上川管内2年度教育推進の重点 豊かな人間性を育成 関係機関と連携し安全教育(道・道教委 2020-04-24付)
上川教育局・河野秀平局長
【旭川発】上川教育局の河野秀平局長は、小・中学校、義務教育学校、特別支援学校小・中学部に向けて令和2年度管内教育推進の重点を示した。「社会で活きる力の育成」「豊かな人間性の育成」など、6つの目標や重点を挙げた。目標5「学びをつなぐ学校づくりの実現」の重点として「学校安全教育の充実」を新たに盛り込み、関係機関と連携した防犯教室や防犯訓練などの実施を求めた。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、本年度は校長会議を中止して各市町村教委にCD―ROMを郵送した。
教育推進の重点の概要はつぎのとおり。
▼目標1 社会で活きる力の育成
重点の1点目「義務教育における確かな学力の育成」について、特にお願いしたいことは、
▽教育活動の質の向上を図るカリキュラム・マネジメントの効果的な推進
▽学習の質を高める主体的・対話的で深い学びの実現
▽組織的かつ計画的な学習評価の工夫
―である。
管内においては、全国学力・学習状況調査の結果について、S―P表の分析に学校全体で取り組み、教育課程の改善に生かすなど、すべての子どもに確かな学力を身に付けさせる取組を着実に推進していただいている。
今後においても、子どもたちが自分の人生や社会とのつながりを実感しながら自らの能力を引き出し、その能力を将来出会う課題の主体的な解決に生かしていくことができるようにすることが重要である。
そのため、各学校においては、
①教科等間のつながりを意識できる教育課程の改善
②自分の考えを広げたり深めたりする対話的な活動の充実
③複式学級における主体的な学びを引き出す直接指導や間接指導の充実
④指導の改善や子どもの学習の振り返りにつながる学習評価
―の4点に取り組むようお願いする。
教育局としては、義務教育指導監や指導主事によるカリキュラム・マネジメントに基づいた教育課程の改善にかかわる指導助言のほか、研究の推進や学力向上といった学校のニーズに応じた助言、学習評価の改善についての情報提供に努める。
特別支援教育の充実について、特にお願いしたいことは、
▽個別の教育支援計画の活用による関係機関と連携した切れ目のない一貫した支援の充実
▽障がいのある幼児児童生徒の指導にかかる専門性の向上
―である。
管内においては、特別支援学級および通級指導を受けているすべての児童生徒に対して個別の教育支援計画が作成されている。
今後においても、通常の学級に在籍する特別な支援を必要とする児童生徒への指導の充実と障がいの重度、重複化などに対応した教員の専門性の向上を図る必要がある。
そのため、各学校においては、
①通常の学級に在籍する特別な支援を必要とする児童生徒の個別の教育支援計画の作成・活用を通じた長期的な視点での支援
②すべての教員等が特別支援教育に関する指導や支援についての知識や技能を身に付けることができる校内研修の充実
―の2点に取り組むようお願いする。
教育局としては、管内特別支援連携協議会の協議内容も踏まえ、各学校の校内研修の参考となるよう、研修事業の工夫改善や情報提供に努める。
重点の3点目「国際理解教育・キャリア教育の充実」について、特にお願いしたいことは、
▽小・中学校が連携を図った外国語学習の指導の充実
▽学校の教育活動全体を通じて行うキャリア教育の充実
―である。
管内においては、外国語指導助手(ALT)などを活用した複数体制での指導の充実や、身近な地域で英語に親しむ機会の設定など、学校と教育委員会が連携した取組を推進していただいている。
また、キャリア教育については、将来の夢や目標をもっている児童生徒の割合が全国と比べて高いなど、上川版キャリアノート『マイノート』の活用をはじめとする学校の取組の成果が現れている。
今後も、各学校においては、
①中学校教員の乗り入れ授業などによる小学校での指導の充実
②英検IBAの結果を活用した中学校での授業改善
キャリア教育については、
③特別活動を要として、全教師の共通認識に立った指導計画の作成
④将来の生活や社会と関連付けながら、見通しをもったり、振り返ったりする機会の充実
―の4点に取り組むようお願いする。
教育局としては、小・中学校が連携して外国語教育を進めている道内外の先進事例について情報提供するとともに、自分らしい生き方を実現するキャリア教育について、指導助言に努める。
