道中 教育課程の調査研究報告〈上〉
(関係団体 2019-12-19付)

表1
教育課程調査研究報告・教育課程(クリックすると拡大表示されます)

 道中学校長会(新沼潔会長)の令和元年度『教育課程に関する調査研究報告書』(11月14日付1面既報)では、学習指導要領の実施に関する道内中学校の取組状況を調査。今回、教育課程、特別支援教育、小中連携・小中一貫教育、コミュニティ・スクールの4点に関する現状と課題をまとめている。報告書の概要はつぎのとおり。

◆教育課程

▼新学習指導要領実施の際の重点的な取組(複数回答)

 前回までの調査と質問内容は同じではあるが、選択肢を若干変更した。

 前回調査では、「特別の教科 道徳」「主体的・対話的で深い学び」「研修会」の順だったが、今回の調査ではさほど変わらず、「主体的・対話的で深い学び」「特別の教科 道徳」「研修会」の順となっている。実際に道徳科がスタートし、「主体的・対話的で深い学び」の実現とともに「特別の教科 道徳」に「理解を深める研修」を中心としながら重点的に取り組んでいる学校が多いと考えられる。

 しかし、「カリキュラム・マネジメント」や「社会に開かれた教育課程」といった、前回では40%に満たなかった項目が50%前後となっており、各校で新学習指導要領の変更点を的確にとらえて取り組んでいることも見受けられる。

▼各教科の領域の進め方(複数回答)

 前回までの調査と質問内容は同じであるが、選択肢を大きく変更し、「学習内容」「指導計画・指導内容」「教育内容」「学習評価」の4点について聞いている。

 結果では、86%が「主体的・対話的で深い学びの実現に向け、習得・活用・探究のバランスを工夫したり、指導計画を見直したり等、指導の改善・充実」に取り組んでいると回答している。実際に指導を行う場面をどうしていくかということに真っ先に取り組んでいる様子がうかがえる。今後、この部分に一定の成果を見いだしてから、学習内容や教育内容、そして学習評価へと動いていくのではないだろうか。

▼「主体的・対話的で深い学び」を実施する上での課題(複数回答)

 令和3年度からの新学習指導要領の全面実施に向けて、新たに盛り込んだ設問である。

 指導と評価の一体化がうたわれているとおり、「指導方法」「教材研究」「学習評価」の順で課題を感じている割合が高くなっている。上位3つは、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」という「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」と、「学習評価の充実」を反映している項目である。

 学習評価については、年内にその具体例について提示される予定なので、今後、数値が上昇していくのではないだろうか。

▼「特別の教科 道徳」の取組(複数回答)

 前回調査では「準備をどのように進めているか」という設問であったが、本年度から中学校も全面実施になったとことから、実際の取組について聞いている。

 実施前年の前年度は、「指導力向上のための研修会の設定」が最も多く、次いで「実態に即した道徳」「考え、議論する道徳」となっていたが、今回も、「指導力向上の研修」「考え、議論する道徳」は高い数値を示している。

 今回調査で、特に数値が上昇したのは「全教師による協力体制」であり、8割を超えている。多くの学校で学級担任への負担を考慮し、指導力を向上させていくために、全教師で取り組んでいることがうかがえる。

▼道徳推進教師の役割(複数回答)

 道徳推進教諭の役割については、「指導計画の作成」「評価」「研修」といった項目が7割を超えており、逆に「家庭や地域との連携」「教材の整備」などが低い数値となっている。

 これは、「特別の教科 道徳の取組」で「全教師による協力体制」が高い数値になっていることからも、教材の準備や整備は、全教師で分担して準備し、道徳推進教諭は、指導計画や評価などの研修や情報の提供を担っていることがうかがえる。

 全体に発信することと、指導の具体にかかわることとの役割分担が進んでいる表れであろう。また、「教材の整備、充実・活用」に関する数値には、本年度から教科用図書が使われていることも影響していると思われる。

▼新学習指導要領実施に向けた現状と課題(記述)

▽現状

・新学習指導要領に対する理解が深まっていない

・主体的・対話的で深い学びに対する教員の意識の差が大きい

・授業改善がなかなか進まない

・生徒数、教員数が少ないため、生徒同士、教師同士の深い学びが進まない

・小規模校のため、人事異動の度に組織体制を根本から見直さなければならない

▽課題

・「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善(49校記述)

