認定NPO法人ロシナンテス理事長・川原尚行氏 教育が前進する力育む スーダンで医療支援活動(関係団体 2019-10-11付)
認定NPO法人ロシナンテス・川原尚行理事長
途上国への医療支援を続ける認定NPO法人ロシナンテス(福岡県北九州市)の川原尚行理事長が来道し、㈱北海道通信社本社を訪問した。ロシナンテスは、アフリカのスーダンにおいて、無医村への診療所建設、安全な飲料水を提供するための給水所整備のほか、スーダン人が自ら医療や教育を担うことができるよう学校建設を支援するなど様々な活動を進めている。川原理事長は本紙インタビューに応え、ロシナンテスの活動や教育への思いなどを語ったほか、途上国の人々が困難を乗り越え前進していく力を生み出したのは教育だと指摘。本道の教育関係者にエールを送った。
【ロシナンテス設立】
幼いころ、小さな村の和尚から「人のために生きよ」という言葉を聞き、医者になろうと思いました。
初めてアフリカに行ったのは33歳のときです。その後、外務省に入省し、医務官としてスーダンに赴任しました。スーダンは、内戦と貧困で人々が苦しんでいました。しかし、テロ支援国家とされていることから、日本政府は支援を停止しました。
病気の子どもがいても、外務省の職員としては、医療活動ができません。日本が支援を再開したと受け取られるからです。
医師として何ができるのか悩んだ末に、外務省を辞職し、2006年にロシナンテスを設立しました。
ロシナンテは、ドン・キホーテに登場する痩せ馬です。一人ひとりは、痩せ馬ロシナンテのように非力でも、みんなが集まってロシナンテスになれば大きな力になると考え、名付けました。
【これまでの活動】
スーダンには、無医村が数多くあります。巡回診療も月1回程度です。診療所があれば安心して医療を受けてもらえると考え、4ヵ所に建設しました。
不衛生な水が原因で病気になる子どもが多いことから、きれいな水を提供するため、井戸を掘り、給水所を整備しました。医療と水はセットと考え、支援しています。
スーダンの人たちが自分たちで医療活動をできるようになることが大切です。そのためには、きちんとした学校が必要です。
私たちが中心になって学校をつくるのではなく、地域のリーダーたちに働きかけ、納得してもらい、その人たちが主役になって学校づくりを進めました。
学校ができ、特に、女の子が学べる場を提供できました。そこで学ぶ子どもたちの中から、いずれ医療や教育に携わる人材に育ってほしいと願っています。
また、村のお母さんたちが村落助産婦になれるよう人材育成を進めています。
私たちが施すのではなく、スーダンの人たちが医療を自分たちのものにすること、自立していくことを目指しています。
【今後の展望】
スーダンでは、長年独裁政治を行ってきた大統領が解任され、ことし8月に暫定政権が誕生しました。政変のため、ロシナンテスの日本人スタッフは日本に帰らせました。スーダン人スタッフだけで活動し、先日、健康増進プロジェクトを行いました。本来なら、日本人スタッフがリードして活動するのですが、スーダン人スタッフだけでできるまでに成長したと思っています。
アフリカの別の国でも活動します。政治が安定していることなどから、ザンビアで活動をスタートさせます。お母さんと子どもの命を守る母子保健から事業を開始しようと思っています。
【教育関係者へのメッセージ】
スーダンは、国家予算の8割が軍事費に充てられています。国民は教育と医療に予算をかけてほしいと言っています。先に進む力は教育から生み出されます。
日本が発展したのも教育の力だと思っています。教育に携わる方々を私は尊敬しています。大変な環境の中でも、一生懸命取り組んでいることに敬意を表します。
アフリカの人たちは、日本が戦後、大変な状況から這い上がり、確固たる地位を築いたことを知っています。アフリカもそうなりたいと思っており、尊敬の目が日本から来た私たちにも向けられます。
これは、先人が築いたものです。私たちも、つぎの世代に向けて良い日本を残していきたいと思っています。これは、まさに教育現場に直結するものです。
私たちはアフリカで頑張っていきます。学校の先生方は次世代の子どもたちの将来を担っています。お互いに頑張っていきましょう。
かわはら・なおゆき
