【Pick UP2019】教育の質を確保した改革を 札幌市立校 教頭等の負担軽減
(市町村 2019-12-18付)

 出勤は午前7時。登校時間帯には校門の前に立ち、笑顔で児童生徒を迎える。児童生徒の下校、教職員の退勤を確認し、日付が変わる前にようやく退勤する―。

 働き方改革が叫ばれる中、札幌市立学校では教頭会の出席率が低下傾向にある。教頭・副校長らは「1日15時間働く日もある。1ヵ月当たりだと200時間を超える」との声も少なくない。教頭・副校長職の働き方改革はどうあるべきか。今、古くて新しい問題への対応が問われている。

 道教委は平成30年に学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」を策定。札幌市教委は策定に至っていないものの、教頭・副校長の声をもとに、学校閉庁日を設定するなど、負担軽減に向けた取組を実施してきた。

◆主幹教諭求める声

 平成30年度、各学校に業務時間外の転送電話を設置した。時間外の電話に対して、業務時間外であることを知らせる機能を電話機に付けたもの。これまで教頭・副校長が電話対応に時間を取られることが多かったが、「緊急時以外の対応を削減し、時間的・心理的負担の軽減に努めている」と市教委担当者は話す。

 本年度は終業時の施錠の取扱いを各校に通知。従来、主に教頭・副校長が施設管理業務の一環として全教職員の退勤を確認し、施錠することが多かったが、教職員も施錠できるようにすることで負担軽減を図っている。

 教頭・副校長からは「業務量の削減につながり助かる」という声が多い。

 一方で、「教職員が一丸となって児童生徒を育て、学校教育目標の達成に時間を割きたい」「学校のために教育の質は落としたくない」と、施錠取扱いの見直しに“ジレンマ”を抱え込むような声も。

◆校務分掌など工夫

 学校運営向上の観点から、現場では教職員と教頭・副校長職のパイプ役となり、サポートする主幹教諭の配置を求める声が多く上がる。しかし、札幌市の本年度の主幹教諭配置人数は小・中学校合わせて69人にとどまり、高校・特別支援学校での配置はゼロ。大規模校など必要に応じた学校を市教委が選定・配置するが、小学校での配置率は15・9%。約6校に1校という状況にある。

 主幹教諭の配置がない札幌市立二条小学校は、校務分掌を決める際、学校独自の取組を実施している。次代を担うミドルリーダー世代に「分掌部長」を割り当てることで、教頭に業務が集中しないよう仕事量の平準化を進めている。

 また、15分ほどに時間を制限する立ちミーティング、日ごろの教育に関する悩みなどを45分程度で自由に語り合うワールドカフェ方式の研修などを実施。情報共有を積極的に行うことで職員会議は1時間程度に短縮した。教頭職だけでなく教職員が一丸となって学校運営に参画することで校内トラブルも未然に防止してきた。

 西村貴史教頭は「とても助かっている。退勤時間も早くなった上、子どもたちのために新しい取組を考えられる時間も増えた」と成果を示す。

◆年度内に行動計画

 今後、新学習指導要領の全面実施など教職員全体の多忙化が見込まれる中で、教頭、副校長が望む教育の質の確保と、勤務時間の負担軽減を両立させる働き方改革を達成するためには、各校において日ごろから教職員全員がアイデアを出し、実践に取り組むことなど、環境づくりが不可欠となる。

 札幌市教委は本年度末までに、教職員を対象とする働き方改革アクションプランを策定する。主幹教諭の配置を求める声など、学校現場の状況を踏まえた策定作業は大詰めを迎えつつある。

(市町村 2019-12-18付)

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