空知管内2年度教育推進の重点 地域総がかりで子を育て 臨休対応 元年度まとめ補う
(道・道教委 2020-04-17付)

空知教育局長・藤村誠
空知教育局・藤村誠教育局長

 【岩見沢発】空知教育局の藤村誠局長は9日、空知合同庁舎で開催された管内市町教委教育長会議で令和2年度管内教育推進の重点を説明した。キーワード「協働・共育・共生による学びの質の向上」のもと、知・徳・体の育成や学びを支える・つなぐ・活かすの取組の充実など、学校・家庭・地域総がかりで子どもを育てていく方針を表明。新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休校については、元年度の大切なまとめの教育活動を補い、より良い教育環境をマネジメントする取組を意識する必要性を示した。

 教育推進の重点の概要はつぎのとおり。

【はじめに】

 2年度は、小学校の新学習指導要領が全面実施され、新しい教科書による主体的・対話的で深い学びが推進される。また、新学習指導要領全面実施を来年に控えた中学校においては、各教科等における取組が学校の真の総合力となるよう、教員が一体となった取組のベクトルを、より一層明確にする時期となる。

 新学習指導要領に示される方向性と、道教育推進計画を踏まえるとともに、内容項目については、地域の支援を受け、管内のすべての学校が教育活動を通して推進するものに精選し、示している。

 しかしながら、世界的な規模で広がった新型コロナウイルス感染症拡大防止のための休校によって、その前提となる元年度の大切なまとめの教育活動を、十分に実施することがかなわなかった。

 2年度は、それを補い、より良い教育環境をマネジメントする取組を意識しなければならない。

【重点の構成】

 平成21年度から掲げてきた「ふるさと空知を愛する人」を育成することを管内教育のスローガンとして位置付けている。

 実現にかかわっては、25年後の2045年に空知管内の人口は2015年時から半減し、21の市町で高齢者人口が半数になると予測されているなど、地域社会の維持が切実な課題となっていることが挙げられる。

 管内においては、平成の30年の間に学校統合が進んで校数が約半分となり、管内15市町が小学校1校、中学校1校という状況であり、そのほかの市町でも、学校の統合が進んでいる。

 しかし、どんな状況でも子どもは地域の宝。空知の子どもたちが生まれ育ったふるさと空知に愛着と誇りをもち、将来に向かって夢や希望を描くことができるよう学校、家庭、地域が総がかりで育てる取組、ふるさと空知を愛する人を育成することを掲げている。

【管内教育推進の重点】

 具体的な取組内容について。

▽教育効果を高めるカリキュラム・マネジメントに基づく「協働」

▽指導方法・体制の改善・充実に基づく「共育」

▽学校間や学校と地域間の連携に基づく「共生」

 ―については、これまでと同様の視点だが、キーワードとして掲げた「学びの質の向上」をこれまで以上に意識して取組を充実していく必要がある。

 皆さんには、施策や各学校の学校経営、教育活動を推進するための視点として重視されていたことと思うが、検証の視点として受け止めていただき、改善し、充実に生かし、学びの質の向上につなげていただくことを強く伝える。

 道教育推進計画の目標を踏まえ、①社会で活きる力の育成②豊かな人間性と健やかな体の育成―を「知・徳・体」の育成としてまとめ、主に学校における「協働」と「共育」の機能を高め、質の向上を目指す。

 ③連携・協働に基づく学校づくり④学びを活かす地域社会の実現―を「学びを支える・つなぐ・活かす」としてまとめ、学校間や地域との連携に基づく「共生」の機能を発揮し、学びの質の向上に向け、管内で重点的に取り組む内容として示している。

