【PICK UP2019】 処遇改善で保育人員確保 道内の待機児童問題
(市町村 2019-12-16付)

 認可保育園の入園可否の通知が届き、「希望する保育園に落ちた」「また入れる保育園を探さなければ」と落胆する保護者。幼児教育・保育の無償化などに伴い入園希望者が増える中、道内の自治体は待機児童の解消に苦慮している。

 道がまとめた保育所等の利用状況によると、ことし7月1日時点、本道の27市町村で計225人の待機児童が発生している。

◆潜在的待機児童も

 札幌市では、希望した保育所に入れない“潜在的待機児童”がことし10月1日時点で2403人と高水準にある。これは、近隣の保育所に空きがないことや、共働き世帯の増加などが要因とみられる。

 札幌市在住の4歳の子をもつ会社員は、子どもが2歳のころ、市内近隣の保育園に応募するも落選が続いた。市外の保育園に入所させざるを得なかったという。「夫婦で共働きなので近くの保育園に預けられないのは厳しい。働く場所を変えることも考えた」と振り返る。

◆小規模保育で解消

 ことし7月時点の待機児童数が道内最多の41人だった留萌市では、平成29年まで待機児童はいなかったが、30年4月時点で13人、31年で38人と増加傾向にある。31年は定数300人に対し、申請が294人だったが、保育士の退職などで人手不足に陥り、入所できたのは256人だった。

 こうした中、市教委は、ことし11月から待機児童の対策として、ゼロ~3歳未満児を対象とした小規模保育を実施。市内のNPO法人団体が運営する。定員が6人以上19人以下の少人数で、1人の保育スタッフが担当する子どもの人数が少ないため、子どもの発達に応じた質の高い保育を提供している。12月1日時点で、16人の待機児童解消に成功した。

 市教委の担当者は「待機児童を発生させないためには、保育士の確保が大きな課題。今後も待機児童ゼロに向け、人材確保に尽力したい」とさらなる対策を模索する。

◆職場環境の改善へ

 保育士を確保していくためには、「現在勤務している人の離職を防止する対策が必要」(教育行政関係者)との声がある。道が実施した保育士実態調査では「働いている職場で改善してほしいこと」として、給与等の改善、事務や保育業務の軽減など、職場環境の改善に向けた要望が多数挙がっている。

 これを受け、道は処遇改善等加算の取得促進や保育士等キャリアアップ研修の実施など、保育士が安心して働けるよう、処遇や職場環境の改善を推進。

 前年度から実施している保育士等キャリアアップ研修は、保育士の資質の向上を図る面と受講を処遇改善加算の要件としていることから、給与改善にもつながっているという。

◆離職者の復帰支援

 現職者の離職防止に向けた取組が進む一方、一度現場を離れた人の復帰を支援する取組も広がりつつある。

 道では、本年度から保育士の離職時届け出制度を開始した。「保育士として働いていたが離職した人」または「資格を有しているものの保育士として就業していない人」に対して就職に役立つ情報を提供するなどして、復職に向けた支援を行っている。

 今後、幼児教育・保育の無償化などに伴って、入所希望者が増加し、道内の待機児童数がさらに増えることが予想される中、保育士の有資格者が必要に応じて働くことのできる環境の整備が一層求められる。

 こうした保育士の人材確保に向けた取組を着実に進めていくことが、待機児童問題解消の糸口となりそうだ。

(市町村 2019-12-16付)

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