1992年九州大学医学部を卒業し、九州大第二外科入局。九州大大学院修了後、外務省入省。2002年在スーダン日本大使館に一等書記官兼医務官として着任。2005年外務省を辞職し、同年からスーダン国内で医療活動を始める。2006年NPO法人ロシナンテスを設立。同年スーダン政府から国際NGOとして登録された。
1965年9月23日生まれ、54歳。福岡県北九州市出身。
◇ ◇ ◇
ロシナンテスでは、支援活動の充実のため、寄付を求めている。問い合わせは事務局・電話093(521)6470まで。Web(https://www.rocinantes.org/)でも確認できる。
(関係団体 2019-10-11付)
その他の記事( 関係団体)
札幌で北日本図書館連盟研究協議会 地域とつながる企画とは 道内開催は平成23年度以来
北日本図書館連盟研究協議会兼全道図書館専門研修(企画・広報)が9日から2日間、札幌市中央図書館で開かれた。平成23年度以来の道内開催で、北海道・東北の図書館等職員ら約80人が参加。「アイデ...(2019-10-15) 全て読む
市町村校長会長連絡協議会開く 働き方改革など協議 及川指導監が情報提供 オホーツク小中校長会
【網走発】オホーツク管内小中学校長会(潮田信会長)は4日、北見市内の端野町公民館で第2回市町村校長会長連絡協議会を開いた。管内校長会の役員、18市町村の校長会長が出席。オホーツク教育局の及...(2019-10-15) 全て読む
オホーツク管内小中学校長会 教育課題解決へ方策考察 120人出席し教育経営研究会
【網走発】オホーツク管内小中学校長会(潮田信会長)は4日、北見市内の端野町公民館でオホーツク地区教育経営研究会を開いた。管内小・中学校の校長約120人が参加。研修主題「学校教育の今日的課題...(2019-10-15) 全て読む
11月1日に記念行事 「北海道教育の日」運動推進協
「北海道教育の日」道民運動推進協議会(柴田達夫会長)は、11月1日午後3時からホテルライフォート札幌で「北海道教育の日」第12回制定記念行事を執り行う。テーマは「あなたはだれかのために、何...(2019-10-15) 全て読む
〝任せる〟ことで成長 認定NPO法人ロシナンテスが札幌で活動報告会開く
認定NPO法人ロシナンテスは5日、札幌市内の北海道大学臨床講義棟で活動報告会を開いた。川原尚行理事長がスーダンにおける医療支援活動などについて報告したほか、現地の人たちが自立するための教育...(2019-10-11) 全て読む
道小・道中等が石狩地区教育経営研 働き方改革など理解深化 諸課題解決に向け情報交換
石狩地区教育経営研究会が8日、北広島市内の石狩教育研修センターで開かれた。道中学校長会の鎌田浩志事務局次長らが講師を務め、教育情勢について共通理解。働き方改革をはじめとする学校経営上の課題...(2019-10-11) 全て読む
地公三者共闘会議が声明 実態考慮した交渉要求 道人事委勧告完全実施を
道公務員共闘会議地公三者共闘会議(全道庁労連、北教組、自治労道本部)は4日、「2019道人事委員会勧告にかかわる声明」を発表した。6年連続の給与引き上げ勧告を「組合員・家族の期待に応える内...(2019-10-11) 全て読む
札幌市小学校長会が経営法制研等 心身守る指導を理解 教師へのかかわりも学ぶ
札幌市小学校長会(佐藤裕三会長)は8日、ホテルライフォート札幌で臨時総会および道小学校長会札幌地区教育経営研修会・市小学校長会経営法制研修会を開いた。学校経営と法制にかかわり研修。教師の授...(2019-10-11) 全て読む
札幌市小学校長会が来年度 専門部 6部体制に改編 指導性や経営ビジョンなど研究
札幌市小学校長会(佐藤裕三会長)は来年度、学校経営の軸をより確かなものとするため、組織改革を行う。専門部体制を7部から6部に変更。すべての部で、校長の指導性や経営ビジョン、リーダーシップを...(2019-10-10) 全て読む
道学校図書館研究大会旭川大会開く 学び支え豊かな人間性を 図書館は教育支援の中心的存在 黒澤大会長
【旭川発】第43回道学校図書館研究大会旭川大会が4日から2日間、旭川勤労者福祉会館をメーン会場に開かれた。全道各地から255人が参加。研究主題「学びを支え、豊かな人間性を培う学校図書館」の...(2019-10-10) 全て読む