・働き方改革と研修や準備のための時間確保(44校記述)

・新学習指導要領の趣旨の読み込みの徹底と具体的な取組の共通理解(40校記述)

・新たな3観点に対応した評価の在り方(38校記述)

・「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた教師の意識改革(32校記述)

 前回調査と同じ設問である。

 新学習指導要領完全実施の2年前ではあるが、現状としてはまだ理解が深まっていない、教員間の意識の差が大きいなどの様子がうかがえる。また、小規模校特有の現状も挙げられていた。

 課題としても大きな変化はなく、「共通理解」「授業改善」「意識改革」「評価」が多くの学校からあげられており、「時間の確保」については働き方改革と並行して行わなければならない難しさがうかがえる。

◆特別支援教育

▼特別支援コーディネーターの指名(複数回答)

 前回調査と同じ設問で、選択肢に主幹教諭を加えたが、大きな変化は見られない。

 全体の8割近い学校が特別支援教育担当教員を指名している。前回調査では72~75%だったので、校内体制の整備が進んでいることがうかがえる。

▼校内学びの支援委員会などの開催状況(複数回答)

 「月1回」や「毎学期1回」など定期的に開催している学校が全体の67%で、「必要に応じて」開催している学校も35%に達している。

▼通常級生徒の指導で困難に感じていること(複数回答)

 通常級に在籍している生徒の中で、発達に関する何らかの課題を抱えている生徒は年々増えてきている。それらの生徒への指導で困難に感じていることについては、指導方法そのものよりも、校内の指導体制と答えている学校が半数を超えている。

 詳細については、つぎの質問をみると明らかになってくるが、支援員を含む人手の問題も含めて、学級担任や学年任せにしない校内体制をいかに構築していけるかが課題であろう。

▼困難を解決するための方法(複数回答)

 前述の質問にある「指導体制」の具体がここで述べられている。

 いかに専門性のある教員を増員し、外部人材を配置し、関係機関と連携を図ったとしても、大切なのは「教職員の協力体制」だということである。逆にいうと、学年内・学年間で対象生徒に対する理解と指導体制が整備されていないと、専門性のある教員や外部人材を増員しても、人任せになってしまうことを表している。

 あらためて、学校全体で共通の認識をもち、全教師で対応していくことの大切さがうかがわれる。

▼通常級の生徒の個別の教育支援計画・個別の指導計画

 前回調査では、通常学級在籍生徒と特別支援学級在籍生徒に分けずに個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成について質問していたが、今回は、通常級在籍生徒に対象を絞って調査した。

 対象を絞らずに調査したときは、「作成」「作成中」を合わせると、前年度までの3年間で85%、89%、91%と年々向上していたが、通常級に絞った場合は、「作成・一部作成」が51%強にとどまっている。家庭、地域および関係機関との連携を図り、長期的な視点で生徒への教育的支援を行うため、また、生徒個々の実態を的確に把握し、きめの細かい指導を行っていくためには、各校の実態に応じて、個別の教育支援計画・指導計画を作成していくことが望まれる。

▼研修の状況(複数回答)

 平成30年度に取り組んだ特別支援教育に関する研修では、「事例検討会」がほとんどであることが分かる。

 したがって、事例の中から、その子に応じた対応のヒントをどれだけ拾い出せるかがカギとなっていくだろう。

 ただし、「通常級生徒の指導で困難に感じていること」「困難を解決するための方法」で指摘されている学校全体での共通認識がないと、事例研究も形だけのものになってしまうので、発達の課題に関する学習も同時に進めていくことも大切かもしれない。

▼関係機関との連携

 「密接に連携・時々連携」を合わせると90%を超えている。

 ただし、連携をしただけでなく、連携したことを生かしながら、学校、関係機関、保護者の3者で対象生徒の支援に当たっていくことが大切であるのは言うまでもないことであろう。

▼連携を図っている関係機関(複数回答)

 「教育委員会」が80%を超え、「市町村福祉関係部署」「特別支援学校」「医療機関」「児童相談所」と続いている。

 連携を図って行くことは重要なことであり、学校と関係機関のみならず、保護者と関係機関との橋渡しも進めていきたい。

この記事の他の写真

表2
教育課程調査研究報告・特別支援①(クリックすると拡大表示されます)
表1
教育課程調査研究報告・特別支援②(クリックすると拡大表示されます)

(関係団体 2019-12-19付)

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