の木下直哉教諭、小川亮平教諭に脚本の英訳を依頼した。キャスト、スタッフはすべて1年生とし、配役もスムーズに決まった。
渡邊教頭は、紙芝居を朗読する企画でも「英語でやらなければならないので、生徒たちには大きな挑戦になる」と考えていたが、「できれば全員が参加した実感をもてるものにしてあげたかった」と語る。紙芝居が劇に代わり、挑戦のハードルは上がったと感じられたが、生徒の頑張りに期待する気持ちが上回った。「赤いまり」舞台版はこうしてスタディツアー実施要領に記載されることとなった。
◆英語は不安 でも伝えたい
劇の練習は、夏休み明けから本格的にスタート。生徒たちは英語のセリフとその発音、舞台上での動きを繰り返し練習した。スタディツアー受け入れの前日となる6日には、本番の舞台となる体育館ステージで最終確認を行った。
劇のあらすじは、畑仕事に出かける準備をしていた一家が津波に襲われるというもの。家の中まで押し寄せた津波で小さな妹が流され、家屋は破壊される。屋根にしがみつき漂流する一家は死を覚悟するが、船に発見され命拾いするまでを描く。
前日練習で佐藤教諭は、細かいセリフ回しや動きを確認。波に飲まれる妹役を演じた生徒に「そこはマミー、マミー、マミーと3回言おう」。カーテンコールでは「すぐに退場せずにしっかりとおじぎを」などと指導した。練習終了後には「これまでで一番いい出来だった」と声をかけ、本番に向かう生徒を激励した。
できる限りの準備は整えたが、母役の野間星莉那さんは不安だった。衣装はなく、舞台セットもない。観客に伝える手段は自分たちの表現力しかない。「ちゃんと発音できているか分からない。けれど、霧多布にこんなことがあったんだと伝えたい」。
練習の様子を見守っていた寺嶋教諭は「これまでの練習を見てきたが、みんなとにかく一生懸命。頑張って英語も覚えてくれた」と生徒の努力を評価。「本番も堂々とやってほしい」と期待を寄せた。
本番当日、ウェルカムセレモニーに続いて行われた「赤いまり」舞台版。父役を演じた新岡慎之介君は「ミスなく練習どおりの力を発揮することができた」と振り返る。カーテンコールでは、おじぎをする生徒たちに会場から大きな称賛の拍手が送られた。鳴りやまぬ拍手は「かなり長い時間だった」。新岡君はうれしそうにほほ笑んだ。
土日に行われたスタディツアーの受け入れ、「赤いまり」舞台版を成功させた1年生のみならず、2・3年生も授業交流で海外高校生を大いにもてなした。生徒たちを見守っていた渡邊教頭は「生徒たちもかなり疲れたと思うが、頑張った分、全員にとって思い出に残るものになったのでは」と振り返っていた。
(学校 2019-09-30付)
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