重点の4点目「情報教育の充実」について、特にお願いしたいことは、
▽学習の基盤となる情報活用能力を身に付ける学習の充実
▽ICTを活用した指導力の向上
―である。
管内においては、実物投影機やタブレット等のICTを活用した分かる授業づくりを推進していただいている。
今後においても、本年度から順次導入が始まるGIGAスクール構想の実現も見据えた取組を一層加速化させることが求められる。
そのため、各学校においては、
①教科等横断的に情報活用能力の育成を図る指導計画の作成
②ICT活用指導力向上のための校内研修の充実
―の2点に取り組むようお願いする。
教育局としては、小学校におけるプログラミング教育をはじめ、情報教育にかかる道内外の実践事例や校内研修に役立つ資料の提供に努める。
▼目標2 豊かな人間性の育成
重点の1点目「道徳教育・ふるさと教育の充実」について、特にお願いしたいことは、
▽よりよく生きるための道徳性を養う指導の充実
▽ふるさとに対する理解を深め、地域の一員としての自覚を高める教育の充実
―である。
管内においては、北海道版道徳教材『きた ものがたり』など、北海道にゆかりのある先人などを題材とした教材等を活用し、ふるさとへの興味・関心を高める創意ある教育活動が展開されている。
一方、前年度実施した調査結果によると、道徳科の授業について、教員と児童生徒の受け止めに差があることや、社会参画への意識について学年が上がるにつれて低下することなどの課題がみられる。
そのため、各学校においては、
①学校の教育目標や重点目標を踏まえた指導内容の重点化
②多様な指導方法を取り入れるなど「考え、議論する道徳」の一層の充実
ふるさと教育にかかわり、
③民族共生象徴空間ウポポイも含めたアイヌの人たちの歴史・文化等や北方領土を正しく理解することができる施設や人材等を活用した体験的な学習の推進
―の3点に取り組むようお願いする。
教育局としては、研修事業の工夫改善や道徳教育推進会議の成果の発信、道ふるさと教育・観光教育等推進事業における実践校・協力校の取組の普及啓発に努める。
重点の2点目「いじめの防止や不登校児童生徒への支援の取組の充実」について、特にお願いしたいことは、
▽いじめの防止に向けた組織的な取組の一層の推進
▽不登校児童生徒に対する効果的な支援の充実
―である。
管内においては、定期的なアンケート調査や教育相談によって、いじめの早期発見に取り組むとともに、不登校児童生徒個々の状況に応じたきめ細かな指導が進められている。
今後においても、いじめの積極的な認知や不登校児童生徒への支援に一層組織的に取り組むことが大切である。
そのため、各学校においては、
①道いじめ防止基本方針における「教職員の責務」を踏まえた適切な対応
②教職員相互が子どもの状況について共有できる学校体制の整備
③不登校児童生徒への組織的な支援体制を整えるためのコーディネーター的な役割を果たす教員の位置付け
④インターネット上のトラブルから子どもたちを守るための家庭等と連携を図った取組の推進
―の4点に取り組むようお願いする。
教育局としては、いじめ問題等外部専門家チームをはじめ、関係する専門機関と連携を図りながら、市町村教委や学校の支援に努める。
▼目標3 健やかな体の育成
重点の1点目「体力・運動能力の向上」について、特にお願いしたいことは、
▽体育、保健体育授業の一層の改善
▽子どもの力を引き出す新体力テストの実施
―である。
管内においては、体育、保健体育授業の指導力の向上を図る校内研修の実施や1校1実践など、授業以外の時間を活用した体力向上の取組などが進められている。
一方、全国体力・運動能力、運動習慣等調査において、小・中学校共に体力合計点が全道平均を下回る状況が続いている。
そのため、各学校においては、
①新体力テストの実施時期や指導体制の見直しと個人目標の設定
②ICTを活用し、課題を意識させたり自己の変容を実感させたりする授業改善
③教育局作成の『METs Kamikawa』等を活用した校内研修の充実や授業改善
―の3点に取り組むようお願いする。
教育局としては、新体力テストにおいて、子どもがもっている力を十分に発揮させ、正しい測定結果を子どもたちにフィードバックすることによって、つぎの目標設定につながる好循環が学校に生まれるよう支援に努める。