 具体的な項目について。

▼社会で活きる力の育成

 確かな学力の育成として、

▽社会との連携・協働による教育課程の実現に向けたカリキュラム・マネジメントの推進

▽主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくりの推進

▽各種調査等の結果を活用した学びへの意欲と自信を高める取組の推進

▽ICTを活用した学びを支える環境づくりの推進

 ―の4点を示している。

 これからの時代に求められる資質・能力の育成として、

▽コミュニケーション能力を育む英語教育の推進

▽プログラミング的思考を育む教育の推進

▽望ましい勤労観や職業観を育むキャリア教育の推進

 ―の3点を示している。

 特別支援教育の充実として、

▽個別の教育支援計画、個別の指導計画を活用した切れ目のない一貫した指導や支援の推進

 ―を示した。

▼豊かな人間性と健やかな体の育成

 道徳教育の充実として、

▽道徳教育の充実に向けた指導方法に関する研修推進

▽子どもを中心に据え、地域や保護者と連携した心の教育の推進

 ―の2点を示した。

 いじめの防止や不登校児童生徒への支援の取組の充実として、

▽いじめの未然防止の取組の充実

▽ネットトラブルの根絶に向けた取組の充実

▽不登校児童生徒への取組の充実

 ―の3点を示した。

 体力・運動能力の向上として、

▽自校の重点を明確にし、年間を見通した体力向上の取組の推進

▽学校、家庭、地域が一体となった児童生徒の運動機会の充実

 ―の2点を示した。

▼連携・協働に基づく学校づくり

 学校段階間の連携・接続の推進として、

▽幼児教育施設と小学校の連携の推進

▽教委と福祉部局が一体となった幼保・小の引き継ぎ体制の確立

▽子どもの学びを支える中学校、高校間の情報連携等の推進

 ―の3点を示した。

 信頼される学校の確立として、

▽教職員の服務規律の順守

▽教員育成指標に基づく、教職員一人ひとりの能力の向上

▽子どもの安心安全を保障する危機管理の徹底と自ら身を守る力を育成する安全教育の推進

 ―の3点を示した。

 学校運営の改善として、

▽持続可能な学校運営体制の整備

▽教育の質を高める働き方改革の推進

 ―の2点を示した。

 家庭教育支援の充実として、

▽家庭教育に関する学習機会の充実

▽保護者や校種間で連携した家庭学習習慣の定着

 ―の2点を示した。

▼学びを活かす地域社会の実現

 学校と地域の連携・協働の推進として、

▽子どもの成長を地域全体で支えていくためのコミュニティ・スクールと地域学校協働本部の一体的な推進

 ―を示した。

 生涯学習の振興として、

▽地域住民が主体的に地域課題の解決を図る取組の推進

▽日本遺産「炭鉄港」の学習など、空知を知り、学び、共に語るふるさと教育の推進

 ―の2点を示した。

 新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休校を余儀なくされ、子どもたちは学習内容の定着のための補充的な学習や必要な体験活動など様々な学習の機会に恵まれなかったことから、4月から5月の大型連休明けまでに、すべての学校で、これまで以上に重点を置いて取り組んでほしい事項を新学期のマネジメントとして示した。

 学力に関する取組として、前学年の学習内容の定着を図るための補充の時間等を確保した教育課程の編成を掲げた。

 豊かな心に関する取組として、新型コロナウイルス感染症を理由としたいじめや偏見は決して許されないことの指導を示した。

 健やかな体に関する取組として、家庭と連携した毎朝の検温やかぜ症状の確認など感染源を絶つこと、十分な睡眠やバランスの取れた食事を心がけるなど抵抗力を高めることを掲げた。

 学校間の連携に関する取組として、学校間での未指導分の学習内容など学習状況の共有を示した。

 家庭との連携に関する取組として、健康観察や手洗いの習慣化、学びに向き合う前提となる生活リズムの定着、家庭学習の手引きなどに基づく、授業と結び付いた家庭学習習慣の定着を掲げた。

 地域との連携に関する取組として、地域住民等と連携したリスクコミュニケーションの共有と見守り体制の強化を示した。

【おわりに】

 令和の時代が始まり、これから子どもたちが生活する社会は、生産年齢人口が減少する社会。また、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等によって、地域社会がどのように変容するか、地域の産業を維持するためにどのような制度設計が進められるのか、どのような生産技術が開発されるのか。社会の変化は加速度を増しながら、構造も変革させ、予測が難しいものとなってきており、このような変化が、すべての子どもたちの生き方に影響するものとなっている。

 社会の変化に、どのように対処していくのかという受動的な立場であれば、対応が難しい時代になる。

 このような中、2年度から順次、全面実施される新学習指導要領では、「育成すべき資質・能力」が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三本柱で成り立つと、明確に整理されている。

 さらに、学びの在り方については、中教審が新時代の初等中等教育の在り方に関する論点の取りまとめにおいて「先端技術の活用によって、知識・技能の定着にかかる授業時間を短縮し、探究的な学習等に時間をかけることができる」と考えられると明記し、年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方を今後の検討課題に挙げている。

 今後1人1台コンピューターや高速大容量通信ネットワーク環境の整備など、教育のデジタル化が進むことで、先生が児童生徒に与える教育は、児童生徒が自ら検索しながら知識を取得し、試行錯誤しながらアウトプットする学びへと構造転換を起こすようになると予想されている。

 こうした潮流の中において、学校教育が子どもたちの成長という縦軸と、子どもたちが生活する家庭と地域、様々な人々との結び付きという横軸の中で、身近な地域を含めた社会とのつながりを深め、自らの人生や社会をよりよく変えていくという実感を得ることができるよう「何を学び、何ができるようになったのか」を重視した学びの質の向上を、管内が一体となって推進していくという思いを込め、本年度の管内教育推進の重点を策定した。

 市町教委の皆さんには、校長の皆さんが協力なリーダーシップのもと、社会に開かれた教育課程の実現に向け、教育効果を高めるカリキュラム・マネジメントに基づく「協働」、指導方法・体制の改善・充実に基づく「共育」、学校間や学校と地域間の連携に基づく「共生」を実践することができるよう指導するとともに、学校の大きな応援団となり、地域の活性化を進めていく地域の力を束ね、子どもたちが将来に向かって夢や希望を描き、生まれ育ったふるさと空知に愛着と誇りをもつための取組に力添えをお願いする。

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空知教育局教育推進の重点
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(道・道教委 2020-04-17付)

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