【PICK UP2019】 学びのニーズへの対応が鍵 札幌市 公立夜間中学設置へ(市町村 2019-12-13付)
◆外国人の要望も
9月25日の3定札幌市議会代表質問で、札幌市教委の長谷川雅英教育長が「令和4年4月を目途に公立夜間中学の開設を目指す」と表明。札幌市内での公立夜間中学の設置に向けた動きが急速に進んでいる。
夜間中学は、戦後の生活困窮などの理由で義務教育未修了の学齢超過者のために昭和20年代初頭に設けられたもの。現在では義務教育未修了の学齢超過者のほか、外国人などで日本語の学習を希望する人、不登校生徒などに教育を行っている。
平成28年12月、国の義務教育段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律が成立。文部科学省は、夜間中学を都道府県に少なくとも1つ設置するよう求めた。
道内では、道教委や札幌市教委、関係機関で平成29年度から公立夜間中学の設置に向けて検討。札幌市内に公立の夜間中学を設置することを決定した。
文科省の29年度夜間中学等に関する実態調査では、公立の夜間中学に在学する生徒の8割は外国人で、外国人を含む高齢者の割合は3割近くとなっている。札幌市内の自主夜間中学・札幌遠友塾では日本人の高齢者が9割を占めており、「傾向が必ずしも北海道に当てはまるとは限らない」(札幌市教委担当者)など、希望者の世代や国籍などの傾向をつかむことは難しい。
◆外部人材を活用
全国の公立夜間中学をみると、ことし4月に埼玉県川口市教委は、県内初の公立夜間中学として川口市立芝西中学校陽春分校を開校。日本人生徒30人、外国人生徒48人の78人が入学した。
日本語に困り感のある外国人生徒へ手厚い支援をするため、教員の定数配置では足りないことから市費で非常勤のアシスタントティーチャーを2人雇用した。
施設については、市内の中学校に空き教室がなかったことから、統廃合で廃校となった高校を活用。活用する教室は2階で、階段を使うことが多く、バリアフリーの面から改善を求める声が上がっていた。
このため、令和3年に専用の新校舎を建設する予定。「少人数指導にも対応できる普通教室」「すべての教科が指導可能な特別教室」「高齢者や身体の不自由な方にも安心・安全な施設」の3点をねらいとするなど、学びのニーズに対応できるように取り組んでいる。
また、大阪府の堺市立殿馬場中学校夜間学級では、在校生182人のうち、外国人生徒は8割の146人。平仮名の書き方など生徒の困りに対応するため、習熟度別で7クラスに分けた。
幼児児童生徒の日本語習得状況に合わせて、個別に日本語指導などを行う堺市教委の自立支援日本語指導員制度を活用。指導員を派遣するなど、きめ細かな支援に取り組んでいる。
◆多様なケース想定
全国の公立夜間中学では施設面のほか、外国人生徒に関する取組が多くみられる。
堺市教委の外国人生徒への支援と同様に、札幌市教委では外国人児童生徒に日本語指導する指導協力者を派遣する帰国・外国人児童生徒教育支援事業を実施している。
今後、札幌市内で開設する公立夜間中学にどのようなニーズが寄せられるのかは不透明だが、様々なケースを想定し、先進地にならって準備を進めることで、それらの声に対応できるのではないだろうか。
(市町村 2019-12-13付)
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