重点の2点目「健康教育の充実」について、前年度末に発生した新型コロナウイルス感染症にかかわり、各学校においては、子どもたちに感染症に関する正しい知識や感染症を防ぐ取組など、資料の送付や分散登校の機会において指導の徹底に努めていただいた。
引き続きお願いしたいことは、
▽子どもが健康な生活を送るための適切な行動選択などの資質・能力の育成
―である。
そのため、各学校においては、
①継続的な子どもの健康観察に基づく心身のケア
②子どもの感染症、がん、薬物、食に関する正しい知識の習得
③学校の衛生環境の確保と感染の予防対策の徹底
―の3点に取り組むようお願いする。
教育局としては、学校・家庭・地域の関係機関等と連携した実践例の普及啓発や健康課題に関する情報提供などを通じて、市町村教委や学校の支援に努める。
▼目標4 学びを支える家庭・地域との連携
重点の1点目「家庭教育支援の充実」について、特にお願いしたいことは、
▽子どもの望ましい生活習慣の定着に向けた取組の充実
▽地域における家庭教育支援の充実
―である。
管内においては、電子メディアに接している時間を、家庭学習や読書の時間に30分間スライドさせる「上川スライド30」の取組など、生活習慣の改善に向けた取組を推進していただいている。
一方、各種調査の結果によると、管内では、6割以上の子どもが平日の家庭学習時間が30分未満であり、約4割の子どもが電子メディア視聴時間が3時間以上であるなどの課題がみられる。
そのため、学校・家庭・地域・行政が連携・協働し、
①子どもの望ましい生活習慣や学習習慣を学ぶ機会の提供
②家庭教育の悩みを共有・相談できる機会の提供
③家庭教育支援を担う人材の育成と資質向上
―の3点に取り組むようお願いする。
教育局としては、管内PTA連合会と連携した仮称・子どもの望ましい生活習慣・学習習慣定着研修事業の開催など、望ましい生活習慣の定着に向けた取組の推進に努める。
重点の2点目「学校と地域の連携・協働の推進」について、特にお願いしたいことは、
▽コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進
―である。
管内においては、地域学校協働活動がすべての市町村で実施されており、コミュニティ・スクールは、2年度末までに全市町村で導入されることとなっている。
今後においても、社会に開かれた教育課程の実現に向け、地域と学校が連携・協働し、社会総がかりで教育を行う体制を一層構築することが重要である。
そのため、学校・家庭・地域・行政が連携・協働し、
①コミュニティ・スクール、地域学校協働活動の内容や成果等の理解を深める機会の設定
②地域学校協働本部の設置や地域学校協働活動推進員等の配置
―の2点に取り組むようお願いする。
教育局としては、地域と学校の連携推進協議会や放課後活動推進協議会の開催などに努める。
▼目標5 学びをつなぐ学校づくりの実現
重点の1点目「学校段階間の連携・接続の推進」について、特にお願いしたいことは、
▽幼・小・中・高の接続を意識した教育課程の編成・実施と指導方法の工夫改善
管内においては、スタートカリキュラムの作成や生活面および友人関係も含めた丁寧な引き継ぎを行うなど、学校段階間の円滑な接続に努めていただいている。
今後においても、教育の質を向上させるため、それぞれの学校段階間が協働した取組を積極的に推進することが重要である。
そのため、幼・小の接続については、
①域内の幼児教育施設の意見を踏まえたスタートカリキュラムの編成
②「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を手がかりとした幼児教育施設の関係者との合同研修の実施
―の2点。
小・中の接続については、
①同一中学校区内の小学校と中学校における育成を目指す資質・能力や教育目標、教育課程などの共有
②小・中学校相互の乗り入れ授業などを活用した指導の改善
―の2点に取り組むようお願いする。
教育局としては、幼児教育を語る会などの場の設定や、幼小連携・接続推進リーダー活用事業、中1ギャップ問題未然防止事業などの成果の普及啓発に努める。
重点の2点目「学校運営の改善」について、特にお願いしたいことは、
▽管理職のリーダーシップによる包括的・継続的な学校改善
▽学校における働き方改革の目的を踏まえた取組の着実な推進
▽教職員の不祥事防止に向けた服務規律、法令順守の徹底
―である。
管内においては、メンター研修による人材育成など、教職員に対する信頼の向上や、質の高い教員集団の実現に向けた取組が進められている。
