【リポート】札幌視覚支援の遠隔システム活用 制約乗り越え指導力向上 弱視特別支援学級と連携・接続
(学校 2020-03-27付)

 全国で遠隔システムの活用が進む中、道内特別支援学校でも取組の輪が広がりつつある。札幌視覚支援学校(木村浩紀校長)は、遠隔テレビ会議システムを積極的に活用し、各道立盲学校との連携を強化。遠隔授業や研修等を通して、障がい特性に応じた支援、指導力の向上に効果を上げている。今後は、道内すべての弱視特別支援学級への学習支援や、障がい種を越えた特別支援学校との連携・接続に力を入れていく。

 学校の小規模化が進む本道。視覚特別支援学校も例外ではなく、在籍者の減少によって対話的な学習の機会を設けることが難しい状況にある。加えて、広域分散型の本道においては学校間で頻繁に往復することが難しく、研修などの参加率が冬季の場合は低くなる傾向もある。専門性の向上や学校間連携を効率的に図るための働き方改革は急務となっている。

 こうした中、木村校長はICTの積極的な活用に乗り出し、遠隔テレビ会議システムを試験的に運用。道立盲学校各校や本庁、道立特別支援教育センターなどとの密な連携や実践の積み上げ、教職員らによる効果の実感が後押しとなり、本年度から本格導入した。

◆学習意欲高まる

 自立活動の授業では、全盲の教員が全盲の生徒を遠隔で指導。札幌視覚支援の教員の指導のもと、函館盲学校の生徒が、パソコン画面の音声読み上げソフト操作に必要な文字入力を練習した。

 細かい操作性を熟知した全盲の教員が、システムを通してリアルタイムで具体的にアドバイスしたことで、生徒の意欲が高まり、熱心に取り組むことができたという。

 障がい特性に応じた指導経験の浅い函館盲の教員にとっても、勤務校に居ながら専門性を生かした指導を目の当たりにすることで、効率的な専門性の向上につながった。

 また、英語の授業では、札幌視覚支援と盲学校3校、白老町立白翔中学校の弱視特別支援学級を接続。「現在完了形」の表現を用いて好きなことを発表し、聞き手が反応を返すやりとりを展開した。

 少人数学級のため、普段は仲間と共に学ぶ機会の少ない生徒たちの間に、システムを通して対話的な学習が実現。

 白翔中の担当教員は「生徒同士の会話が成立するだけでなく、仲間の学習状況を読み取ることが刺激となり、意識しながら学習に臨むことができていた」と評価。生徒の一人は、同じ教室で共に学ぶ感覚を実感したという。集団による学びの場を確保することで、生徒間のコミュニケーションのみならず、主体的・対話的で深い学びにつながった。

 道視覚障がい教育研究大会や専門性向上研修会、管理職研修会などでもシステムを活用。移動や旅費の負担を軽減して参加率を高めながら、効率的に学校間の連携を深めた。

◆準備から充実へ

 遠隔システムの輪は、他障がい種や全国との連携・接続を視野に入れ、さらなる広がりをみせる。3月には肢体不自由特別支援学校9校がシステムを導入。研修会などにおける、障がい種を越えた一層の連携が期待されている。

 市町村立弱視特別支援学級への学習支援を広げるための新たなツールの導入も試行。新型コロナウイルス感染症による臨時休業中、期間限定で無償提供されていた遠隔授業向けクラウドビデオ会議サービスを活用して各家庭と接続し、ホームルームを実施した。

 この試みからヒントを得て、今後、これまで実施しにくかった、システムを導入していない市町村立学校との連携を強化していく。

 木村校長は、「子どもたちの夢や希望を実現するために、積極的に展開していく」と展望。次年度の学校経営方針を「ICT等を活用し、学びの環境を整備する」から「充実する」とし、子どもたちにも教職員にも充実した教育活動が展開できるよう、つぎのステージに向けて取組を進める考えだ。

(学校 2020-03-27付)

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