今後、教育活動の質の一層の向上のため、学校組織マネジメント機能を強化させ、業務改善に取り組むことが重要。また、道民の教育に対する信頼を損なわないよう、教職員の服務規律の徹底が必要である。
そのため、学校においては、
①校長の経営方針のもと、教職員の参画意識を高める組織体制の整備
②学校における働き方改革の手引『Road』を活用した実効性のある取組
③コンプライアンス確立月間など、不祥事の防止に向けた集中的な取組や、年間を通じた継続的な取組
―の3点に取り組むようお願いする。
教育局としては、義務教育指導監や主幹による学校運営の改善に向けた指導助言や情報提供に努める。
重点の3点目「学校安全教育の充実」について、特にお願いしたいことは、
▽生活安全、交通安全、災害安全に関する教育の充実
▽関係機関と連携を図った危機管理マニュアルの点検・見直し、改善・充実
―である。
管内においては、すべての学校において、学校保健安全法で作成が義務付けられている学校安全計画に基づく計画的な取組が推進されている。
今後においても、子どもの危機対応能力の育成と学校・家庭・地域社会が連携した取組を進めることが重要である。
そのため、学校においては、
①関係機関と連携した防犯教室や防犯訓練、体験型の交通安全教室の実施
②市町村の地域防災計画を踏まえ、様々な自然災害を想定した避難訓練や引き渡し訓練の実施
―の2点に取り組むようお願いする。
教育局としては、学校安全教室などの研修事業の工夫改善や安全教育実践事例集の提供に加え、道実践的安全教育モデル構築事業の成果を広く普及啓発するなどして、市町村教委や学校の支援に努める。
▼目標6 学びを活かす地域社会の実現
重点の1点目「生涯学習の振興」で、特にお願いしたいことは、
▽地域づくりにつながる学習活動の促進
▽地域の実態に即した学習環境づくり
―である。
管内においては、住民のニーズを踏まえ、多様な学習機会が提供されている。
今後においても、地域住民の潤いのある生活と活力ある地域づくりを推進するため、道民が生涯を通じて積極的に学び、その成果を生かせる環境を整備することが重要である。
そのため、市町村教委においては、
①道民カレッジなど、多様な学習機会の充実
②地域づくりにつながる生涯学習を推進する人材の育成
―の2点に取り組むようお願いする。
教育局としては、道生涯学習推進基本構想をもとに生涯学習に対する意識の向上を図るとともに、生涯学習を推進する人材の育成に向けて、社会教育の計画や評価、企画、運営に関する研修内容の充実などに努める。
重点の2点目「社会教育の振興」について、特にお願いしたいことは、
▽地域で組織的な教育活動を促進するための人材育成
▽地域課題の解決に向けた活動に地域住民が参画できる環境の整備
―である。
管内においては、すべての市町村において、地域の実態に応じた社会教育計画が策定されている。
今後においても、専門職員を対象とした研修の充実、社会教育主事の配置、地域課題を解決するための活動の担い手の育成が求められる。
そのため、各市町村教委においては、
①専門職員の資質向上を目的とした実践的な研修の実施
②社会教育主事等の配置に向けた積極的な取組
③地域課題の把握や、解決に至るプロセスを学ぶ機会の確保
④地域課題の解決に向けた活動への地域住民の参加と協働の促進
⑤公民館、図書館、博物館、青少年教育施設等の機能の充実
―の5点に取り組むようお願いする。
教育局としては、市町村教委における専門職員の専門性の向上、社会教育主事の配置促進、施設間連携の促進などの支援に努める。
【むすびに】
予測することが難しい未来社会の中で、本道の子ども一人ひとりが持続可能な地域の創り手としての資質・能力を身に付け、幸福な人生を歩んでいくためには、教育の果たす役割は極めて重要である。
私たち教育に携わる者の使命は、未来社会を見据え、互いに協働しながら教育の効果を最大限に高めることで、子どもの成長に責任をもつことだと考える。
教育局としては、北海道教育の基本理念「自立」「共生」のもと、本年度も市町村教委、学校と手を携えながら、管内教育の充実・発展に取り組むので、理解と協力をお願いする。
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(道・道教委 2020-04-24付)
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